8.本日の反省会の必要性
「では、反論がある人はいますか?」
「「「……」」」
偽者くん達全員が修行をサボっていたため反省会を開くことにした。
「やる気が出ないのか?俺はみんなやってくれると思ってたんだがな」
「…でもさ本体、訓練ばかりじゃ飽きるだろ?」
「そうだそうだ人権はどこいった」
「修行ばかりで休みが無いなんて横暴だ!」
さすが俺の分身だ、あまり反省している様子がない。しかし、俺もそんなガチで怒るつもりでもなかった。だって、俺ダウンして休んでたし。だけどな…
「休むのは良いよ。でも、まさか全員サボってるとは思ってなかったなぁ」
俺の分身体である偽者くん達は俺以上のことは出来ない。ということは俺以上の気合いも出ないのだろうか。
なんで俺が偽者くん達に指導しなきゃいけないんだ。まるで社長にでもなって人を雇ってるみたいだ。なんだか俺が思ってた分身と違う…。
俺の言うことを何でも聞いてくれる分身が欲しい。走れと行ったら延々と走って、息を止めろと行ったら呼吸をしないぐらい?
でも、いや…そこまで行くと逆に…怖いかな。
「よしわかったこうしよう。みんなで同じ訓練して一番長く続けられた人に丸一日休暇を与えることにする」
「いいねー」
「わかったぜ。じゃあ本体も参加な」
「えっ!」
「そうだそうしよう」
「よっしゃ、頑張るぞー!」
「ちょっと…」
「公平でいいね!」
「負けないぜ!」
えっ、あ…
適当に出した提案で偽者くん達はみんなやる気になってくれたのはよかった。だけど、俺は参加するつもりは無いぞ!って思ったがそういう雰囲気ではなくなった。みんな本体想いじゃないなぁー…
俺病み上がりなんだけど… 多数決って時には残酷だよね…
仕方ない、みんな乗り気になってるしやるしか無いか!でも、訓練内容の耐久って思いつくのは何だろう。腕立て伏せ?シャトルラン?鬼ごっこ?何がいいだろう。そうだな…
「やるのは、わかりやすくシンプルなほうがいいよな」
「種目はどうするんだ?」
「わかった、水泳にしよう!」
だって、暑いしさ?
「いいぜ、水泳得意だし」
「俺も得意だぜ」
「そりゃ分身だからな」
トレジャーハンターでは水に入るようなダンジョンに行くこともあるらしいので人並み以上に水泳は練習していた。
「今日は疲れたし、水泳のルール決めたら俺は寝ようかな」
「あー、本体はまだ頭痛か。まあとりあえずルール決めようぜ」
「今回はやる気がないことが問題だったんだし、気合いが必要な感じにしようぜ」
「気合いと言えば耐久だよな」
なんだかんだと意見が出た。そうして、俺が『早く寝たいなぁ』なんて考えている間にルールは決まった。
ルールは簡単、そう、誰が最後まで泳いでいられるか『水泳バトルロワイアル』だ!
次の日。
「では、始めようか」
近場にある流れがそこまで早くない川まで来た。普段はここで水泳などの訓練をしている。
「何往復出来るか勝負だからな!」
川幅は二十メートルぐらいだろうか。
「よっしゃ、準備いいぜ!」
「いくぞー!」
偽者くん全員と俺を合わせ五人が川に入り準備が整う。頭痛はないが病み上がりだし泳ぎたくないなぁ。
しかたなく、号令をかける。
「位置についてー、よーい…ドン!」
バシャバシャバシャバシャ
偽者くん達は横並びに泳ぎ出した、全員クロールだ。皆、対岸に向かい必死に泳ぎ始めた。みんな身体能力は一緒なので泳ぎの速度には差はない。
そして、泳ぎ出した偽者くん達をよそに、俺は偽者くん達が泳ぎ出した瞬間に川から上がっていたのだった。
偽者くん達の水泳レースは一往復、二往復と進んで行き、川の流れもあるためか七往復辺りで一号、二号がギブアップする。そして、三号、四号の接戦も直ぐに四号がギブアップし偽者くん三号が最後まで残った。
「はあっはあ、よっしゃーっ!」
「負けたかぁー」
「あー、気合いが足りなかったか」
「あれ…本体なんで泳いでないんだ」
勝敗が決まり、俺が泳いでないことに気付かれた瞬間、俺は偽者くん達を全て吸収した。
シュー
「ふぅ…」
泳いでないのがバレ言い訳も思い付かず、つい偽者くん達を吸収してしまった。
とりあえず、偽者くんを一体だけ再召喚する。
「本体、なんだ全員吸収したのかよ」
「ごめんな、怒ってる?」
「いや、さっきの偽者くん達とは個体が違うし別に何とも思わないけどさ」
うん、吸収してリセットができるんだったよな。初めからこうすればよかった、とんだ茶番だったぜ。
というか、出す時に偽者くん達の意欲とか自発性を下げれば動く人形みたいで扱い易いのではなかろうか。
無駄な時間を過ごした気がしないでもないが、今日は朝から暑かったし水浴びできてよかったと思う事にしよう。