帰宅
いろいろあって、オレは今念願の桐嶋との帰宅。
桐嶋はずっと黙ってる。
あぁ、今日も可愛いな・・・。
いつもより頬が赤いし。
照れてんのかな?
マジで惚れちまう。
もうすでに好きだけど。
ポツ。
ん?
ポツポツポツ・・・ザザザザー。
「うぉぉぉぉ!!」
夕立か?!
「桐嶋、とりあえずオレん家来い!」
「っや・・・!」
オレは構わず桐嶋の手を強く引いた。
「放して!!」
桐嶋の声は、いつもと違っていた。
なんだか・・・怯えているように。
ま、桐嶋の家は知らないけど、オレん家の方が近い。
すぐそこだし。
嫌がる桐嶋を無理矢理家に連れ帰った。
桐嶋は、何故か玄関で立ち止まった。
「私・・・帰る・・・」
「はぁ?!何言ってんだよ!入れ入れ」
殆ど強引に桐嶋を家に入れて、ソファに座らせた。
「はい」
タオルを渡した。
でも桐嶋は・・・。
何故かオレから遠ざかった。
「お願い・・・騙さないで」
怯えきった声。
よく見ると、体が震えている。
何だよ・・・。
オレなんかしたか?
そんなに怖がられるようなこと、してないぜ。
オレは桐嶋の膝の上に、そっとタオルを置いた。
置いた時、桐嶋はビクッとしたが、何も言わなかった。
オレは何となく桐嶋の隣に座った。
桐嶋はソファの端までいっちゃった。
「なあ」
オレは桐嶋に問いかけた。
「オレなんかしたか?」
「・・・・」
「そんなに嫌がられるようなこと、してないと思うけど・・・」
「・・・てない」
「ん?」
桐嶋の小さな声が聞こえた。
「アナタは何も・・・してない」
強がって、皆を叱っていた桐嶋。
だけど今は、何かに怯えている儚くて、壊れてしまいそうな桐嶋。
「オレじゃ・・・ない?」
「だから・・・気にしないで」
桐嶋はタオルで頭を拭き始める。
綺麗な髪がゴワゴワになっていく。
「はい」
オレはブラシも貸してあげた。
予想通り、桐嶋は受け取ろうとしない。
膝に置いてやる。
オレって優しいな。
「あの・・・」
「ん?」
「私の・・・が目的じゃないの?」
「ん?ごめん聞こえない。
もっかい言って」
桐嶋は少し赤くなりながら言った。
「その・・・私の体が目的じゃないの?」
ぶふっ!
なんだそれ!
「欲求不満なの?」
「そうじゃなくて・・・」
オレはこの後、とてつもなく後悔した。
まさか・・・桐嶋があんな目にあっていたなんて・・・。