玲羅の仕事
「ねえ、誰かいらない?」
クラスでは、さっきからある女の子が皆に犬を飼わないか、と聞きまくっている。
女の子の名前は宮沢 由香里。
どこにでもいる、男子とあんまり喋らない、喋れない性格もルックスも平凡な子。
この由香里、道端で拾った子犬を自分の家では飼えないから、クラスの子達に頼み歩いている。
皆何かと理由を付けて断っている。
理由は簡単。
由香里と話すのが嫌だからだ。
由香里は大人し過ぎて、貞子と陰口を叩かれている。
真っ黒で腰まで伸びた長い髪と、青白い肌が見事にマッチしている。
私はだんだん由香里が可哀想になってきた。
そこで。
「由香里」
優しい優しい玲羅ちゃんは手伝ってあげることにした。
「手伝おっか?」
由香里は嘸かし驚いたであろう。
こんな可愛くて皆に大人気の学校のアイドル・桐嶋 玲羅ちゃんが話しかけてきたんだから。
由香里は、
「今日放課後空いてる?」
とだけ聞いた。
ありがとうはないんだ。
私はオッケーしてあげた。
授業中。
いつものように、手紙が回ってきた。
送り主はいつも一緒につるんでいる沢田 奈々。
このクラスのNo.2だ。
もちろん、No.1は私だけど。
<さっきのあれ、何?>
私はすぐに返した。
<何が?>
<貞子に話しかけてたじゃん>
<何か可哀想だな~って。
好感度上がりそーだし>
<ああ~
面白そうじゃん>
<でしょ>
<アタシも入れてよ>
<いいよ>
こいつは、私の行くとこならどこでも付いてくる。
なぜなら。
私に付いてきたら人気が上がるからだ。
ということで。
私は由香里の代わりに、犬の飼い主探しをしている。
学校じゃなくて、住宅地で。
その方が飼い主見つかりやすそうだし。
今のところ。
候補ナシ。
いっぱい追い返された。
気付いたら、結構遅くなってた。
「次で最後にしない?」
奈々が切り上げよう、としている。
ま、暗くなってきたしいっか。
「うん」
私たちは「葛城」と書かれた家のインターホンを押した。
この家凄く金持ち。
広い駐車場には高級車が止めてある。
家の大きさも無駄に広い気が。
葛城さんは、つい最近引っ越してきたばっかりだっけ・・・。
ガチャ。
ドアが開いた。
中から出てきたのは、爽やか系のイケメンだった。
ジャージがなんか似合ってる。
「こんばんは」
奈々も同じことを考えてるようだった。
「あの・・・何か?」
そうだった!
「犬!飼いませんか?」
「雑種なんですけど、超可愛いんです、ほら」
私と奈々は、緊張しながら写真を見せた。
「う~ん・・・」
イケメンさんは悩んでいる。
カッコイイ~。
奈々の目もキラキラしてる、同じこと考えてる。
「いいよ」
イケメンさんはオーケーしてくれた。
「ホントですか?!」
「うん、もちろん!」
イケメンさんは、爽やかな笑を見せてくれた。
素敵~♥
「やった~!!」
いろんな意味で、私と奈々は飛び跳ねて喜んんだ。
ぐぅぅぅ。
私の腹の虫が鳴った。
「・・・・・ぷふっ」
嘘お!!
イケメンさんに笑われた。
奈々も笑いをこらえている。
「飯食ってく?」
私は腹ペコだったので、頷こうとした。
それより先に、奈々が
「はいっ!ありがとうございます!!」
と言った。
私もお言葉に甘えた。
「「・・・・・・巨神兵?」」
私と奈々は、イケメンさん=海斗さんにグラタンをご馳走してもらうんだけど・・・。
海斗さんのお母さんが作ったというグラタンは、巨神兵だった。
海斗さんは電話中。
「・・・うん・・・分かった・・・。
大丈夫・・・じゃ」
海斗さんは、電話を切ると、苦笑した。
「まあ、見た目はあれだけど、味は普通だから」
私たちは、一緒に食べ始めた。
味は意外と美味しかった。
家より、具が多くて、材料も新鮮な感じがした。
さすが、金持ち。
ちなみにご飯の後に、愛蝶姉に迎えにきてもらう予定。
「「ふぅ~」」
またハモった。
飼い主も見つかって、お腹満腹で、年上のイケメンに会えて。
最高の一日だった。
ピンポーン。
「あ、来た」
海斗さんは、
「一応挨拶」
と言って、3人で玄関に行って鍵を開けてもらった。
案の定、愛蝶姉が立っていた。
私と奈々は、家がすぐ近くだから途中まで送ってもらう予定、奈々が。
愛蝶姉は、海斗さんの顔を見て真っ赤になった。
お。
さすがの愛蝶姉も、イケメン・海斗さんには・・・。
て、あれ?
何か海斗さんまで固まってる。
これは居ちゃいかん・・・。
「奈々、ちょっと・・・」
私は海斗さんにウィンクして、海斗さん達から見えないところまで奈々を引っ張った。
「何か興奮する!」
「ミートゥ」
海斗さん達から見えなくても、こっちからは見えるし会話も聞こえる。
超ラッキー☆彡