表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/31

私の興奮ー後編ー

 

カラン。

芹香姉さんはフライ返しを落とした。

「あ・あ・・・・げは?

 その服・・・どしたの?」

長い睫毛が上下にパチパチ開く。

「誰かと・・・ヤったの?」

すかさず出鳴姉さんが叫んだ。

「ヤったんじゃないのよ!

 ヤられたのよ!」

その声に気づいたのか、上からドタドタ・・・。

と階段を大急ぎで降りる音がした。

「なになに?!

 ヤったって?」

ダッシュで階段を降りてきたのは、我が家の末っ子。

四女の桐嶋 玲羅だった。

この玲羅はやたらと恋愛好き。

小四だというのに、恋愛にも私以上に詳しい。

色んな男の子から、たくさん手紙を貰っている。

「愛蝶姉、誰とヤったの?

 年上?年下?同級生?

 ねえねえ、教えてよ~」

私にキラキラした目を向けてくる。

「別に・・・。

 その・・・転んだだけ!」

私は嘘をついた。

「転んだだけでそんなになるわけないっ!」

「っ!あの・・・転んで階段から落ちたの!」

「それなら、服がもっと汚れてる」

「じゃあ、奇跡的に汚れなかったの!」

「転んで、落ちても、そんな着崩れしない」

「うぐぐ・・・」

ダメだ。

コイツらに嘘は通用しない。

「ねえ、愛蝶。

 とりあえず、お風呂に入って。

 もうすぐ夕ご飯できるから」

芹香姉さんはそれまで黙っていたのに、急に口を開いた。

「えぇ~。

 こっからが重要なのにぃ~」

「もうちょいだけ!

 ホント、すぐすぐ!」

ダダをこねる玲羅と出鳴姉さん。

私は芹香姉さんの言葉に従った。

すれ違い際に、出鳴姉さんが私に

「なぁに浮かれてんのよ!」

と冷かしの表情で耳打ちした。

へ?

浮かれてる?

この私が?

私はできるだけ表情を変えずに、出鳴姉さんを一睨みして、足早に風呂場に向かった。

ドアを閉めるなり、さっさと制服を脱いでハンガーに掛けた。

そして、下着姿になってから自分を鏡でじっくり見た。

確かに・・・。

出鳴姉さんに言われたとおり。

私の口元は何気に上に上がっている。

目はいつもより垂れている。

私は自分を恥ずかしく思った。

「こんなだらしない顔で歩いてたなんて・・・」

ショックだった。

私は下着姿の自分を改めて見た。

あの恐怖の時間は、私の頭に完全にこびり付いている。

胸を舐められた実感や、スカートに入ってくる手。

私は無意識のうちにしゃがみこんでいた。

怖かった。

それだけしか覚えていなかった。

そんな恥辱と屈辱の中、私は・・・。

下着も全部脱いで、風呂でシャワーを浴びながらアイツのことを考えていた。

アイツは私に手を差し伸べてくれた・・・。

昨日会ったばかりの。

こんな性格の悪い私に。

私は嬉しかった。

ん?まてよ?

なんでアイツのことばっか考えてるの?

これって・・・一目惚れ?

私は何で?

いや、何でっていうか。

え?え?

私は洗い終わった身体をタオルで拭いた。

混乱したまま部屋着に着替えて食卓に足を運んだ。

「ただいまぁー」

玄関でお母さんの声がした。

「おかえりぃ!!」

玲羅が大きい声でお母さんに言った。

「お母さん、荷物持つよ」

出鳴姉さんはお母さんの手伝いに回った。

「はいはい、ありがとう出鳴」

お母さん・桐嶋 翠は36才。

つまり、17で芹香姉さんを産んでいる。

出来ちゃった結婚らしい。

「芹香、そんなに動いて大丈夫?」

出鳴姉さんが芹香姉さんの具合を聞いた。

芹香姉さんは、かなり大きめのお腹をさすりながら、

「大丈夫。安定してるわ」

実は、芹香姉さんは妊婦。

しかも10ヶ月目。

お母さんと同じで出来ちゃった結婚。

予定日がかなり近づいている。

「今日もお医者様に順調ですよ、って言われたの」

「そう・・・。よかったわね」

と嬉しそうに目を細めた。

芹香姉さんの大きなお腹を愛おしそうに撫でながら、

「おばあちゃんですよ~。

 元気に産まれてくだちゃいね~」

と言った。

すると、玲羅もお母さん同様に芹香姉さんのお腹を撫でた。

「玲羅おばちゃんでちゅよ~。

 あんまり芹香姉いじめないでね~」

こうしていると、どこにでもある幸せをシミジミと感じる。

「愛蝶、あなたも撫でたら?」

突然私に話題を振ってきた。

私は、

「いいよ。

 別に・・・」











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ