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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

パン屋

作者: kaHo

今日も何とも言えない香り。

温かなふんわりとした香りが朝の忙しい一時に、とても落ち着かせてくれる。

今日はどれにしようか?

どれも魅力的なのだが、今日は期間限定メニューがあったのでそれにしよう。

「すみません、この期間限定のを2つ!」

と、私が頼むと、

「ありがとうございます、いつものコーヒーでお召し上がりですか?」

と、馴染みの店員が応える。

「お願いします」

私は、そう返した。

いつもの席が空いている。

私はそこの席に腰掛け、オーダーしたのを待つ。

「お待たせしました」

そう言われ、カートにはお皿に期間限定のパン、カップにはホットのブラックコーヒー、そして袋が1つ。

「ありがとうございます」

そう私が返すと、笑顔で店員は会釈して下がった。

私はまずコーヒーを一口飲む。

うん、やはりここはパン屋ではあるが飲み物も旨い。

そう思いながら、期間限定のパンを掴む。

口の中にほうばるとパンの香ばしいサクサク感とクリーミーな味がとてもマッチしている。

数本後。

食べ終わり袋を持って、

「ありがとう、美味しかったです」

そう軽く感想を言ってはカート台にカートを戻す。

「ありがとうございました」

という声が聞こえながらも、私はパン屋を後にする。

そして、バスに乗り向かう先は病院。

中に入り、面会を頼む。

「いつもの方との面接ですね、どうぞ」

と、看護師が私に面接許可のカードを渡してくれた。

軽く会釈して下さり、目的の病室に行く。

カードを通すとカチッと鳴り、私は扉を開く。

「やぁ、由美ゆみ。おはよう! 今日はいい天気だね、ほら由美の好きなパン屋さんのパンだよ。お食べ」

そう私が言うと、

「いつもありがとう、おじさん」

と、由美は言う。

そして、他愛のない話を2時間ほどする。

これは、由美が自殺未遂で記憶を失くしてから欠かさずしている。

あれから1年。

ちょうどこのときも、暖くなった春だった。

桜も蕾が出始めた日。

「桜も蕾が出始めたね」

そう私が問いかけると、

「あっ……」

由美が、声を発した。

その時、肩を震わせながら顔を俯かせる由美。

「どうしたんだ」

私はおずおずと問いかける。

由美は涙を流し始め、

「わ、私、落とされた。怖かった」、

由美が小さく震える声や内容に、私は怒りがこみ上げ、

「落とされた?! 誰にだ!」

由美の肩を鷲掴みしてしまった。

由美は怖がり始め、

「いや! やめてっ!!」

そう言うと次の言葉に絶句する。

「高橋先生! 来ないで!」

由美は大声で叫んだ。

私は信じられなかった。

高橋先生とは、由美が自殺未遂の現場を見たという元担任である。

由美は私の顔を見ると、はっと我に返る。

「……あれ? お、父さん?」

その言葉に私は、涙した。

「そうだ! お父さんだ! あのときもお前の好きなパン屋のパンを買ったんだ! 思いだしてくれたのか?」

そう、俺は由美の目線に合わせ震えながら問うた。

「……うん」

コクッと頷いた由美。

そして、再度私は由美確かめた。

すると、自殺未遂ではなく他殺未遂であり、高校生になりたての由美に担任の高橋が由美に近寄りわいせつ行為をしようとしたのだと。

私は、怒りがさらに強くなり、握りしめた拳はどう対処していいかわからず血が出ていた。

それから、担当医や看護師さんを呼び話し合いになった。

由美が思い出してよかったが、私は自分で自分を殴りたかった。

まさか、加害者の言葉を真に受け、私は罪悪感に苛まれずっと私も苦しんでいた。

父子家庭で辛くて自殺したと言われたときは、何度私が自身を責めたことだろうと。

でも、これから始める戦いに向けて私は覚悟した。

由美の辛い思いを苦しかった思いも無駄にはしない。

私は高橋に裁判で戦う。

娘を、他の子にもこれ以上苦しませないために!

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