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満身創痍だったのでちょっと愚痴をこぼしたら、さらに身も心も削られました  作者: 朔島 涼


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21.夢の中の男の子

4月21日雨

今日は夢を見た。懐かしい夢。

あの日助けてくれたのは赤い目の男の子。

青い目の男の子ではなかった。



昔の夢、『助けてくれたのは赤い目の男の子』か。赤い目はウィリアムだ。

『瞳も髪も同じ色だと、どこかのおっちょこちょいが、見分けがつかなくて困るだろう?』

ウィリアムの言葉を思い出す。どこかのおっちょこちょいはソフィアか。


おそらく、ローゼン領内で魔獣に襲われた時の話だろう。しかし、ソフィアの体に残る映像では、振り返って話しかける男の子は確かに青い目をしている。しかし、使っている魔法は炎のように見えるし、魔法を使っている時の目は赤い気もする。


「王族は自分の目の色を変える魔法を使える…。」


7歳のソフィアを守ったのはレイモンドではなくウィリアム。


「でもなんで、ウィリアム殿下は王太子殿下のフリをしたのかしら。そんな事したって誰も得しないのに。」


それに、初恋の相手は結局のところウィリアムで、求められているのもウィリアム。ソフィアは何が不満だったのかしら…。



5月19日晴れ

ウィリアム殿下から誕生日パーティーの招待状が届きましたが、お断りの返事を返しました。もう会いたくない。


7月31日晴れ

ウィリアム殿下から、またお手紙が届きました。殿下からの手紙は私に渡さず、中身の確認だけ行なって処分するよう執事に伝えました。


11月11日曇り

年明けの新年式典の招待状がレイモンド殿下から届きました。ウィリアム殿下からの手紙だと届かない事がバレたのでしょうか。流石、ウィリアム殿下です。何とお断りすればいいのでしょう。


2月9日雪

国王陛下より、レイモンド殿下の婚約者指名の儀へ出席するようにと王令が届けられました。行くしかありませんね。もう間に合わないかもしれない。


で、入れ替わってすぐ向かったのが、その婚約者指名の儀ね。何が間に合わなくて、今この状態は間に合ったのだろうか?


「あぁ、もうさっぱり分からないわ。」


しかし、ウィリアムへの対応が酷すぎる。よく諦められなかったものだ。王都の日記の内容など可愛いものであった。日記を机の上に置き、うーんと伸びをしていると部屋の扉をノックする音がした。


「姉さんいるの?せっかく帰ってきたのに部屋に閉じこもってないで、一緒に昼食でもどう?」

「ありがとう、アレックス。すぐに下りるわ。」

「分かった、先に下りて待っているね。」


可愛いアレックスの誘いは断る訳にはいかない。軽く片付けて一階にあるダイニングルームに向かう。椅子に座っていたアレックスは立ち上がり、ソフィアの椅子を引いてくれた。


「おはよう、姉さん。」


アレックスは私が今までゴロゴロ寝ていたと思っているのかしら。


「長距離の移動お疲れ様。立太子の儀の後、そのまま馬車に乗ってきたんでしょ?本当に姉さんの行動力には尊敬するよ。」

「そう?」

「いつでも何だか忙しそうなんだけど、それを楽しんでるんだよね。やりたいことがちゃんとあって、それに向かって頑張ってるんだなって。」

「やりたい事か…。具体的に何をやりたかったのか知っている?」

「詳しくは教えてくれなかったけど、服飾関係のことじゃないかな?ドレスの絵をたくさん描いていたし。」

「やっぱりそうよね。」



テーブルに並べられた美味しそうな料理を頬張りつつ、アレックスの話を聞く。


「ウィリアム殿下を避けていたのはなぜかしら?」

「それは前にも言ったけど、単純に嫌いなんだと思っていたよ。殿下は素敵な方だけど、少し変わったところがあるから、恋愛対象として万人受けするタイプではないよね。特に姉さんにはしつこく付き纏っている様子だったし。」

「付き纏っている…か。でもわたくしはウィリアム殿下の気持ちに気がついていなかったのでしょう?」

「流石にそれはないんじゃないかな。こちらに届いていた手紙にも『会いたい。』『愛している。』『好きだ。』とか、直接愛を囁く内容だったし。」.

「…そう。」

「で、途中から目にするのも嫌になった姉さんが、自分に届けずに処分するよう指示したってわけ。」


学園にいた頃のアプローチでは全く気がついてもらえていなかったものね。領地に引き篭もったソフィアに焦りを感じて直接的なアプローチに変えたのかしら。


「姉さんはそりゃ素敵だし、国内一の美少女だと思うけど、あそこまでの態度を取られたら普通は諦めるよね。本当にしつこいというか、執念深いというか…。」


アレックスの言葉を聞いて笑顔が引き攣る。9歳の子どもからこの評価とは。


「でも、いいところもたくさんあるのよ。まあブチャぶりしてきたり、後をつけてきたり、人の屋敷を壊したり、人を焼き払いかけてたけど…」


アレックスの顔もどんどん引き攣ってくる。


「それだってわたくしを助けるためにやった事だし、学生時代だって多分私が心配で付き纏っていただけだと思う。ムチャぶりだって、わたくしがドレスにこだわりがある事に気づいて、好きにさせてくれたんだと思うわ。」

「…まあ、姉さんがいいのなら、よかったんじゃない?」


アレックスはそれはそれは美しい笑顔で首を傾げた。ウィリアムの良さ伝わらず、無念。

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