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満身創痍だったのでちょっと愚痴をこぼしたら、さらに身も心も削られました  作者: 朔島 涼


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14.ドレスは選ぶものではなく自分でデザインするものです!?

ソフィアになる前の私は、歴史の浅いアパレルブランドで生産管理の仕事をしていた。


もともと学生時代にバイトしていたショップのブランドで、大学を卒業するタイミングで『新店がオープンするから、そこの店長をやって欲しい』と頼まれ、新卒でいきなり店長を務める事になった。

四苦八苦しながらも、5年ほど店長として店を稼働させていたところ、『あんたが生産管理にいるといろいろ頼みやすいから、本部に来て手伝ってくれない?』とお声がかかった。当時プレスにキャリアチェンジしていたバイト時代の先輩からだ。

そして、本部で生産管理の仕事に就き、さらに3年後に生産管理の責任者にまでのし上がってしまった。


みなさん、お気づきだろうか…?

私、頼まれたら断れないんです。


歴史が浅く規模も大きくなかったため、従業員は少なく、1人で請け負う仕事量は、控えめに言ってオーバーブラック。

プレスからはどの服が雑誌に載るから発注多めに!このアイテムがドラマで使われて問い合わせが殺到してるから追加で発注して!タレントのSNSでこのカバンがバズってるから量産準備!だとか。(だいぶアバウトなんですけど!私の匙加減で生産指示書いきます!)


ショップスタッフからは黒と今期流行りのカーキが全然足りてません!こんなに着る人選ぶ服、こんなに売れないよ、作りすぎ!このタレント、ネットニュースで人気ガタ落ちだから、量産ストップ!だとか。(最新情報ありがとう、でもタイミング悪すぎてもう止められない!って言えない…。)


デザイナーからは、このカバンの持ち手はこの素材がいい、作れる工場探して契約取ってきて!あそこのメーカーとコラボしたいから、担当者と交渉して来て!(えっ、それもはや営業担当の仕事では?)

というものまで多岐に及び、多忙に多忙を極め、アパレルブランドに勤めているにも関わらず、自分の身だしなみは最低限整える程度の生活が続いていた。


しかしながら、始まりはショップ店員。おしゃれは元々好きなのだ。それに、生産に関わっていたものとして許せない事がある。



「そ、そんなに素敵な生地なのに…このデザインでは生地が勿体無いです!」


ウィリアムが笑顔なのをいい事に、言いたいことを言い切ってしまった。


「ははは、よく言った!では、ドレスと宝飾品のデザインは全てソフィーに任せよう。」

「え?えぇ!?」


ウィリアムは子どもがイタズラに成功した時のようにお腹を抱えて笑っている。


「生地が勿体無いか、そうか。くくく…」


もはや笑い過ぎて息が苦しそう。何がそんなに面白いのか、私はじとりとウィリアムを睨め付ける。


「何がそんなに可笑しいんですか?」

「イヤイヤすまない。それにしても…くく…生地が…。」


まだ笑っている。

この国にはよほど娯楽がないのかしらとソフィアは思う。


ひとしきり笑うと、ウィリアムはソフィアの前に2枚の紙とペンを置いた。

そして王子スマイルを浮かべて一言いった。


「さあ!」

「さあ?」

「…。」

「…?」


もしや、ドレスのデザインを描けと言っているのか?


ウィリアムはキラキラ王子スマイルのまま、微動だにしない。デザイナーと思われる人はオロオロとソフィアとウィリアムの顔を交互に見ては、口を挟むべきか迷って困っている様子である。


ソフィアもかなり困っていたが、観念して渋々ペンを手に取る。デザイナーに啖呵を切って文句をつけてしまったため、落とし所は自分で見つけなければいけない。社内会議でも、人の意見に反対する時にはきちんと自分の意見を提示するようにしていたなと、ブラック時代を懐かしく思う。何でも屋状態だったけど、デザインまではやらなかったのになぁ。


しばし部屋中に並べられた生地を眺めて思考を巡らせ、覚悟を決めてペンを走らせ始めた。


「立太子の儀はわたくしたちは主役ではありませんので大人しめの方がよろしいかと。カラーを赤にするなら落ち着いた印象のマーメードラインのドレスはどうかしら。赤のレースを重ねると綺麗かもしれないですね。そのまま二の腕と首元もレースで隠れるデザインにしましょう。紺色の宝石を使いたいのであればイアリングと髪飾りでいかがでしょうか?」

「ふむふむ。」

「赤のドレスが目を引くので、髪飾りは金で花の形を模した飾りにタンザナイトを数箇所配置するくらいで…イアリングも同じデザインにすると可愛いと思います。」

「なるほど。」

「婚約者指名の儀は赤の宝石を散りばめたいのであれば、チュールドレスはいかがでしょうか?チュールの部分に宝石を縫い付ければ可愛いと思います。あっ、それから、ウエストに赤のリボンを結べは全体の印象が統一されるのではないでしょうか。…うん、いい感じ。」


ソフィアは自分が描いたデザイン画を見ながら、やり切ったと満足そうに頷く。


「ほう。」


その声にはっと顔を上げると、描いた本人よりも満足そうに頷くウィリアムの姿が目に入る。


「ではこのデザインでいこう。生地と宝石も自分で選ぶか?」

「い、いいんですか?!」


ソフィアの目が一段と輝く。見たこともないような上質な生地と宝石が色とりどり、様々な種類が並べられており、それはもう気になってソワソワしていたのだ。


そして、午前中から始まったドレス会議は、軽食をとりつつのランチミーティングに姿を変え、その後夕方まで続くこととなった。

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