23.ご両親へのご挨拶
「アレックス、いろいろありがとう。また来るね。」
「うん待ってるよ。殿下にはちゃんと伝えてから帰ってきてね。」
笑顔だがアレックスの圧が怖い。殿下の強襲が相当なトラウマだったのだろう。本当に申し訳ない。絶対にきちんと説明してから来ることにしよう。
馬車に荷物を積み込んで、ソフィアも乗り込む。ローゼン領に来た時は1つだったカバンが2つになっている。増えたカバンには前回見つけていた勉強ノート、今回ワードローブで見つけた日記とデッサンノートを全て詰め込んだ。
『後のことは、よろしくお願いします。』
元ソフィアの最後に聞こえた声を思い出す。
「ふぅ、頼まれたら断れないわたくしの性格を分かっていたのかしら。」
ため息を吐きながらも、ソフィアの顔は嬉しそうである。私とソフィアが入れ替わった謎は解けたし、やるべき事は決まった。それに、これは元々私の仕事でもある。
「絶対にやり遂げて見せるわ。」
覚悟を決めたソフィアとデッサンノートを載せた馬車が王都に向けて走り出した。
4日目の朝に王都のタウンハウスに到着し、例の如くピカピカに磨き上げられて、昼過ぎには王城に連れて行かれた。もはやソフィアは、忙しくしていないと死んでしまう呪いにかけられていると思う。(何度も言いますが、自己都合で領地を往復しています)
「領地から戻って早々に呼び出して、申し訳ない。」
「とんでもございません陛下。お会いできて光栄です。」
震える足でカーテシーをとる。
目の前にはウィリアムとレイモンドが歳を取ればこうなるのかな?と思わせるイケおじ、もとい国王陛下が鎮座されている。
謁見の間ではなく、王族のプライベートな空間に通された事に、この呼び出しの意味は何となく理解している。そして足の震えは、多少の緊張もあるが、主に疲れに起因している。
「ウィリアムの婚約者指名の儀が目前に迫っているのだけれど、貴方の意思を確認させてもらいたくて。」
国王陛下の隣で優雅に微笑んでいるのが、王妃陛下。殿下たちのお母様とは信じられないくらいのお美しさ。お二人並ぶと流石の迫力である。
「失礼ながら、確認と言いますのは…。」
恐る恐るお伺いする。
「まあ、そんなに畏まらないで。こちらに座って一緒にお菓子をいただきながらお話ししましょう。」
顔を上げていいのか分からなかったので、ソフィアはカーテシーをとったまま目線を下げて話していたが、許しが出たので立ち上がる。そして促されたソファに腰掛けた。
「このお菓子美味しいのよ。」
王妃陛下自らお菓子を取り分けてくださり、部屋に控えていた使用人の方が、ソフィアの分の紅茶も用意しててくれた。お腹が空いていたので、普通に頂いた。美味しい。
お二人とも、道中問題なかったか、領内はどのような様子だったか、弟は元気だったかなど、気さくに話して下さり、なかなかに話は弾んだ。今日は何の用事だったっけ?と忘れかけた頃に本題が始まる。
「ソフィア嬢はウィリアムの事をどう思っているのかしら?」
「ウィリアム殿下は強く、優しく、聡明な方ですわ。」
迷う事なくそう答えた。多くの国民が同じ意見であろう。
「そうだな。男の子2人で権力争いに巻き込まれたらと心配したが、2人とも優しく強く立派に育ってくれた。権力争いにも担ぎ出される事なく、上手くかわしてくれている。」
「どちらが時期国王でも安心して任せられる王子に育ってくれましたね。」
ソフィアも頷く。
「しかし、私たちが聞きたいのはそう意味ではない。結婚相手としてはどうかな?」
「結婚相手として…。」
「ウィリアムがソフィア嬢を追いかけ回していたのは知っているのよ。だからね、ソフィア嬢は本当は嫌なんじゃないかと思って。親としては、ウィリアムの願いを叶えてあげたいんだけど、ソフィア嬢が幸せでなければ、結果としてウィリアムも幸せにはなれないと思うの。」
「正直に話してもらって構わないよ。」
「わたくしは…。」
「ゆっくり考えていいのよ。」
「…わたくしは、ウィリアム殿下に選んでいただいて、とても嬉しいです。幼い頃からずっと見守っていただき、大切にしていただいています。正直に申しますと、戸惑った時期もありましたが、今はわたくしも同じように殿下を大切にして、支え合えていけたらと思っています。」
「そう。」
ソフィアの言葉を聞き、国王陛下と王妃陛下が顔を見合わせ嬉しそうに頷く。
「今は殿下と同じだけの愛を返せているのか自信はないのですが、この先殿下と一緒にいて幸せになる自信はすごくあります。」
「嬉しいわ。改めてウィリアムをよろしね。」
王妃陛下に手を取られ、微笑みを向けられてドキドキしてしまう。
「こ、こちらこそ、よろしくお願いいたします。」
慌てて立ち上がって頭を下げた。無意識に日本人っぽい行動をしてしまい不審がられていないかと不安になったが、お二人とも笑ってくれて心底ホッとした。
国王陛下と王妃陛下がお義父さま、お義母さまになるなんて、少し前の自分なら考えられない事だが、今は自然と受け入れている。意外と高い自身の適応能力に驚きながら家路についた。




