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満身創痍だったのでちょっと愚痴をこぼしたら、さらに身も心も削られました  作者: 朔島 涼


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6.なるようになる

もうこうなったら諦めて、大人しくニコラスの妻になろうかしら。ソフィアの事になるとストーカー気質でだいぶ気持ちが悪いけれど、本来の私とは歳もさほど変わらないし、おじさんって感じはしない。

見た目も、レイモンドやイルバートに比べればそりゃ劣るが、十分整った顔立ちをしている。

仕事もできるし、生活にも困らなさそう。


ソフィアには申し訳ないけれど、勝手に人生入れ替えちゃったんだから、どうなろうと文句ないわよね。もう、なるようになる。



ニコラスは庭を案内しながら、珍しい植物の前を通るたび丁寧にその説明をしてくれていた。


「新居の庭は気に入ってくださいましたか?あまり広くはないのですが、育てている植物の種類が豊富なので、なかなか見応えがある庭でしょう?」

「ええ、とても素敵なお庭でした。テイルストン伯爵のお話もとても面白くて、勉強になりましたわ。」


博識だな、と思ったのは本当なので素直に褒めると、ニコラスは複雑な表情をした。


「私たちは夫婦になるのですよ。いつまでも、その呼び方は堅苦しすぎますね。ニコラスとお呼びいただけますか?」

「そうですわね。でも、いきなりはちょっと難しいので、徐々に…」

「今、呼んでください。ニコラスと。」


ニコラスは笑顔のまま圧をかけてくる。


「に、ニコラス様」

「はい、ソフィア。」


ニコラスはとても満足げに笑った。


「ではそろそろ部屋に参りましょう。」

「…はい。」


無意識に足取りが重くなってしまったが、ニコラスに腰を抱かれてエスコートされ、順調に部屋にたどり着く。


「ここです。さあ中へどうぞ。」


中に入ると、ソフィアはゾッとした。


「…素敵なお部屋ですね。」

「ソフィアを迎えるために半年前から準備していましたから。お気に召したようでよかったです。侯爵邸の貴方のお部屋を参考にさせていただきました。」


半年前にはすでにこの誘拐事件を企てていて、その前からソフィアの部屋も物色してましたって事ですね。

やっぱり無理かも、ストーカーとは結婚したくない。


「ここがクローゼットです。貴方が好みそうなドレスを取り寄せておきました。本棚にはお部屋にあったものと同じ本を、鏡台にはいつも使われていたお化粧を置いてあります。あと、あちらの扉は隣の私の部屋に続いてます。それから…」

「あの、つかぬことをお伺いしますが、このお部屋にはベッドがないのでしょうか?」

「ええ、私と一緒に寝るので、こちらのお部屋にはベッドは置いてありません。」

「今日からですか?」


驚いて、思ったよりも大きな声が出た。


「もちろん今日からです。ああ、今からでも私は別に構いませんよ?」


ニコラスの瞳の色が変わった気がする。やばい、何かスイッチを入れてしまったかも。


「いえ、まだ日も高いですし、今からは…。それに私とニコラス様はまだ正式な夫婦ではありません。少し性急な気がいたします。」

「10年です。」

「え?」


ニコラスはにこりと笑い、ソフィアを抱き上げる。


「お慕いし始めてから10年。貴方が成人するのをずっと待っていました。もうこれ以上、待てません。」


ニコラスはそのまま扉を通って続きの自室に入り、ソフィアをベッドの上に下ろした。


ソフィアが現在18歳。10年前となると8歳のソフィアちゃんに恋しちゃったって事よね?10年前でもニコラスは30手前のいい大人、ロリコンもロリコンだわ。

ソフィアちゃんしか目に入らなくて、婚期逃しちゃったのね。喋らなければそこそこ優良物件なのに、恋愛方面が残念すぎる。

貞操の危機を目前にして、多少の焦りはあるものの、中身は純潔の乙女ではない。人並みに恋愛経験のある大人の女だ。


もうなるようになるか…と静かに目を瞑ると、ニコラスの顔が近づいてきた。キスされるっと思った瞬間、遠くの方で、ドオーンと何かが爆発する音が聞こえた。


「「何?」」


目を開けると、鼻がぶつかりそうなほど目の前にニコラスの顔があり、反射的に顔を背ける。

慌ただしく廊下を駆ける音がして、コンコンコンと扉がノックされる。


「ニコラス様。」

「どうした。」

「お取り込み中失礼いたします。ウィリアム殿下とイルバート様が、玄関でお暴れになっていらっしゃいます。」


おそらくアンナの声だ。暴れるに敬語つけると、そうなるのか。助けが来た安心感でそんな事を考える余裕ができた。


「こちらに用はないと、お帰りいただきなさい。殿下といえども不法侵入です。」

「かしこまりました。」


タッタッタッと足音が遠のいて行った。

誘拐犯のくせにどの口が不法侵入を訴えているのだ、とソフィアは思う。


「思ったよりも早かったな。せっかく領地内でも、伯爵家所有と公言していない屋敷を選んだというのに。助けが来る前に、既成事実を作って結婚に持ち込むという計画が…」

「ニコラス様?心の声が全て口に出てしまっていますわ。助けが来る前にと言うことは、悪いことをしている自覚はあったのですね。」

「さて、何のことでしょう?今からでも遅くない、既成事実を…」

「きゃっ」


ニコラスが少し焦った様子でドレスの裾を捲し上げたところで、部屋の扉がボッと燃えて焼け落ちる。

そこには、扉を燃え尽くした炎よりも、さらに燃えるような赤い瞳をしたウィリアムが立っていた。

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