6.勝負も佳境へ
「この剣は宿魔の剣と言ってな魔の力を持った剣で天使を殺す為の剣だ。もちろん勇者特攻でもある」
「安心してよ罪を還す英雄の剣を纏ってるから堕天使特攻だ」
僕達はそう言い合うと勢いよく剣を交える。
急激に強くなった僕だがそれ以上にエルドルドが強い。
片手で受け止められなくなった僕はもう一方の剣の刀身を伸ばして振るう。
だが羽をによって止められるともう一方の羽が顔に飛んでくる。
「っぶな」
「もう一つ手数を増やすか」
エルドルドはそう言うと魔石を自らの手に引き寄せる。
取らせないように剣を振るうがあしらわれる。
あろうことか剣を振るいながら詠唱を始める。
「慈愛満ちる水の精霊ウンディーネよ、水の民たる人魚の名において悪を押し流せ。水の壁」
エルドルドの後ろから津波のような水が幾重にも止まる気配なく流れてくる。
「めちゃくちゃするな」
僕はそう呟いて〈導きの風の守護〉の出力を上げて水を弾きながら再び切り合う。
「刹那に咲く深紅の薔薇」
水の上や壁、そしてエルドルドの周りにも薔薇が現れる。
「知らない魔法だな」
この魔法は勇者専用の魔法でランダムに薔薇を作り出す。
そして薔薇は僕が剣を振るう度に斬撃を放つ。
「っ!多いな!」
四方八方からの斬撃を避けながらエルドルドは薔薇を破壊していくが全ては避けられずに被弾する。
「悪を滅する勇者の剣!」
空中に作り出した黄金の大剣をバランスが崩れたエルドルドに叩き込む。
手ごたえもしっかりありダメージは大きいはずだ。
「魔石は込めた魔力に応じて効力を発揮する。この程度のヒビなら最上位の魔法が撃てる」
エルドルドは一人でそう呟くと魔石に魔力を込めて水中に投げ込むと下層から出る。
すると水は急激に熱せられて温度は五百度を超える。そしてここは地下である種の密封空間だ。
「これで死んでくれ勇者ユリウス」
「ドォカアアアン!」
急激に熱せられた水蒸気は行き場を無くして水蒸気爆発を引き起こした。
「一時はどうなるかと思ったけど終わったよ。これでもう人間に怯える必要はないよディーナ、ミク」
エルドルドは自分が負った傷を処置しながらそう口にする。
勇者の剣と水蒸気爆発の余波で相当なダメージを負った。
実力だけなら格下なユリウスも勇者の反則級の魔法と技があると不利だ。
「エルドルド様!大丈夫ですか!?」
驚いた様子の暗黒騎士達に大丈夫だと伝える。
そう、もう終わった――
「はぁ、はぁ、どこに行くんだエルドルド。まだ僕は死んでないぞ」
「な!あれを喰らって何故生きてる!」
「危なかった。〈導きの風の守護〉と死を拒絶する勇者の盾がなけれなこれじゃ済まなかった」
火傷が酷くボロボロだが致命傷じゃない。
「エルドルド様をお守りしろ!」
暗黒騎士がそう叫ぶとぞろぞろと魔物が寄ってくる。
「……多すぎるな」
僕は四方八方から襲い掛かる魔物を見てそう呟くと空へ大きく飛び立つ。
そして壊滅した王都を見る。
「無念だったよな」
「〈繋ぐ者〉の効果でステータスが向上しました」
「仇は必ず討つから」
僕はそう言って胸に発生した怒りのままに呪文を唱える。
「魔を滅する光の柱!」
王都を全てとはいかないが広範囲の魔法陣を展開して放つ。
光の柱は魔物だけを殺す。
「どこからこんな魔力が出てくるんだ!」
魔を滅する光の柱をほぼ全ての魔力で防ぎきったエルドルドはそう咆哮する。
職業としての勇者の特徴は感情に比例して力を発揮できることが挙げられる。
だがそれも長くは続かなかった。
ユリウスは地面に膝をついて息を切らしている。
「召喚!死の人形使い!」
エルドルドは魔を滅する光の柱の範囲外にいた上層にいた魔物の中でも一番強い死の人形使いを召喚する。
死の人形使いは生物の死体を操る魔物だ。
魔王様のような強い魔物が持ち帰った強い人間の死体を操るのがセオリー。
勇者を怒らせることになるがそのリスクより戦力を優先した。
だが一つ誤算があった。
「……エミリー?」
そこに地雷が埋まっていた。




