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思わぬ形での初対面

「…………」

「…………」

 

 物々しい空気の中で、私はとある人と向かい合っていた。

 満ちる無言空間。

 コミュ力を鍛えた私といえど、どうしたら良いのか悩み続けるしかない状況下。


 ……いや、うーん……こればかりは私も予想外というか普通は想像しないというか……。



 ──まさかプロミネンスさんらしき人が仮面を着けて待ってるとは思わないじゃん。


☆☆☆


「階段上がって右手……この部屋かな?」


 そこは少し奥まった存在感のない部屋だった。

 第三会議室と書かれていて、恐らくはVTuber事務所として機能する以前の名残りなんじゃないかなと思う。

 社長のポケットマネーで事務所を増設したとかいう噂もあるから分かんないケド。


 ……私は深呼吸をする。

 いざ対面するとなると、こう……心にグッとくるものがあるけれど、ミーハー的ファンとしての気持ちではなく、同業者の先輩として接しなければならないと私は思う。

 これから一緒に仕事するんだから、こういった切り替えは絶対に必要になってくる。


「よしっ」


 パンッと頬を叩いて気合を入れ、私は扉を開いて──


「はじめまして! 二期生の花依琥珀と申します! プロミネンスさんは………………はえ?」


 私が意気揚々と挨拶しながら扉を開くと、中にいたのは《《ス◯リームの仮面を被った》》制服姿の女性……女性? だった。

 

 さしもの私も困惑。しかも仮面の女性は一切話さない上にゴゴゴ……というオノマトペが聴こえそうなほどに威圧感を発していた。



☆☆☆


 そして今に至る。

 いや、まあ配信ではテンション高めで【狂気】なんて言われてるし、それこそ私の同期ことツナちゃんやクラちゃんだって変わってるっちゃ変わってる。

 大なり小なり、他人に楽しさを届ける人は何かしらの特徴があるものだ。

 

 とはいえ毛色が違うなぁ……という感想。

 ……ま、プロミネンスさんがどんな人でも私は別に構わない。あくまで気圧されただけで、それで態度を変えるわけがないのだ。


 私はふぅ、と小さく息を吐くと、目の前の女性に意を決して話しかけた。


「えーと、プロミネンスさんですか?」

「……」


 こくん、と小さな首肯。

 どうやら事務所に侵入した変質者という線は消えたようだ。良かった……という冗談はさておき、目の前の仮面の女性がプロミネンスさんだと確認できた私は、ホッとして笑みを見せる。


「改めましてはじめまして。二期生の花依琥珀です。今日はプロミネンスさんにお会いできて嬉しいですっ」

「……っす」


 おっ、今度は声が聞こえた。

 さすが0dB、8000Hzを聞き取れる私の耳。


 ……うーん、どうやら話したくない、ってわけでは無さそう。

 だとすると緊張? もしくは姿を見せることのできない事情がある? 推測に過ぎないけれど、あんまり気にしないほうがよさそうだね。


 一先ず一方通行でも会話はできそうだし、それならそれでできる話し方がある。


 なにせ別に仕事の話をしないといけないわけではない。

 マネージャーも、恐らくは親交を深める意味合いでこういった場をセットしてくれたのだろう。

 問題はプロミネンスさん側から二人きりで話がしたいと言ったこと。

 何か内密に話したいことがあるのか、そもそも緊張しいだから人が少ないほうがいいのか……。


「プロミネンスさんは私のこと知ってました?」

「……」

  

 こくりと肯定の意思。


「面白いと思ってくれました?」

「……」


 再び肯定の意思。


「ちなみにプロミネンスさんも堕としたいんですけど、どうすれば良いと思いますかね」

「…………!?」


 びくりと体が動くプロミネンスさん。

 首肯以外の初めての反応である。


「とりあえずジャブ程度に、プロミネンスの好きなところを百個ほど羅列していきたいと思います」

「っ!?!?!? ……それはやめて……」


 初めて声が聞こえた。

 かなりか細いけれど、確かにプロミネンスさんの生の声。普通に可愛いと思います。まんま配信の声を小さくしたような感じ。

 

 さて、ここからどうしようと頭を回していると、今度はプロミネンスさん側からアクションがあった。


「その……初対面は緊張するし、一回打ち合わせバックレてるから怒ってたらどうしようとか思って言葉が出なくて……」

「何も怒ってないので大丈夫ですよ。いや、本当に。それに、コミュニケーションが苦手な人はツナちゃんとかいますしね」

「……あれはファッションコミュ障だと思う」

「私もわりとそう思います」


 ツナちゃんは普通に人と話せるからね。

 特段コミュニケーションに何か必要とかも無いし……というかツナちゃんの否定だけやけに声が大きかった件について。

 やはり初対面の人とツナ虐することによって仲を深められるってことかな。さすがツナちゃん。


「ちなみに何で仮面着けてるか聞いてもいいですか?」


 もしかしたらプロミネンスさんの根幹の部分かもしれない、と私は結構緊張して彼女に問いかけた。

 すると、プロミネンスは「へ?」と呆けた声をあげると、何の気なしに答えた。


「え……これ可愛いので……」

「──────そうですね!」


 とりあえず私は脳死で同意することにした。







本日12/27日は本作の2巻の発売日でございます!

すでに店頭に並んでいるようですので、皆さんぜひお買い求めをしていただければ嬉しいです……!


特典につきまして、今回はゲーマーズ様と電子特典のSSがございます!


ゲーマーズ様→『深夜の逆凸!』……深夜配信をしていたツナマヨが唐突に花依に逆凸することを思いつき……?


電子特典→『大食いチャレンジ健全版with全智』……大食いチャレンジをしようとする全智だったが、普通の大食いとは一味どころか全然違って……?


皆様のお陰で2巻を刊行することができましたが、作者としてもまだ続けていきたいと思いますので、ぜひ購入して応援していただければ大変嬉しいです……!


またXでの反応やAmazonのレビューなどすべて拝読させていただいています……!


皆様よろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます
書籍とキャラ違いすぎませんかプロちゃん⁉︎
祝⭐︎2巻発売!! 今日書店行って探してきます!
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