表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS転生した私が所属するVtuber事務所のライバーを全員堕としにいく話  作者: 恋狸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/57

必然を手繰り寄せた。それゆえの偶然

久しぶりに更新されてるじゃん! と思って来てくださった方は、ワンチャン前話を見過ごしている可能性があるのでご注意ください



 ──プロミネンスさんが学力王決定戦の出演を辞退した。


 マネージャーからその旨の話を受けた時、私はそこまで驚くことは無かった。別に最初からそうなると予想していたわけじゃないよ。

 プロミネンスさんが勇気を持って……もしかしたら変わりたいなんて想いを抱いて、出演を決意したことに変わりはないはずだ。


「……ドツボにハマってるんだろうなぁ」

 

 底抜けの自己肯定感の無さ。

 きっと自分の行動を振り返る度に、自分のことが信じられなくなっていくんだろうと思う。

 思えば社畜時代だった前世の私もそんな感じだった気がする。


 上司に詰められ──ってまあ私の話はどうでも良いか。


 ただ私とプロミネンスさんの違いは、自信を裏付けるほどの心の支えがあったかどうかだ。

 どれだけ嫌なことがあっても、私は肥溜めを推し続ける限りは生きていこう──頑張り続けようとハッキリ思えた。


 肯定感というのは、自己完結で得られるものではない。

 ましてや、自分を推してくれているリスナーすらも見れないほどに自己肯定感を失っているプロミネンスさんなら、尚更自分の感情の変化や決意だけでそれを補うには無理がある。


 他人の言葉や感情から肯定感を得ることは、決して悪いことじゃないと私は思うんだ。

 私たちは何かを支柱にして生きている。

 寄り添って……依存することは良くないけれど、いつでもその支柱からエネルギーを補給できるような状態を作り上げることは大事だ。


「プランB。正直言って一番可能性が無い手段なんだけどね……」


 私は苦笑しながらスマホをタップする。

 1ミリでも可能性があるのならば、今はそれに縋りつきたい状況だ。

 正道のプランAの次点にした理由は、確かめるのが容易だからというのはある。


「今まで色んな偶然に助けられて、必然を手繰り寄せてきた。神頼みなんて柄じゃないけど……今だけは祈ろう」


 私は心の中で願いを伝え──《《通話ボタン》》をタップした。


 ぷるるる、ぷるるる、と2回コールが鳴った後に電話に出たのは──


「あれ? 夢見さん? どうしたの……?」

「急にごめんね()()()()()


 ──コンタクト探しを手伝った時に偶然再会した小学校時代の同級生……莉子ちゃんだった。

 

「う、うん、それは良いけど」

「莉子ちゃん前に()()()()()()()()()()の話をしてくれたじゃん。そのお姉さんについて詳しく話を聞きたくてさ」


 前に莉子ちゃんは喫茶店で姉についての愚痴を私に沢山吐いていた。

 

『あたしの姉がね、それはもう引きこもりで! 四六時中部屋の中にこもってるし、なんかぶつぶつぶつぶつ聞こえてくるし。たまに発狂してるし……』


 そんな語り口から始まった愚痴の内容で、私は幾つか引っ掛かったエピソードがあった。

 私は当時のことを思い出す。


☆☆☆


『二年前くらいかな。ずっと引きこもってたお姉ちゃんが急に外に出てさ。ついに引きこもりも卒業かー、って思ったらまた部屋に逆戻りしたの。しかも、その出来事からちょっとして急に独り言で叫んだりし始めて困ったもんでさぁ』


『まあ、それを機にたまに外に出るようになったから成長と言えば成長なんだけどね。でも、昔からコンプレックスの塊みたいな人だったから人前に顔を晒すことはないと思うんだけどなー』


『ただ叫ぶだけだったらまだ良いんだけど、やけに甲高かったり変な叫び方するから、私もビクッてしちゃうし』


☆☆☆


 これが莉子ちゃんの愚痴から得られた情報だった。


 そう、私は莉子ちゃんのお姉さんがプロミネンスさんなのではないか、と少しだけ疑っている。

 ……まあ、そんな偶然なんて無いに等しいからアテにしてるわけじゃないケド。


 ただプランに入れる程度には、莉子ちゃんの情報に聞き覚えがありすぎた。


・プロミネンスさんのデビューが二年前のこと。

・配信スタイルが絶叫系であること。

・変な叫び方や笑い方が売りなこと。


 今のところ完全一致しているんだよね。

 だからと言って決めつけるには根拠も証拠も無いから、結局は神頼みみたいなことにはなってる。

 

「あたしの姉のこと? ……えぇと、なんか知らないけど部屋の中で泣いてるから触れづらいんだけど……」

「……そっか。ちょっと教えて欲しいんだけどさ、今から送るボイスメモに聞き覚えあったりしないかな?」


 私は一番プロミネンスさんらしい部分を切り取って、ボイスメモに録音したものを莉子ちゃんに送った。

 ……家族にも隠してる可能性が高いからね。不用意に身バレさせてしまうのはリテラシー的にアウトだろう。たとえ妹だとしても。


「ボイスメモ……? ──これお姉ちゃんの声じゃん!? なんで夢見さんが……!?」


 送った数秒後、驚愕をあらわにした声音で莉子ちゃんがそう言った。


 ……まさかプランBが刺さるとはねぇ。

 ただ私にとっては紛れもない幸運だ。

 頭の中で色々な考えや感情を浮かばせながらも、一先ず私は莉子ちゃんの問いに答えた。


「それはちょっと内緒。ただ少ししたら莉子ちゃんに協力してほしいことがあるんだ」

「……とやかくは聞かないけど。前に夢見さんと話して楽しかったし、今度どこか遊びに行ってくれるならいいよ」

「もちろん。それは条件として出されなくても行くよ? ……そうだね、次に会う時に何かご馳走しよっか」

「えぇっ、それは悪いよ」


 協力があっても無くても莉子ちゃんが友達なことに変わりはない。友達とわざわざ条件つけて会うっていうのもおかしな話だしね。

 私は朗らかに笑いながらも、譲らないよ! と語気を強くして言うと、莉子ちゃんは渋々「じゃあ、分かった」と言いながらも、その声音はどこか嬉しそうだ。


 ふふ、プロミネンスさんのことを解決する傍らで女の子と遊ぶ約束をしてしまったか……。


 とそんな冗談を心の中で発しながら──


 ──私はプロミネンスさんと直接会う決意をした。




 逃げても良いんだよ。

 投げ出しても良いんだよ。


 でも、不幸にしかならない逃げは許容できない。

 底なし沼に沈んでいくかつての"推し"を見過ごすほど、私は生易しくないんだ。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
やはりそうだったか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ