第8話『告白ステージの決断、そして“もうひとつの選択肢”』
体育館の照明が落ち、仄暗い中にスポットライトが一筋、ステージ中央を照らした。
その光の中心に立っていたのは――俺、相田ハル。
緊張で手のひらが汗ばむ。
観客席のざわめきが、まるで波のように押し寄せては引いていく。
この舞台で、俺は“誰かを選ぶ”。
その選択によって、喜ぶ者もいれば、悲しむ者もいる。
これが、恋愛応援部の“最終演出”なのだ。
マイクを持った宇佐美リリカが、ステージ袖から登場する。
「さあ、今夜のトリを飾るのはこの男――相田ハル!」
拍手と歓声。どこか冷やかし混じりの声。
だけど、なぜか俺の心は不思議と静かだった。
「ここでハルくんに訊きます。あなたがこの文化祭で、“もっとも心を動かされた相手”は誰ですか?」
そして、ステージ袖に照明が移る。
白雪ミコ。
水瀬カナ。
天宮メイ。
それぞれが、衣装のまま、静かに立っている。
彼女たちの視線が、俺に刺さる。
誰一人として、笑ってはいなかった。
この選択は、遊びじゃない。
“告白ごっこ”なんかじゃない。
俺は一歩、前へ出る。
そして、答えた。
「……俺は、まだ……“選べない”。」
会場が静まり返る。
「だけど、それは誰がいちばん好きとか、嫌いとか、そういう話じゃないんだ」
「俺は、たぶん……今まで誰かに“選ばれる側”でいることに慣れすぎてた。告白されることも、好かれることも、全部ただの偶然だと思ってた。でも――違った」
視線を上げる。ミコの、真剣な目がそこにある。
「誰かが、想いを向けてくれるっていうのは、奇跡みたいなことなんだ。だから……」
ここで、一瞬息を吸い込む。
「今は“誰かひとり”を選ぶことはできない。でも、これだけははっきり言える――」
「君たち三人に出会えて、文化祭を過ごせて、本当によかった」
沈黙。
だが、それは否定の空気ではなかった。
リリカがステージに再び現れ、にやりと笑った。
「……そっか。じゃあ、選ばなかったってことでいいのね?」
「違う。俺は、選ばなかったんじゃない。まだ選べないって、正直に言ったんだ」
リリカは目を細めた。
「……なるほど。じゃあ、もうひとつだけ、聞くわ」
「なに?」
「ハルくん。もし、“ヒロインは三人じゃなかった”としたら――どうする?」
「……?」
「私のこと、選択肢に入ってないって、どうして思ってたの?」
その言葉に、俺は言葉を失った。
「恋愛応援部の部長として、フラグを立てまくる側だったけど……」
「私も、あなたのことがずっと、気になってた」
その瞬間、会場からはどよめきと拍手が沸き起こる。
俺の世界が、またひとつ、音を立てて崩れた。
四人目。
そう、ずっと傍観者だと思っていた宇佐美リリカが――
“演出家”ではなく、“プレイヤー”として、名乗りを上げたのだ。
「さあ、ハルくん。選択肢は増えたわよ?」
リリカはステージの中央に立ち、俺に手を差し出す。
「私を選ぶなら、受け止めてあげる。
選ばないなら、フラれた女として全力で暴れるけど?」
笑顔のままの脅迫だった。
俺の頭は真っ白だった。
この文化祭、どこまで仕組まれていたんだ?
いや、違う。これは――予想できなかった“もうひとつの選択肢”。
俺は今、誰を選ぶべきなのか。
そもそも、今、選ぶべきなのか。
俺の選択は、まだ終わらない。
夜のステージは、幕を閉じる。
だが、物語は――ここからが本番だ。
あとがき
第8話、ありがとうございました。
ついに“告白イベント”が決行され、ハルの選択が語られました。
ただし、ここで終わらないのが本作のミソ。新たなルート、“部長ルート”が発動しました。
“演出側だったはずのキャラが、恋のプレイヤーに変わる”という展開は、今後の物語全体を大きく揺らしていきます。
次回からは【新章・選ばれなかった者たちの逆襲】に突入予定です。恋の主導権をめぐって、ヒロインたちの駆け引きがより苛烈になっていきます。
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