7.決着?
「……エミリー?」
死の人形使い本体は強いわけではなく操れる死体はせいぜい三つ。
操る死体は強い順に決まる。
エミリーは魔物の生存圏で活動でした冒険者で当時ではトップクラスの戦士だった。それが災いした。
「この女は強かったぞー。逃げる子供を庇ったところなんて感動的さー」
「そうか、そうか…」
僕は怒りで震える拳を落ち着かせると操られている死者達と相対する。
今の僕の状態は思っている以上にピンチだ。
身体から魔力を全く感じない。体も感覚が無い。
「何でこんな酷い事出来るんだ?」
だが腹の底からマグマのように怒りが湧き出て全身の感覚を自覚させる。
魔物への嫌悪感がさらに深まっていくのを感じる。
「こ、こ、」
ナイフを構えると操られている死体が口を開く。
「ころ、し、て」
「……任せてくれ、せめて僕の手で終わらせる」
僕はそう言って死体達と戦う。
被弾を繰り返しながらもかなりの死体を倒す。
「必ず仇は討ちます」
僕がそう言うとエミリーは頭を押さえて苦しみだす。
「ユ、リ、ウス?」
「何で、もう死んでいるんじゃ?」
「シャー、ロット、は?」
その言葉に僕は背中が凍って息が詰まり苦しくなった胸を押さえて頭を下げる。
「ごめんなさい!シャーロットは、シャーロットは僕を守って死にました!」
「……そう」
失望されただろう。
せっかく拾って育ててくれたのにこんな役立たずで弱い僕なんて。
「あなただけでも無事でよかったわ」
「っ!」
「あの状況は普通なら助からないわ、シャーロットは私の誇りよ」
理解出来なかった。
だって生きていて欲しいのはシャーロットなは――
「生きて我が息子ユリウス」
エミリーはそう言うと身体が光る。
「母の背中」
エミリーはそう唱えると爆発する。
僕に爆発の被害を与えることはなく魔物だけを消し去った。
「僕が息子?」
「〈繋ぐ者〉の効果でステータスが向上しました」
「ユニークスキル〈愛する者の守護者〉を獲得しました」
〈愛する者の守護者〉 効果:愛する者を強く想えば想うほど強くなり圧倒的困難を打ち破ることが出来る。
「何が起こっている!何故死体が爆ぜるのだ!」
苛立った堕天使が言ったことの答えは〈愛する者の守護者〉だ。
これによって死という現実にあらがったのだ。
「ありがとう……お母さん」
始めてだ、親に捨てられた僕が始めて親の愛情を知った。
「もう大切な人はみんな死んでしまったけど今なら使える」
僕は家族から託された想いを胸に抱く。
すると〈愛する者の守護者〉が発動して力が湧いてくる。
「終わりにしようエルドルド」
「……お前は何なんだ!手に取るに値しない弱者だっただろ!」
エルドルドがそう咆哮すると僕達は同時に詠唱を始める。
「我願う!億千万の鍛錬の先にある一撃を、天地を揺るがす魔王に至り、侵す一矢を!身の丈を超えた圧倒的な力を!」
「我願う!堕天使アザゼルよ!種と交わり魔に堕ちた我に禁忌の果実を!」
「罪を還す英雄の剣!」
「天使への反逆!」
エルドルドが放った漆黒の光をユリウスは勇者の剣で真っ二つに断ち切られていく。
「うおおおお!」
「はあああああああ!」
ユリウスが二つの剣を同時に上へ振り上げると天使への反逆は霧散し罪を還す英雄の剣は解除される。
「まだ、動ける!勝つ!」
勇者ユリウスはそう言って限界な身体を宙に浮かして天に右手を掲げる。
「悪を滅する勇者の剣!」
下層で創ったものより二倍以上大きい黄金の剣を顕現し放つ。
エルドルドには既に防ぐ方法はなく直撃する。
「はぁはぁはぁはぁ」
静寂が訪れた王都に戦い抜いた勇者の息がこだまする。
「終わった、僕の勝ちだ」
ユリウスがそう確信するには十分な傷をエルドルドは受けている。
「……絶対に帰るからなディーナ、今から父ちゃんが帰るからな待ってなミク」
唯一誤算があるとするなら覚醒は勇者の専売特許ではない。ということ。




