30.ハッピーエンド
「今日のパーティーには王太子殿下ご夫妻と、カメリエ公爵ご夫妻がお揃いになるのよね。」
「4人お揃いになるのは公爵ご夫妻の結婚式以来ね。」
「あの日のソフィア様のドレス、本当に素敵だったわ。」
「今日のドレスも楽しみですわね。」
「きっとブティックの新作よ。」
若い令嬢たちが期待に胸を膨らませる中、カメリエ公爵夫妻と王太子夫妻が入場すると、歓声や悲鳴があちこちで上がる。
ソフィアとウィリアムはボルドーのドレスとジャケットを着用しており、ドレスはシンプルなシフォンのAラインドレスだが、オフショルダーに赤い薔薇をメインに花をたくさん飾り、腕にブーケをつけているような可愛らしいデザインにした。
エアリスとレイモンドはロイヤルブルーのドレスとジャケットを着用しているが、ドレスは同じくシンプルなシフォンのAラインドレスに、胸元からオフショルダーにした袖、背中まで一面に青い薔薇をモチーフにしたコサージュをこれでもかと配置した華やかなデザインだ。
ウィリアムとレイモンドのジャケットも少しデザインは違うが、胸元にそれぞれ青と赤の薔薇のコサージュをつけている。
そう、なんと4人でリンクコーデにしたのだ。
3人とも嬉しそうだが、デザインした私自身は少しだけ気恥ずかしい。
「ソフィア様、今度のパーティー、せっかくですから2人で少し似たデザインのものにしてみんなを驚かせない?」
「良いですね、やりましょう!」
エアリスらしい可愛いイタズラに心躍り、デザインしている時は楽しかったのだが、袖を通すところまで想像できていなかった。
不仲だと思われていた王子姫同士(ソフィアがレイモンドを好きだった事は同世代では周知の事実)がリンクコーデをしていたら世間を驚かせられるし、王太子妃がそのドレスを着れば、ソフィアブティックの格が上がる。エアリスの優しい計画だ。
唯一の誤算はレイモンドまで巻き込んでしまった事である。ウィリアムは絶対揃えてくると覚悟していたけれど…。
まあやってしまったもんは仕方がない。開き直って堂々としていると、そのパーティーの間にも令嬢とそのご両親によるドレスの注文が殺到し、夜会は商談の場となってしまった。まだ値段を決めていなかったため、適当な事を言ってしまったが、隣にいるウィリアムの顔色がどんどん悪くなっていったので、後で職人たちから怒られるかもしれない。
値段が決まり次第、訂正と謝罪の手紙を各方面に出すことになるだろう。
次回からは気をつけようと思う。
「ソフィア様、素敵なドレスをありがとうございます。」
「ふふっ。僕とウィルがお揃いの服装をするなんて、子どもの頃以来でとても楽しかったよ。皆の驚いた顔も楽しかったし、また頼みたいな。」
「こちらこそありがとうございます。喜んでいただけてわたくしも嬉しいです。また、よろしくお願いします。」
「ソフィーのドレス姿、やはり綺麗だ。いつもの仕事している姿も素敵だが、今日は久しぶりにふたりでパーティーに出席できて嬉しかった。またエスコートさせてほしい。」
「もちろんですわ!」
一年たってもウィリアムはソフィアに激甘である。王太子夫妻とカメリエ公爵夫妻は、退場の時まで大きな歓声で見送られ、その姿はまるで元の世界のアイドルのようであった。
その頃、ローゼン領の裏路地では、
「魔女カミラの店、やっと見つけた!これで、自由になれるはず!」
カランとドアが開く。
「いらっしゃい、魔女カミラの店にようこそ。今日はどんな無理難題を持って来たんだい?」
「お願い、私を誰かの人生と入れ替えて欲しいの。貴方ならできると聞いて…。」
「何年かに一度、そういう客が来るね。どこで出回っているんだか。まずは、話を聞かせておくれ。」
カミラは苦笑いしながら水晶から手を離す。
手を離す瞬間に映っていたのはソフィアだった。
「人の人生を変えてしまう注文だ。事情によっては断らせてもらうよ。」
「分かりました。実は…」
こうして、また誰かの人生が変わる…かもしれない。
おしまい
最後までお読み頂きありがとうございました。
この作品は当初、皆様の目に触れるなど畏れ多い、と全く公開する予定はなかったのですが、改修と肉付け作業を繰り返し、何とか最後まで形にすることが出来てホッとしております。
また、予想していたよりもたくさんの方にお読み頂き、本当に嬉しく思っております。
続編の予定は今の所白紙ですが、SSの案はいつくか考えているので、形になればアップしたいと思っております。
それまで、心の片隅にでも『満身…』を留めていただく、もしくはブックマークを残していただけると嬉しいです。
また別の作品も書き始めていますので、近々公開していこうと思っております。そちらも、お立ち寄り頂けると嬉しいです。
では。




