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満身創痍だったのでちょっと愚痴をこぼしたら、さらに身も心も削られました  作者: 朔島 涼


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SS④前編.ローゼン侯爵家の近況報告【TOP100ランクイン御礼!】

「暇だな、イルバート。」

「そうですね、父上。」


社交界シーズンが終わり、アンリとアレックスがローゼン領に戻ってしまった。侯爵邸の中はガランとしていてシーズン前の静けさが戻る。さらにはエマとアンソニーまでソフィアブティックに引き抜かれてしまった。


「まあ、おふたりともだらしがないですわ。」


ソファに浅く腰をかけ、テーブルに突っ伏していたイルバートとローゼン侯爵に喝を入れる人物。イルバートの妻、ライラだ。結婚式が終わり、侯爵邸に引っ越してきた。




ふたりの結婚式はカメリエ公爵夫妻と王太子夫妻もお祝いに駆けつけて賑やかに開かれた。イルバートが終始大号泣していたが、ライラがずっと優しく背中を撫でていた。ライラのドレスはソフィアが腕によりをかけて手がけたため、それはもうとても美しい仕上がりであった。


エメラルドグリーンのプリンセスラインのドレスでチュールのスカートが広がる美しいシルエット。スカートの上部にはオーガンジーとサテンの生地を重ねて風のような立体的な動きを出した。トップ部分は同じサテンの生地を扇子の様に折りたたんで、品のあるデザインに。ドレス全体に造花の向日葵を豪華に飾りつけ、アッシュブラウンの髪には生花の向日葵を飾ってもらった。ライラのオレンジ色の瞳にとてもよく似合った。大きな子どものイルバートには茶色のタキシードにオレンジブラウンのベストとネクタイを合わせ、胸にはライラの髪とお揃いの向日葵を飾った。


「イルお兄様が泣いていなければ最高の出来なのに…」


ソフィアは式の間ずっと頭を抱えていた。


「ははは。…ふむ、ソフィアのドレスはいつでも最高だ。」


最初は大笑いしたウィリアムだが、頭を抱えたままソフィアに睨め付けられ、その後はずっと王子らしい微笑みを浮かべていた。





そんな結婚式から早くも3か月が経とうとしている。


「そんなにお暇でしたら、今度開かれる狩猟大会にでも参加されてみては?」

「狩猟大会?」

「ああ、ウィルの領地で開催するあれだろう?」

「ソフィア様にもウィリアム様にもお世話になっていますのに、ローゼン侯爵家が不参加では合わせる顔がありませんわ。」


ウィルの領地、すなわちカメリエ公爵領は王都からはさほど遠くなく、さらにかなりの広さがある。これだけ聞くとすごくいい領地に聞こえるが、そこは誰も治めたがらない土地だ。何故ならば、その領地の半分以上が森で覆われている上に、その森に生息する魔獣たちはとんでもなく凶暴なのだ。ちなみにサムスクライン王国の他の地域の魔獣は大人しいものが多い。


「あそこの魔獣を討伐するのはウィルの仕事なのに。ほんと困ったもんだね。」


そう、その森の魔獣を抑え込むためにその領地は第二王子である頃からウィリアムの領地であったし、今では公爵領となっている。しかし、何かと休みをとってソフィアと一緒に過ごそうとするため、森の魔獣はかなり数を増やしているようだ。


「しかしまあ、ソフィアのために頑張ると思えば悪くないな。」

「確かに。ソフィーのためにね。」

「では、早速エントリーして参りますね!」


ライラはそう言うとすぐに部屋を出て行った。ちなみにこういった仕事は本来執事などに任せればいいのだが、文官時代の癖でライラがテキパキとこなしてしまう。その後ろ姿を見て、イルバートは嬉しそうに微笑む。


「張り切ってるな、ライラ。ここは妻にいい所を見せるためにも頑張ろう。」

「ああ、その方がいい。」

「どういう意味ですか?」

「…いや特に意味はないが。」


ローゼン侯爵は目を泳がせた。


「まあ良いですけど…。学生時代はなかなか強かったんですから。ウィルには敵いませんでしたけど、剣技も魔法も5本の指には入ったり…入らなかったりしてました。」

「そうだな。何ともイルバートらしい成績だった。ふっ…」


ローゼン侯爵の肩が震えている。


「何で笑うんですか。もう、今から侯爵家の騎士に混じって訓練してきます。」


イルバートもプンスカと怒りながら部屋を出て行ってしまった。


「ふふ、ソフィアもイルバートもいいパートナーに巡り会えて本当に良かった。」


イルバートの後ろ姿を見ながら、ローゼン侯爵は呟いた。

後編に続きます!

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