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満身創痍だったのでちょっと愚痴をこぼしたら、さらに身も心も削られました  作者: 朔島 涼


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挿話 あの面白い…

「ウィリアム殿下は昨夜から私を揶揄ってばかりですね。急に昔のように愛称で呼んだり、エスコートや、ファーストダンスに誘ったり、自分のものだとか、綺麗だとか。し、心臓に悪すぎます。」


真っ赤な顔で抗議していたな。

以前のソフィアならば、石ころでも見るような無関心の目しか向けられなかったのに。

あの可愛い生き物はなんなんだ。



「何ですか、このださ…いえ、クラシック過ぎるドレスは!」


絶対にダサいと言いかけたな、ドレスの一流デザイナーを前に。ふふ…。

あの面白い生き物はなんなんだ。


「そ、そんなに素敵な生地を使うのに、このデザインでは…生地が勿体無いです!」

「ははは、よく言った!よし、ではドレスと宝飾品のデザインは全てソフィーに任せよう。」


そう言ったものの、あそこまできちんとしたデザインを出してくるとは思っていなかった。

本当に面白い。



「嫌いなわけないじゃないですか。ウィリアム殿下を嫌いな人なんていません。」


しかも、私の事は嫌いではないらしい。

これはもう、明日結婚しても問題なかろう。


この三日間一緒に過ごし、今のソフィアは以前のソフィアとは別の人物であるとしか思えない。しかし、彼女から感じる気配や魔力は今までと全く同じものた。いったい彼女に何があったのか。


そう言えば、彼女は熱心に昔の日記を読んでいた。私がノックして部屋に入っても気が付かないほどに。何が関係があるのか。


何れにせよ私が暴走して、再び彼女の心が逃げてしまわぬよう気をつけなければ。そう心に決めた次の日

『親愛なるウィリアム殿下へ

領地へ帰ります。

ソフィア・オリヴィエ』

と手紙が届いた。


冗談であれば面白いが、ソフィアには前科があるので笑えない。昼食を食べているところであったが、早々に切り上げる。


「今日は午後から公務が一件入っているな。それを終わらせてからローゼン領に向かう。夜通し走るから、途中で馬を乗り換えれるよう伝令を飛ばしておいてくれ。」


私の事を嫌いではないと言っていたのに。なぜ、また離れていってしまうのか。とにかく話をしたい、会いたい。



そして、馬車は通れない近道を夜通し走った結果、ソフィアよりも半日も早くローゼン領に到着した。そうとは知らず、屋敷の扉を全て開けて周り、ソフィアの姿を探す。


ドンッ。思い切り押しても開かない扉が一つあった。


「ここか!」


そして扉は音もなく燃え落ちた。その瞬間、ゾロゾロと後ろから付いてきていた使用人たちから歓声が上がる。


「わぁ!開きましたね!」

「早速運び出してしまおう。」

「いやー、修理まで日にちがあったので助かりました。」

「は?」

「ちなみに、ソフィア様は今日の夕方以降の到着だと思われます。」

「先ほど、前ぶれのお手紙が到着したばかりですので。」

「なぜ今それを伝える?まさか、私にこの扉を開けさせるために適当な事を言って、誘導して来たのではあるまいな?」

「ごめんなさーい。」


部屋の中から必要なものを運び出した使用人たちは散り散りになり、そこに残ったのは小さな男の子1人だけ。


「ははは、流石侯爵家の使用人たちだな。私を顎で使うとは。」

「申し訳ございません。」


冗談のつもりで言ったのだが、男の子は真っ青になって謝罪する。そうか、この子は私がローゼン領によく遊びにきていた事を知らないのか。ちなみに、先ほど周りにいた使用人たちは昔から知っている顔馴染みたちだ。悪い事をしたな。


和解を図ろうと、言われるがまま応接室に連れて行かれ、もてなしを受けた。手を替え品を替えいろいろな話をしてみたが、ソフィアの幼い頃に瓜二つなその男の子から笑顔を引き出すことはできなかった。逆にどんどんと疲れの色が見え始め、可哀想になってくる。


「夜通し馬を走らせて疲れた。休む場所を借りても?」


ウィリアムのその言葉に、男の子は心底ホッとした顔をしていた。すぐ家族になるのだ。誤解が解けて仲良くなれる日が来るといいなと思い、苦笑いを浮かべるウィリアムであった。



しばらく客寝室で休んでいると、ソフィアの馬車が到着した旨が知らされた。ウィリアムは飛び起きて、屋敷の外の馬車寄せに向かう。


「さあ、愛しの姫からこの度の逃亡の言い訳を聞こうか。」


そうして、ソフィアは極上のホラー体験をし、ウィリアムに捕まるのであった。

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