18.姉弟団欒
「姉さんはウィリアム殿下が嫌いなんだと思っていたよ。」
「そうなの?」
ウィリアムが帰った後、アレックスと姉弟水入らずで紅茶を飲んでいる。侍女たちが中庭にテーブルを出してお茶の用意してくれたのだ。アレックスが昨晩、ソフィアとの晩餐を一緒にとれなかったと残念そうにしていたので、急遽考えてくれたらしい。アレックスがこの屋敷で大切に扱ってもらってる事が伺えてとても嬉しい。
「え?だって、ウィリアム殿下からの手紙は執事に中身を確認だけして捨てるように指示していたし、贈り物も全部送り返していたじゃない。あ、2回くらい直接殿下がいらっしゃった時も居留守を使っていたし…」
なんとまあ、ソフィアさんはよっぽどウィリアムの事が嫌だったのだろうか?昨夜のウィリアムの話とも一致する。しかし、イルバートやローゼン侯爵の話、そして侯爵邸で見た日記の内容から抱く印象とは全く違う。王都にいた頃のソフィアさんは、少なくともウィリアムを嫌っているような感じではなかった。
「んー、私もよく分からなくて。」
「分からないとは?」
「何で、ウィリアム殿下を避けているのかとか、本当にわたくしがレイモンド殿下が好きだったのかとか。何だか記憶が混濁してしまって。映像の記憶はあるんだけど、その時どう思っていたのかとか、何を考えていたのかとかが覚えてないの。」
前世の記憶とか異世界云々とかは抜きにして、大体本当の事を話してみた。ウィリアムにも同じような事を打ち明けたし、家族には後々話そうと思っていた。
「えぇ!それ何かの病気なんじゃないの?姉さん大丈夫?お医者さん呼んだ方がいいんじゃ…」
ウィリアムが落ち着き過ぎていたため、至極真っ当な反応が返ってきて、逆にびっくりしてしまう。眉を顰め、青い瞳が不安そうに揺れる。
「だ、だ、だ、大丈夫だよ、たぶん。色々あり過ぎて疲れちゃっただけだと思う。たぶん。」
王都に帰ってから、レイモンドの婚約パーティー、誘拐事件、ウィリアムのプロポーズ、ウィリアムの突撃訪問、ドレスのデザイン無茶振りなど1週間の間に色々あった事を伝えて、何とか納得してもらう。
「直前の領地に帰ってきていたこともあまり覚えてなくて。私どんな様子だった?」
「うーんと、よく街に出かけていたかな?と思ったら部屋に閉じ籠ったり。物凄く機嫌がいい日もあったし、落ち込んでる日もあったし。何だか今思えば情緒不安定だったかも。」
「その時と同じような行動を取ってみようと思うけど、心配しないで。同じ事をすればなにか思い出すかもって思ってるだけだから。」
「うん、わかった。何か困った事があったら何でも言ってね。」
不安そうな表情から少し笑顔が戻る。
「ありがとう、アレックス。ちなみに、殿下が壊した扉はどこかしら?」
せっかく戻ったアレックスの笑顔が引き攣ってしまった。その日は屋敷の壊れた扉を確認し、領地の屋敷の執事と使用人たちに謝罪して回り、あっという間に1日目が終わった。ちなみに、ウィリアムが壊した扉は元々壊れて開かなくなってしまっていたそうで、近々修理してもらう予定だったそうだ。中に使いたいものが入っていたそうで、開けてもらって良かったとの事で少しホッとする。怒って燃やしたのではなく、開かなかったから燃やしたのかと納得した。
次の日はまず日記を探すところから始まったが、王都の侯爵邸と違い、本棚には並べられていなかった。代わりに、何やら勉強していたと思われるノートが出てきた。
「これは、領地経営を学んでいたのかしら。随分と丁寧にそして細かくメモが取られているわ。」
ページを進めて行くと、ドレスのデッサンのような物や、街のお店の接客用語集なる物も出てきた。
「何がしたかったんだ、いったい…。」
謎が謎を呼び、知りたかった人間関係云々の情報は特に見当たらない。
その次の日からは、ノートを持って領地経営を学んでいた執事に質問しにいってみたり、ノートに載っていた街のお店に行ってみたりしてみたが、領地経営にさらに詳しくなった事、街のお店のオススメを覚えた事以外、特に収穫はなかった。まあ、街でアンソニーへのお土産を見繕えだからいいとしよう。
「私、いったい何をしにきたんだっけ…。」
と思い始めた頃に2週間経ち、一度王都に戻るとこにした。
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