返信
来ました。
待ちに待った桐嶋からの返信。
「ありがとう♥」
・・・・・・・・・・・・・・どうした?!
何があった?
あんなガードの堅い美少女がメールごときに・・・。
♥マーク・・・・。
嬉しいが、素直に喜べない。
欲張りです、はい。
オレの心臓はバクバクいっている。
只今、心拍数上昇中だ。
ヤバイ。
このままでは、心拍数が上がりすぎて死ぬ。
絶対死ぬ。
オレは興奮する気持ちを落ち着かせ、部屋から出た。
今日は珍しく母さんが帰って来ている。
こんな事は稀だ。
「あら海斗」
オレが2階から降りてくると、母さんはキッチンにいた。
「今日はね、母さん早く帰ってきてから料理しようと思うの。
海斗、何かリクエストはない?」
はっきり言おう。
母さんの料理は破壊的だ。
中学の時に急に
「弁護士になりたい!」
と思ったせいで、勉強ばかりして料理が出来なくなったらしい。
で。
こんな風に家庭的ではない。
ビジネスウーマンだ。
「るんるっる~ん♫」
答えないオレに呆れたのか、母さんは料理を作り始めた。
「今日は、グラタンを作るわ!」
母さんは料理ブックを片手に、料理を作った。
オレは、自分の部屋に戻ってクラスのヤツとメールをした。
しばらくして。
1階から母さんがオレを呼んだ。
オレはすぐに下に下りて、母さんの料理を観察した。
「何かねー、料理ブックとちょっと違うのよー」
そりゃそうだ。
母さんみたいな、食材の素質を分解するぐらいの天災はそうそういない。
母さんの料理は本当に笑えない。
呆れる。
オレは母さんの言う「グラタン」を見て一言呟いた。
「巨神兵?」
あのジブリの名作に登場する母さんのような、破壊兵器にそっくりだ。
「やーね!海斗ったら!
ウケなんてしなくていいのよ」
母さんは笑い飛ばした。
いや、マジなんだけど。
母さんは急にハッとなって、
「母さんちょっと銀行に行ってくるわ。
先に食べててね~」
母さんはそう言うと、さっさと家を出た。
やれやれ。
ま、こういうのは初めてじゃないんだけど、な。
オレは母さんの言う「グラタン」(巨神兵)を食卓に運んだ。
ピンポーン。
チャイムが鳴った。
面倒い。
オレはドアを開けた。