第5話 お仕事モードと傘
あれから1週間たち、今日は週1回の生徒会会議の日だ。
お仕事モードの甘倉と言ったところだ。
いつも通りのメンバー。
甘倉と俺。
3年の九条先輩は書記で、2年の山野先輩は会計。
九条先輩と山野先輩は付き合っていて、美男美女のベストカップルの権化の様な人たちだ。
九条先輩は黒髪でイケメン。間違いなくこと学校で一番女子人気が高いだろう。
そして山野先輩は甘倉に負けないほどの容姿で綺麗な茶髪のポニーテールをしている。
山野先輩も甘倉ほどではないが男子人気が高い。
今の甘倉は優等生、という言葉が最適かどうかわからない程に模範的で、1つ1つの言葉に重みがある。
「以上、期末テスト前最後の会議でした」
今回は主に期末テストや冬休みについての張り紙を美術部に担当してもらう件の最終工程について議論した。
会議が終われば後は自習して帰るだけだ。
俺はこのまま生徒会室で自習して行くつもりだ。
甘倉も帰るつもりはなさそうで、自習を始めた。
…よほど成績を気にしているのだろう。空いている時間はいつも自習をしているのを目にする。
………
……
…
少し時間が経ち、時計は6時を指していた。
日は落ち、薄暗い蛍光灯の中で2人きり。
「甘倉はいつ帰るんだ?」
「その…実は傘を忘れてしまって…」
優秀な甘倉も忘れ物をするときもあるんだな、と少し親近感が湧いた。
完璧すぎても人間味がない、という言葉を実感した。
「この時間なら人も少ないだろう。勉強終わりにするならついてくるといい」
自分で話しかけておいて少し恥ずかしくなり、後半キザな口調になってしまった。
とにかく俺が言いたかったのは傘を貸してあげるということだ。
「そうですね…そろそろ終わりにしましょう。何か策があるみたいですね?」
甘倉と帰る準備をし、昇降口へ向かった。
「はい、別に返さなくていいから」
自分の傘を甘倉に渡し、俺はさっさと校門へ向かった。
「へ?」
甘倉は、何か俺が賢い策を講じていると思ったのか、単純明快な俺の行動にキョトンとしている。
そんな甘倉を置いて俺は歩いた。
雪が朝から降り積もり、歩きにくい。
雪が俺の頭に積もっているのが分かるくらいに大雪だ。
こけないように早歩きでバス停へと向かった。
バス停には屋根があるからだ。
「藍原くん。まってくださいよ」
その呼び方ということは他に誰もいないことを確認したのだろう。
このバスを使う高校生は数人である。
ましてやこの時間帯。このバス停には俺と甘倉の2人きりだった。
「なんだ?」
「それだと藍原くんが濡れてしまうじゃないですか」
「そうだが…?」
「はぁ…頭いいんだか悪いんだか分かりませんね」
「これでも1位なんだがな…」
「それは嫌というほど痛感していますよ」
そんな話をしているうちにバスが到着した。
一番うしろの左端。
俺の定位置だ。
だが今日はいつもと違う。
「隣失礼します」
バスは貸切状態。
今日は2人だけが多いな、なんて口にできるはずもなく、ただ気まずい時間だけが流れていった。
………
……
…
降りるバス停までは10分程でつく。
バスを降りた瞬間、傘が俺の上で開いた。
「何か話しながら帰りませんか?」
この差し方は……
「これって…相合い傘……」
「た、確かに………でも…今日ぐらいはいいですよね?」
別に俺はいいのだが…
話は初詣の話になった。
この前の続き。
駅前集合で、実家まで一緒に行くことになった。
少し恋人を連れて行くみたいで恥ずかしいが、あくまでも友人だ。
恋人でもない女友達をわざわざ初詣に連れて行くのは不自然だが、元はと言えば緊張して間違って口にした俺のせいだ。
甘倉のためと考えればいい。
甘倉が息抜きできる場所に行くと考えればいい。




