第8話 無自覚デート
_ピンポーン
…甘倉か?
このやり取りにも慣れてきた所だ。
今日は冬休み、ゆっくりしようと思ったが、そうは行かなそう。
「おはよう。何か用……え?」
俺の家を尋ねる人は甘倉ぐらいだろうな、と思いインターホンの画面を見ずに開けてしまったのだ。
そこにいたのは笑顔が漏れそうになるほど可憐な甘倉と、おっさん…いや、俺の親父だった。
『おはよう、早く起きられて偉いぞ。それで彼女を作ったなら連絡するべきだ』
いや、彼女ではないが。
と、思ったが言いたいことを甘倉が言ってくれたので俺から訂正する必要はなさそうだ。
「わ、私は藍原くんの彼女ではなくて…」
『俺も藍原くんだ』
「親父今のは気持ち悪いぞ」
『まぁまぁ、俺は久しぶりに万葉の家を訪ねようとしたら偶々この子がドアの前に居たもんだから』
そんなことよりだ。
俺は甘倉に用がある、というか甘倉の用が聞きたい。
「それで甘倉はどうした」
『俺は無視か?』
もう無視でいいや。
「す、すみません…それで、お弁当なのですが…」
「この前みたいに作りすぎたのか?」
「いえ…2人分のほうが食材を余らず使えて勿体なく無いので…」
「そうか、ありがとう。甘倉は買い物か?」
「はい。冬は寒いのでできるだけ外に出ないように多めに買っておこうと思いましてカバンをこの前買ったんです」
「似合ってる。この前のぬいぐるみもつけてくれたんだな。ありがとう」
これはお世辞ではない。
むしろ似合いすぎている。
「ありがとうございます」
『………お前らやっぱり』
「「付き合ってません」」
俺達そこまで仲良く見えるのだろうか?
俺には生憎友達など出来たことない為、友人との接し方があまりわからない。
そもそも甘倉を友人と思っていいのだろうか?
甘倉は俺を友人と思ってくれているのだろうか?
『まぁ、そんなことよりもだ。俺は部屋に入って抜き打ちチェックしてるからお前らは買い物に行ってこい。買い出しなんだろ?万葉が荷物持ってやれ。男が腐るぞ』
まぁ、親父の言う通りではあるが…
「甘倉がいいなら」
「私は構いませんが、というかむしろ助かるのですが」
『おう、行って来い行って来い』
「いや、貰った弁当食べてからな」
………
……
…
一緒に居ることがバレれば一発アウトなので、少し遠出していつもの学校に行くバスの反対方向に乗り、そこから乗り換えて行ける遠くのモールに行くことにした。
モールと言っても、学校の近くにもう少し大きなモールがあるのでクラスメイトに合うとしたらそこだろう。
だから今回はあえて遠くのモールに出かけた。
〜バスの中にて〜
「それで、お父様の前で言うのは少しあれなので言い忘れていたのですが、これからもお弁当作っていいですか?」
「まぁ、甘倉が楽ならそれでいいが…あんまり人に尽くすと好意持ってると勘違いするぞ」
「藍原は勘違いしないから尽くしてるんですよ。というか尽くしているわけではなくただ余ったご飯を押し付けてるだけなので」
「またこの下りか。ここは素直に受け取っておくが、あんまり自分を蔑むなよ、甘倉の弁当は相当価値あるからな」
これもお世辞ではない。
本当のことだ。
毎日あんな美味しい弁当食べていたら朝ごはんも甘倉に作ってもらいたくなってしまう。
「あ、ありがとうございます」
「ただ流石に申し訳ないから食費は俺の分、半分払わせてくれ」
「そうですね。万葉くんがいいならそれで構いません」
本人は気づいていないのか、さっきから万葉、と名前呼びだ。
むず痒くて仕方がない。
「さっきから名前呼びだぞ。親父いないしいいのでは?」
「そ、そうでした…すみません」
「別に謝ることないぞ」
ただ俺が恥ずかしいだけだ。




