7.三人の王子が到着
「ソフィアから離れろ。この扉のようになりたくなければな。」
「ウィリアム殿下?」
ウィリアムの姿にソフィアが驚く。
「ウィル、ソフィーが怖がってしまうから、やるなら目の届かないところで頼むよ。まあ、止めはしないけど。」
「イルお兄様…そこは止めてください。」
ニコラスは観念した様子でソフィアの上から降りると、ウィリアムとイルバートに対峙した。
「どうしてここが?何の手がかりもなく、一晩でたどり着けるような場所ではないはず。」
「手がかりならあったよ。」
イルバートがニコラスの横を通り過ぎて、ベッドの側までやってくると、ソフィアのドレスの乱れを直して、手を取り立ち上がらせる。
「手がかりになるようなものなど何も…」
「ああ、落とし物とかじゃないからね。空気中に残っていたソフィーの魔力を凍らせ帯のようにして、それを辿ってきたんだ。」
「そんな高度な氷魔法、君たちには使えないはず。」
「そうだね、ウィルは炎魔法、私は風魔法が専門だから、2人だけだと厳しかったかな。」
「魔法…。」
そういえばこの世界って魔法が使えるんだった。別の時代、別の国にタイムスリップしたと思ってたけど、これは完全に異世界転生というやつね。でも、元の私の肉体も死んでないはずだから、転生ではないのかしら。
「ほんとに2人は人使いが荒いんだから。」
燃える瞳で威嚇するウィリアムの後ろから、もう1人誰かがやって来る。
「僕昨日、一世一代のプロポーズしたばかりなんだけど。でもまあ、間に合ったみたいで良かった。大事な弟の大切な人を守れたんだからね。」
「レイモンド殿下…。なぜおふたりが一緒に。」
レイモンドは顔は笑っているが、青く凍るような冷たい瞳でニコラスを捉える。
「ああ、よく誤解されるけど僕たちは仲が悪いわけじゃない。表面上は仲良しこよしじゃない方が、色々と都合がいいんだ。だから敢えて対立した構図を意図的に作っている。本当のところは、僕はウィルが大好きだし、ウィルも僕が大好きだよね?」
「ああ、そうだな。ソフィアを助けてくれたから、今はさらに大好きだ。」
ウィリアムが真顔でそう答えたので、レイモンドは苦笑いする。
「そうですか…。油断しましたね。」
「でも、どうしてこのタイミングで?8歳から私を慕っていたのであれば、もっと早く手篭めにする事も…おっと。」
頭に浮かんだ率直な疑問を口に出してしまい、令嬢らしがらぬ発言をしてしまった。慌てて口を押さえる。
「先ほども申し上げた通りで、成人するのをお待ちしていました。そもそも18歳以上の成人でなければ結婚はできませんし。それにレイモンド殿下への恋心を残したまま手籠にしてしまえば、心は一生手に入らないと思ったのです。ですから、レイモンド殿下の婚約者指名が終わった後、ウィリアム殿下がソフィアを指名するまでが好機だと。今となっては身体だけでも手に入れておけば良かったですね。」
ニコラスは切ない表情で笑った。
その瞬間、ウィリアムの手から炎が出かけたが、慌ててレイモンドが氷魔法で鎮火した。
この人は、やってる事はストーカーだし、変態だし、誘拐犯だけど、ソフィアの事が大好きなだけで、根っからの悪人ではないんだ。
「それにしても、場所はバレないだろうと警備を手薄にしてとはいえ、誰も主を助けにきませんね。」
「靴を氷漬けにして、動けなくした上に、途中の廊下を氷張りにして、さらにこの部屋に続く廊下には念のため氷の壁を作って来たからね。普通の警備兵ではなかなか辿り着けないと思うよ。」
「…さすがです。」
「ウィルもイルバートも全く後ろを気にせず先に行っちゃうから、僕が追ってくる警備兵を全部相手していたんだよ。」
「警備兵程度、何人いようがレイひとりで十分だ。」
「一応僕、来月には立太子の儀式が控えている王太子なんですけど。」
「兄上にはとても感謝しています。さすがはこの国を背負って立つ王太子。」
「はあー、もういいです。何でもやります。やらせて頂きます。」
穏やかに会話しているように聞こえるが、赤と青の瞳は一瞬たりともニコラスから目を離さない。イルバートのみがソフィアに様子を気遣わしげに見ている。そしてソフィアはニコラスを複雑な様子で見つめていた。
「では続きは、王都に連行してから聞かせてもらう。」
ウィリアムはニコラスに魔封じの手錠をかけようとしたところで、ソフィアは口を開いた。
「待ってください。テイルストン伯爵は夜会で倒れた私を介抱して、この屋敷で休ませてくださっただけです。何も悪い事はしていらっしゃいませんわ。」
「「「えっ?」」」
ソフィアを助けにここまで来た3人が声を揃えて驚き、唖然としている。
「貴方は何を…。」
ニコラスまでもが驚き目を見開いていた。




