君の正解が
振り返れば確信できる。
君の正解はいつだって僕にとって不正解だった。
『生きていれば良いことあるよ』
中でもこれは最悪の不正解だ。
自殺をしようとした僕を何度も止めた君の言葉。
懇願されて僕はしぶしぶ生きていた。
もちろん、それなりに良いことはあった。
『ほらね。幸せになれた』
君との結婚は確かに幸せだったとも。
だけど、その時から僕は常に結末を恐れていた。
「お母さん。とっても幸せだったって」
君の死に目に合えなかった僕に君と瓜二つの娘が言う。
その言葉はなんの救いにもならなかった。
僕に残ったのは幸せの後に大きな不幸が待っているという事実だけだ。
「お父さん。お母さんは幸せだったって言っていたよ」
娘の言葉に僕はまともに答えた記憶はない。
そんな余裕もなかったから。
*
苦しさが消えた。
大往生だと思った。
君のいない世界で大往生だなんて。
なんという不幸だろうか。
そんな事を考えていると君が言った。
「どうだった? 人生。良いこともあったでしょ?」
僕をずっと待っていた君にいつものように答えてやる。
「いいや。一つも楽しいことなんてなかったよ。君の言う正解はいつだって不正解だった」
君は呆れた。
馬鹿は死んでもなおらない。
そう言いたげだ。
自分でもそう思う。
「もう寿命はないの?」
「多分ね」
「なら、君と一緒だ」
「そうね。ずっと」
死んでもなおらない馬鹿である僕は答えを変えることはない。
実際、生きていたって良いことなんてなかったし。
だけど。
「死んでからのほうが幸せになれそうだ」
僕の呟きに君はいつもの様子で呆れるばかりだった。




