第4話 「メタ☆バース」スタートです
リビングにあった見知らぬ箱は、一度封は開けられていたが、すぐに放置されているようだった。飽きっぽくややだらしない環奈の部屋は、似たような段ボールや箱が山積みになっていり。このリビングもそんな感じで、環奈がかなり汚していた。
「おいおい、なんだ? この箱は」
箱は昨日ととどいた荷物のようだ。そういえば昨日、環奈に宅配便が届いていた。箱にはりついている送り状を見ると、見知らぬ研究所の名前があった。月宮月子という女が送りつけら荷物のようだが、全く心当たりがない。
環奈も不審がったのか、箱を開けたらすぐ放置したようだ。
箱の中には、一枚の印刷された手紙が入っていた。新しくゲームを開発したので、サンプルとして使って欲しいという旨が書いてある。なお、ゲームデータは自動的に研究室に送られるシシテムらしかった。
明らかに怪しい。頭がおかしくなった人だろうか。牧師である恵理也には、精神異常の相談がよく持ち込まれていた。偶像崇拝をすると、精神的異常を持ちやすい。全部がそうとは言い切れないが、日本人は偶像崇拝による精神疾患を受けやすいと言われている。てんかんは確実に悪霊が悪さをしている。この為に恵理は全く専門外だったが、各種精神病や福祉支援についても詳しかったりした。
ただ、箱の中に入っていたゲーム機器は、かなりハイテクのようだった。大きなゴーグルをつけ、遊ぶゲームのようだが、この機器を見ているだけでワクワクしてしまった。入っていた手紙によると、仮想現実の世界にそのまま生きているかのように遊べるらしい。
ロマンがあるではないか。恵理也もおじさんとはいえ、元少年だ。こう言ったハイテク機器とかロボットとか嫌いではない。子供の声はロボットアニメやSF小説も好きだった。ガンダムは今でも視聴したくなる。
「へぇ。今時のゲームはこんなにハイテクなのか。面白そうだな」
恵理也は少し悪いと思いつつも、ゲーム機器であるゴーグルを装着してみた。意外と軽く、重さを感じない。というか、だんだんと何もつけていない感覚になってきた。
同時に目の前に、映像が展開されていた。まるで映画のオープニングシーンのようだった。
デカデカと「メタ☆バース」というゲームタイトルが流れる。奇妙に明るい音楽ともにゲームタイトルが終わったと思ったら、また画面が開いた。
小さなロボット(?)、猫型のAIみたいのがでてきた。
「これからゲーム中アバターを選んでもらいます」
AIみたいのは、ロボット特有の話し方でなく、かなり流暢だった。
「アバターって何?」
恵理也の発言にも、丁寧に答えてくれた。
「ゲーム内でのあなたの肉体、いわばスーツみたいなものです。大丈夫、魂はあなたのままで変わりません」
「ふーん。で、そのアバターってどんなのあるの?」
「まず、男がいいですか? 女がいいですか?」
普通だったら男というだろう。恵理也の性別は男だ。ただ、娘の事を理解したいとなると、そんな事も言っていられない気がした。ここは女を選び、女としてゲームをし、環奈の事を理解したいと思った。
「女がいいです」
「かしこまりました。では、この中から好きなアバターを選んでください」
AIみたいのは、さまざまな女性のイラスト集を見せてきた。日本人女性もあったが、中国美女やロシア美女もいる。しかし、環奈の事を理解したかった恵理也は、中世ヨーロッパ風の金髪美女を選んだ。
このイラストは、環奈が読んでいた漫画のヒロインとよく似ていていた。悪役と誤解されているので、目がちょっとつり目の美女というにも、かなり似ている気がした。
「この子にします」
「この子にすると、悪役と誤解され、追放された公爵令嬢が修道院でラブコメする乙女ゲームになります」
「おぉ! ピッタリではないか!」
AIみたいのに説明された情報は、今の恵理也の希望に沿っていた。さっきまで読んでいた漫画とほぼ同じ設定だったが、恵理也は特に気にしなかった。
「名前はいかがなさいます? こちらが決める事もできます」
「いや、名前は俺が決めます。そうだな、本名をもじってサトゥ・エリーニャという名前はどうだろう。俺は佐藤恵理也って名前なんだ。恵理也でエリーニャ!」
親父ギャグのつもりでいったが、AIらしきものは無反応だった。やっぱり親父ギャグは通じないようだった。
「では、エリーニャ様。『メタ☆バース〜ナンチャッテ修道院編〜』をどうぞ心ゆくまでお楽しみください」
「は? ナンチャッテ修道院?」
そこでプッツリと映像が途切れ、意識が飛んだと思ったら、別世界にいた。
しかも、恵理也はドレスを着た金髪美女になっていた。白髪頭も腹が出てきたメタボオッサン体型もどこかに消えていた。
「は?」
そうとしか言えなかった。