私の初体験
そこには「桐嶋 愛蝶」と書かれていた。
はぁ。
こいつらはどこまで暇人?
私が気にするまでもないけど。
私はそう思いつつ、席に着いた。
男子は馬鹿そうな顔でニタニタ。
マジでキモイ。
女子はいつも通り冷たい視線のつもりらしい。
どうでもいい。
チャイムが鳴って、皆席に着いた。
授業中、何度か葛城が話掛けてきたけど、適当に返した。
午後の授業も全部そんな感じ。
流石にここまでやれば、葛城も私を嫌うだろう。
それでいいんだ。
それが私なんだ。
最後の授業とホームルームが終わった。
これで今日の全日程が終了した。
私はさっさと帰ろうと、教室から出た。
玄関で靴を履き替えて出ると、斎藤が出口で待っていた。
「よう。早く帰ろっか」
当然のように言った。
チッ。
約束を破るのは好きじゃない。
でも断れなかったからトンズラかこうとした。
でも斎藤は思った以上にしつこかった。
言われるがまま、私は斎藤について行った。
すれ違うたびに振り返られた。
見せ物じゃないっ!て言いたかったけど、控えておいた。
面倒は御免だ。
外に出ると、雨が降っていた。
どうしよう。
あいにく、傘が無かった。
斉藤は持っていた折り畳み傘を取り出して広げた。
「桐嶋、一緒に入ろう」
そう言われて、思わず斉藤を見上げてしまった。
風邪を引くのは嫌だったが、それ以上に人の傘に入るのは嫌だった。
「私はー」
私が答える前に、斉藤は私の肩を掴んで走り始めた。
斉藤は笑ったいた。
私はなぜか震えた。