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満身創痍だったのでちょっと愚痴をこぼしたら、さらに身も心も削られました  作者: 朔島 涼


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12.ソフィアの日記

4月28日晴れ

心穏やかな日が続いていたのに、ウィリアム殿下が中等部にお越しになり、あろうことがわたくしのクラスにお立ち寄りになったので、クラスは大騒ぎになりました。わたくしが寂しがっていないかと心配されていたそうです。昨年は色々ありましたので、殿下にもご心配をおかけしていたのかもしれません。


6月18日雨

雨が続いているというのに、毎日のようにウィリアム殿下がわたくしのクラスへお越しになり、ランチをご馳走してくださいます。何か困ったことはないかと言われたので、たまにお会いできるのは嬉しいですが、流石に毎日こられては困ります、と言ってしまいました。


7月19日晴れ

苦情を入れてから2日に1回になったウィリアム殿下の訪問ですが、夏休み前だからとここ数日は毎日お見えになっています。どういう理論でしょうか。難しすぎるので、夏休みは久しぶりに領地でゆっくりする事にします。


9月3日晴れ

夏休みの間会えなかったからと、ウィリアム殿下がまたも立て続けに訪問されています。殿下は本当に心配性で困ったものです。誰よりもお優しい方なのは分かっているのですが。


11月23日曇り

クラスの友人から、『ウィリアム殿下は本当にソフィア嬢の事大好きですわね。』と言われましたが、否定しておきました。殿下はわたくしが心配なだけで、好きなわけだではないと。実の兄よりも兄のようだとお伝えいたしました。友人が真っ青な顔をして教室の入り口の方を見るので、振り向くとウィリアム殿下の後ろ姿がありました。いつもより元気がなさそうに見えましたが大丈夫でしょうか。


12月2日晴れ

しばらく止まっていたウィリアム殿下の訪問が再開いたしました。やたら可愛いだの、美しいだの、わたくしのそういうところが好きだの褒め称えられます。今まで心配ばかりされていたので、今度は褒めるスタイルに変更されたのでしょうか?正直小さな子どもではないので、恥ずかしいです。


3月20日雨

レイモンド殿下のお姿をお見かけしなくなってから一年。あっという間に時間が過ぎました。良くも悪くもウィリアム殿下のお陰で、騒々しい一年となりました。レイモンド殿下の事もすっかり思い出さなくなり、日記にそのお名前を連ねる事も辛くなくなりました。ウィリアム殿下が側にいてくれたからかもしれません。少し鬱陶しい時もありますが、感謝です。


本気で嫌がっている様子ではなかったが、ウィリアムの扱いは、レイモンドに対するもと比べると天と地ほどの差がある。第三者である私が読んでも、ウィリアムがソフィアに心惹かれているのが分かるが、彼女自身は全く気がついていない。それどころか、兄のようだと言っている。鬱陶しがっているところを見ると、年頃の女の子が父親を遠ざける様子にも似ているかもしれない。


「ウィリアム殿下は虐げられて喜ぶ趣味でもあるのかしら…」

「そうだな。たとえ虐げられていたとしても、ソフィーの美しい瞳に私を映してくれるなら、嬉々として受け入れよう。」

「ひっ!」


急に後ろから声をかけられ、ソフィアは文字通り飛び上がった。恐る恐る振り返ると、部屋の扉に背を預け、腕を組みながらにこりと笑うウィリアムが立っていた。髪は紺色、瞳の色は黄金のいつものウィリアムに戻っている。


「ウィリアム殿下、いつからそこに。」

「今、来たところだ。ノックをしても返事がなかったから、勝手に入らせてもらった。熱心に本を読んでいたが、調べ物か?」

「い、いえ。日記を読み返していただけですわ。急に婚約が決まりましたので、18年間の思い出に浸っておりました。」

「そうかそうか。なるほど、日記の中のソフィアが私を虐げていたと。」

「ごめんなさい。」


ウィリアムは愉快げに笑っている。私のした事ではないけれど、一旦謝っておく。


「殿下、本日はどうしてこちらに?」

「我々の婚約者指名の儀で身につけるドレスの打ち合わせをしようと思ってな。応接室にデザイナーと宝石商に待たせている。」

「昨日の今日ですか?」

「ああ、ソフィアの気が変わらないうちにやろう。明日が婚約者指名の儀で、明後日が結婚式でもいいくらいだ。はははは。」


ウィリアムはとても嬉しそうで、誰が見ても浮き足立っているのが分かる。ソフィアはつられて笑ってしまった。


「ふふっ。それは難しいですが、お気持ちは嬉しいです。すぐに応接室に。」


ウィリアムが好きなのは自分ではなく本物のソフィアの方だ。そう思うとなんだか心苦しいが、とりあえず今は彼女の代わりをするしかない。ウィリアムが差し出した手を取りエスコートに応えた。

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