屋上
翌日、文化祭本番当日。
私はまた昨日のようにオオカミを着て教室で4人で喋っていた。
「楽しみだな」
「うんうん!私達は歩いていろんな所に行けるもんね」
「うれしいよねぇ」
「先生があんまり集団で行動しないようにって言ってたからどうする?」
「2、2に別れる?」
「そうだな、そうした方がよさそうだな…せっかくだから莉奈、俺と一緒に回るか?」
「っ‼︎…別に…いいけど」
お!莉奈もしかして奏太のことが好きなのかな‼︎
わぁ、莉奈のそんなところ初めて見たぁ
あの!『私部活一筋だから』が変わる予感‼︎
「わぁ」
「じゃあ俺と葉月だな」
矢神はそう言いながら私の肩に手を回してきた。
「そうだね」
ボワッ
なんで矢神ってこんな事普通にできちゃうんだ!
もぉ、こっちは今にも溶けて消えちゃいそうだってのに。
そして、文化祭は始まった。
お客さんもどんどん入ってきた。
「よし、じゃあ莉菜行くか!」
「うん!」
「じゃあ、花火が上がる前に今度は屋上で4人集まろうな」
「ああ」
「屋上って立ち入り禁止なんじゃなかったっけ?」
「そうだよ」
「じゃあ何で屋上で?」
「奏太はたまに屋上で寝てる事があるんだよ」
「えっ初めて知った」
「それに、花火を屋上で見れたら綺麗だなんて思ったんじゃない?」
「あぁ確かに!いいね屋上」
「でしょ、じゃあとにかく俺らも行くか。」
「うん!」
「わっお化け屋敷がある、あっカフェだぁすごい‼︎」
「なんか俺小学生と来てるみたい」
「むっ失礼な、私は矢神と同い年です!」
「ふふっそうだったね」
「おいっ」
矢神といろんなところを回ってるうちに私はすごくはしゃいでしまっていた。
でも、すごく楽しかった。
矢神とお化け屋敷に行ったりして矢神がお化けとかが苦手なのがわかったり、私が人とぶつかりそうになった時矢神の方に私を引き寄せてくれる事もあってすごくドキドキした。
あと、自分の仕事も忘れずにちゃんとスタンプを押したりもした。
そして、お昼ご飯は屋台で買った。
私は焼きそばとフランクフルトとベビーカステラを買った。
矢神は焼きそばと唐揚げを買った。
そして、2人で空いているベンチに座ってお昼ご飯を食べ始めた。
「いただきまーす!うまぁこのベビーカステラすごくおいしい」
「ベビーカステラから食うのかよ」
「うん!だって美味しそうだったから」
ぼそっ「かわいいな」
「ん?なんか言った」
「いや、何も」
「うまぁ」
「俺にも一個ちょーだい」
「あ、いいよ!はい」
パクッ
…あ‼︎
わぁー、これっていわゆる『あーん』ってやつでは⁉︎
やらかしてしまったぁ
「ん、うまい」
「そっか、よかったぁ」
うぅ矢神の『うまい』は破壊力がある。
ん!美味しそうな匂い…
「あっ唐揚げだぁ美味しそぉ」
「食べる?」
「!いいの、やったー」
「はい」
ムグ!
モグモグモグモグ
「うまぁ」
「今にも溶けそうな顔してる」
「…!してないもん!…っていうかいつの間にからあげを‼︎」
「葉月がすごく欲しそうだったから食べさせてあげた」
「…‼︎‼︎」
そうだ!これも『あーん』では?
わあーやばい、本当に溶けて消えちゃうよぉ
そんなこんなでどうにか乗り越えてお昼ご飯を食べ終えた。
午後もいろんな所を回った。
そろそろ花火の時間が近いてきたので私達は屋上に向かった。
そして、私達は待っていた。
莉奈と奏太が来るまで2人で。
「私、屋上初めて来た。一回は行ってみたかったんだよね!」
「そっか、よかったなこれて」
「うん!」
「遥奇」
「なに」
「ありがと」
私は満面の笑みで言った。
「なんだ急に」
「なんか今日のお礼を言いたくなっちゃって」
「結、どういたしまして」
矢神は柔らかい笑みでそう答えた。
わぁ今下の名前で呼んだ。
私矢神のこと好きだな…
⁇私今何て思った⁉︎
矢神のことが好き…
ボワッ
そうか…私はもう、結構前から矢神のことが好きだったのかな。
矢神が隣にいるだけでドキドキしていたこと。
笑顔になるとすごく嬉しかったこと。
私の側にいてくれて嬉しかったこと。
あぁー、矢神のことが好きなことが分かったらますます意識しちゃうよぉ。
「結ここに座って待ってよ」
「あ、うん!」
私はドキドキしながらも、矢神の隣に座った。
すると、突然遥奇が私を優しく抱きしめてきた。
「っえ…」
「今日俺すごく楽しかった、結と文化祭一緒に回れてよかった」
「わ、私も遥奇と一緒に回れてよかった」
そして遥奇はそっと私を離した。
私はすごく真っ赤になっていたけど遥奇の顔もすごく赤かった。
ガチャ
「あっ莉奈、奏太!」
私は恥ずかしさを紛らわせるような感じで2人の名前を呼んだ。
「2人とももう来てたんだ、早かったな」
「まあな」
そして、遥奇、私、莉奈、奏太の順に並んで座った。