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モテモテ

あけましておめでとうございます


職業変更ジョブチェンジ?」


「そう。職業というか、役割を変えれるってこと」


「そんなの誰でも変えれるだろっ」


「結構手間がかかるの。スキルも職業に沿ったものが習得しやすいってことは、一度身につけたら変えるのは至難の業なんだよ」


「そうなのか?」


「そう。コウが決闘の最後にやったパンチ。アレだけ見たら、剣士じゃなくて格闘士に見えるよ!」


 【形態変化メタモルフォーゼ】を上手く使えば、パーティーの欠点を補えることができるのか。

 しかもレベルが低いD級冒険者。

 好きなように育てることができるということか。


「――いたぞ! こっちだー!」


 後ろから声が聞こえてきた。


「もう来ちゃったか」


「早く逃げなきゃな。でもどこに行くつもりなんだ?」


「実はこうなることを察して、事前にルートを考えてきてるの」


「おおっ!」


「まずはシーフや暗殺者用のスキルを獲得できるポーションが売ってる店に行く」


「シーフや暗殺者? 逃げるのに役立つスキルを手に入れるのか?」


「半分賭けだけど、面白いものが見れるかも!」


「こんな時に何言って――」


「ッ……! 伏せて!」


 十字路に差し掛かったとき、アロナが叫んだ。

 コウはアロナの掛け声に、反射的に従った。


「いっ!?」


 伏せたコウの頭上を、鎖に繋がれた鉄球が飛んでいった。


 バッと鉄球が飛んできた方向を見る。


 そこには銀髪の男が立っていた。


「あれは……モーニングスターか!」


 その男は、鎖の両端に棘のある鉄球がついている武器、モーニングスターを持っていた。


「マジか……こっちっ!」


 アロナはグッとコウを引っ張り、再び走り出した。


「おいっ! アレ殺す気だっただろ!」


 コウはあの男に聞こえる程の声で文句を言った。


「多分噂が広まるにつれて、どんどん過大評価されていったんじゃないかなっ」


「ハッ、じゃああの程度じゃ死なないと思われてるのかよ。一応怪我人だぞ?」


「とにかく! 今の人はマズイ! 急いで逃げるよ!」


 先程よりも、アロナの腕を掴む力が強くなった気がする。


「そんなマズイ状況なのか?」


「今攻撃してきた人はA級冒険者にして! この町のトップ3に入るパーティーのリーダー! 先駆者ゴート! まさかユウキ以外にも目をつけられるとは……」


 先駆者ゴート?

 この町じゃ有名なのか。

 というか、ユウキもA級冒険者なのか?


「ちょ〜っと待ったっ」


 上から誰かが降ってきて、2人の前に立ち塞がった。


「今度は誰だよっ」


 2人は足を止める。


「嘘でしょ……」


「アンタが噂の甲冑ルーキー? ホントにダリアに大怪我負わせたの~?」


「負わせてねぇよ! 話が大きくなってるぞ!」


 現れたのは高身長の女で、ブロンドのロングヘアをたくし上げた。

 露出多めの戦闘服を着た、ナイスバディのお姉さんだ。


「なんかアテナみたいだな……」


 ついボソッと口に出た。


『はぁ? 私の方が豊満だろぉが』


 お淑やかだったら良かったのに……なんて。


「アロナ。あの人は?」


「……あの人もA級冒険者で、この町のトップ3に入るパーティーの意リーダー。愚弄のパディーナ」


「愚弄……? 変な二つ名だな」


「ホントだよねー。私も困ってるんだよねぇ~」


 パディーナはニコッと笑った。


「ヒッ……」


 なんか今悪寒が走ったような……。


「ハハッ……。モテモテだねコウ」


「なんでリーダー自ら来るんだよ。おかしいだろ」


「この町のトップ3のパーティーは、最近加入する者が出ていない。つまり有能な人材が欲しいんだよ」


「まあ正解だね。でも何よりの理由は……」


「――ユウキちゃんが勧誘したことっ」


「クッ……」


「ユウキちゃん?」


 多分ユウキのことだよな?


「やっぱりそうだよね……」


 アロナは納得しているようだ。


「何? ユウキってやっぱり凄いの? ダリアのパーティーのリーダーって言ってたけど……」


「私も初めて見たから最初は分からなかったけど、ユウキはこの町でたった1人の……」


「――S級冒険者なの!」


「……マジか」


「大マジ! 滅多に町に現れないのに、こんなときに限って来るんだから……」


 うわぁ……ってことはユウキのパーティーもトップ3に入ってるんだよな。


「はいはいもうお終いっ」


 パディーナが手をパンパンと、2人の注意を向けた。


「一応聞くけど、パーティーに入る気は?」


「……今の所はない」


「そっか~。じゃあ力ずくでっ」


 パディーナは笑顔で、2本のサーベルを後ろから取り出した。


 なんか語尾にハートがついてたような……。

 多分この悪寒は、恐怖から来てるだろうな。


「――ってか! なんでみんな殺意が籠ってるんだよ!」


「そんなことないよ〜。ちょっと気絶させるだ、けっ!」


 パディーナは襲いかかってきた。


「――待て馬鹿女」


 パディーナは足を止め、コウたちの後ろを見据えた。


「誰か馬鹿女だってぇ? ゴートちゃんっ」


「ゴート!?」


 振り返るとそこには、モーニングスターを持つゴートが立っていた。


 もう追って来たのか……。

 というか、ちゃん呼びってことは、男女関係なくそう呼んでいるのか。


「俺は事実を言ったまでだ。そして、そこのコウはうちのパーティーに入れる」


 勝手に決めんなよ……。


「へぇ。そっちもその気なら、早い者勝ちでどう?」


「フンッ。部下の数は俺の方が多い。俺の方が有利だ」


「数より質よ。寄せ集めに私の部下がやられるとでも思ってんのぉ?」


「……コウ、こっちっ」


「……おう」


 コウとアロナは、2人が揉めてる間に、こっそりその場を抜け出した。


「そう言うなら、素質のあるコウを譲ってもらおうか」


「それはできない条件……っていない!」


「チッ。馬鹿のせいで見失った!」


「はぁ? 次馬鹿って言ったら八つ裂きに……って! 抜け駆けすんな!」


 コウがいなくなったことに気づいた2人は、すぐに後を追った。




◇ ◇ ◇




「店はここから近いのかっ?」


 コウは1人で走り、アロナの後を追う。


「もうすぐだよ。この先を左に曲がって、真っ直ぐ行くと、地下に繋がる道がある。その先に店があるの」


「へぇ。じゃあすぐに――」


 ドガァンッ……っと後ろから爆発音が聞こえた。


「この音は……」


「多分追ってるパーティー同士で潰し合ってるんだろうね。今のうちに店に入っちゃおう!」


 アロナは道を左に曲がった。


「そうだな!」


 コウも続いて道を左に曲がった。

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