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満身創痍だったのでちょっと愚痴をこぼしたら、さらに身も心も削られました  作者: 朔島 涼


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17.満を持してアレックス登場

「おはよう、姉さん。待っていたよ。」


翌朝、ダイニングルームに向かう途中で、栗色の柔らかな髪に青い瞳の美少年が抱きついてきた。天使のように美しい我が弟、アレックスだ。

まだ9歳の彼はセグノーツ学園に入学する年齢ではないため、今は領地で暮らしている。

この国の貴族の子女は幼少期は領地で暮らし、12歳になると王都のセグノーツに入学するのが一般的である。ちなみに、ソフィア自身はレイモンドに会いたい一心で、イルバートの入学時に一緒に王都に移動していたようだ。流石、ソフィアさん。


「アレックス、久しぶりね。少し見ない間にまた大きくなったんじゃない?」


よしよしと頭を撫でていると、アレックスはひょこっと顔を上げた。その可愛い仕草に癒されていたが、よく見るとその美しい顔には疲労の色が浮かんでいて、その容姿とのギャップに驚く。


「どうしたのその顔、何かあった?」

「姉さんは本当に呑気だね。昨日は姉さんがまだ到着していないのに、怒り狂ったウィリアム殿下がやってきてめちゃくちゃ大変だったんだから。」

「え…。」

「姉さんの到着を待ってるつもりだったのに、殿下を宥めるのでクタクタになってしまって、晩餐前に寝てしまったんだよ。」

「ご、ごめんね。」

「まあ、和解出来たみたいで良かったけど。」


子どもとは思えないくたびれ具合に申し訳なくなる。


「はは、その節はすまなかったな。」


客用寝室から出てきたウィリアムが愉しげに階段を降りてきた。


「まさか、まだソフィーが到着していないとは思わず、どこかに匿っていると勘違いしてな。いやいや、申し訳なかった。燃えた扉の修復費用は、王宮に戻り次第すぐに送金する。」

「ウィリアム殿下、また燃やしたんですか…。」


ちょっとだけ文句を言ってやろうと見上げた顔が、何とも言えない気まずそうな笑顔だったので、クレームはやめておいた。まあ、三分の一くらいは私が悪い。しかし、そんな表情にも関わらず、天窓から差し込む光に照らされたウィリアムは後光が指しているようだ。暗い色の前髪からのぞく瞳がキラキラと輝く。


「…綺麗。」

「「へ?」」

「え?」


2人から視線が集まり、自分の考えが口に出ていた事に気がつく。


「あ、えっと。その、瞳がキラキラしていて綺麗だなと。ぼんやりしていたら口にしてしまっていたようです。」


あたふたしながらも正直に思った事を伝えると、ウィリアムが片手で顔を覆ってしまった。呆れられたのかと思っていたが、手の隙間からのぞく耳が真っ赤に染まっている事に気がつく。照れてるのかしら?


「ふっ、くく…やられたな。不意打ちとは。」


その言葉とは裏腹に、手を離したウィリアムの顔はいつもの完璧な王子の笑顔に戻っていた。

そしてソフィアの傍まで歩いて来ると、その手でソフィアの髪を一房掬い取り自身の口元に運ぶ。


「ソフィアもとても綺麗だ。会うたびにどんどん惹かれていく。」


そのキラキラの瞳はソフィアの顔を捉えたままで、ソフィアは真っ赤になり、堪らず両手で顔を覆う。カウンターを喰らったソフィアは大ダメージを受けた。破壊力が違いすぎる。


「うぅ…。参りました。」

「はは、そんなに喜んでもらえるとは思わなかった。うん、悪くない。」


そう言いながらソフィアの頭を撫でる。


「僕は何を見せられてるの…。」


アレックスは遠い目をしながらポツリと呟いた。



3人で朝食をとった後、ウィリアムは公務があるからと1人王都に帰っていった。ソフィアも無理矢理連れて帰られると思っていたため、少し驚いた。


「どこで何をしていてもいい。やりたい事をやりたいようにやればいい。でも必ず私の元に戻ってきて欲しい。約束してくれるか?」

「はい。」

「それから、どこに何をしに行くかもきちんと詳細を伝えてから出かけなさい。急にいなくなるとびっくりしてしまう。先日の事もあるからな。」

「…はい。」


私は小さな子供か!と思いながらも、この世界の貴族としてはそれが当たり前なのだろう。以後気をつけよう。


「3週間後、立太子の儀までには一度戻ってきてくれ。ドレスの最終チェックも残っているしな。デザイナー殿。」

「分かりました。必ず。」


ウィリアムはソフィアの返事を聞き、優しく微笑むと頬を両手で包んでおでこに口付ける。


「約束だ。」


ソフィアはおでこを抑えて真っ赤になりながら.、「お気をつけて。」と見送った。

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