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しかし、俺の分身が裏切らないとは限らない  作者: もし自分が分身できたら人生が楽になるんじゃないかと思ったが、分身が今の自分のコピーなら役に立つかは微妙かもしれない/あるは
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13.そして、青のダンジョンへ

 到着したのは洞窟型ダンジョンである「青のダンジョン」

 見た目はまさに洞窟って感じである。


 青のダンジョンはスライムが出ることで有名だ。むしろ、青くて最弱とされる普通のスライムしか出ない。そして、初心者に優しいダンジョンであるが青のダンジョンはとても人気が無い。


 その理由は明確である。


 スライムしかいないからだ。


 何故スライムしかいないダンジョンは人気が無いかというと、スライムの体液も核も取れる物は有効な近い道がないからである。


 いちようスライムの核は、スライムが邪魔になる程大量発生した場合のみ、討伐報酬を貰う際の討伐数を確認する部位となっている。だが、特に最近この辺りでスライムが大量発生したということは聞いたこともない。


 しかも、稀にダンジョンで出ると言われるアーティファクトも魔力が少ない場所では全然生成されない。

 そして、スライムしか出現しないこのダンジョンの魔力は低かった。


 アーティファクトの良し悪しはダンジョンの魔力量に依存する。が、ここまで魔力量が低いダンジョンは良い物が出ないというよりもアーティファクト自体がほぼ出ない。


 要は「青のダンジョン」はお金にならないのだ。


 そんなダンジョンに俺は来た。ここに来るのは初めてだったこともあり、少しは興味がある。

 そのため、全くやる気が出ないという訳ではないが、噂を聞く限りではトレジャーハントにはならないだろう。


 今回は訓練を目的に来ているが、そうでなければ自分でこのダンジョンを選んでは来ないだろう。


 そう!今回は訓練なのだ。しかし、突拍子も無い訓練なのである、つまようじでスライムを倒すという偉業いや奇行である。

 もし、そんなことできたら自慢できそうだけど、なんでそんなことしようと思ったのかと馬鹿にもされそうだ。


 とりあえず、今日は百匹のスライムを倒すまで帰れない予定ではある、頑張ろう。


「よし、やるかな!」


シュー


 偽者くんを四人だした。


「つまようじでスライム討伐だ、よろしく」


 心の中では『俺、何言ってんだろうな』とは思いながらも偽者くんたちに頼んだ。


「あー、あの言ってたやつマジでやるのか」

「しゃーない、やってみるか」

「ほんとにできるのかな」


 分身によってつまようじも複製されていた。このまますぐにでも始められそうだ。


「じゃあ、二十匹倒したらここに集合な!」


「よし、行ってくるか」

「俺は右のほうにいくわ」

「じゃ俺は左」


 偽者くんたちはそれぞれスライムを倒しに向かった。


「でも、無理だよな…」


 そう呟きながら俺もスライムを探し始める。


 スライムはすぐに見つかった。ウネウネしている、その動きはゆっくりであまり害は無さそうだ。


 その体は青く半透明で中心に青い球体の核が見える。


「スライムってこんな感じなんだなぁ」


 あまりモンスターって感じがしない。


「さっそく試すか」


 つまようじを構えてスライムの核に刺してみる。


にゅっ、ツンッ


 核の中心につまようじが当たるもスライムの核は少し硬いようで刺さらない。


「勢いが必要だな」


ぐにゅっ


「刺さらん!」


 スライムの核は球体なので勢いをつけるとずれてしまう。


「うりゃ、そい、てやっ!」


 何度やっても刺さらない。しばらく試行錯誤していると少し離れた場所で


「できた!」


 偽者くん二号ができたようだ。


 見るとスライムの核につまようじが刺さりスライムは動かなくなっていた。


「マジか!」

「すげー!」


「お前どうやったんだ?」


「んと、生卵につまようじを突き刺す感じだね、やったことは無いけど」


「なるほど、わからん」


 偽者くん二号の例えによる説明ではできるイメージが湧かない。


「こうだよ、こうっ!」


 偽者くん二号がもう一匹のスライムの核に目掛けてつまようじを突き出すと刺さった。謎に二号だけがつまようじの扱いが上手い。


「口で言ってもわかんないなら吸収して理解した方が早いんじゃないか?」


「なるほど、それもそうだな」


 そう言われて偽者くん二号を吸収した。


 感覚が一体となる感じがした。


 なるほど…手だけじゃなくて全身を使って体幹を捻り、指先まで意識しずれないよう核の中心に力を一点集中すればいいのか。


「とうっ!…おお!できた」


 スライムの核につまようじが突き刺さり、ぐにゃりとスライムが動かなくなる。


「なんだ、コツさえ掴めば簡単じゃん」


 コツを理解させるため他の偽者くんも全員吸収して再度分身し出し直した。


 偽物くん三号がスライムに向かって勢いよくつまようじを突く。


シュッ、ポシュン


「おーできるできる」

「俺もいけたぜ」


 それからはすぐだった。偽者くんたちも百発百中とはいかないまでも三回に一回ぐらいで成功したため、一時間掛からず核が百個集まったのだった。集まった核をマジックバッグに入れる。


「倒すよりスライムを探す方が大変だったな…さて、帰るか」


 目標を達成したため偽者くんたちを吸収して街へ戻ることにした。


 屋敷の庭でまた日向ぼっこをしていたハイディさんに声をかける。


「ハイディさん帰りました」


 ハイディさんはこちらを見ると若干不機嫌そうに答えた。


「む、わしのことは師匠と呼ぶのじゃ。しかし、なんじゃもう諦めたのか若いもんは根気が無いのう」


 ハイディ師匠は俺が諦めて戻ってきたと思っているようだった。


「いえ、師匠に言われた通りつまようじでスライムを百匹倒してきました。これが核百個です」


 マジックバッグから山盛りのスライムの核を出し師匠に見せる。


「むむ、そうだったか。それにしても早かったのう」


 師匠はほんの少しだけ驚いた様子だった。


「実は言ってなかったんですが、分身出せるんです」


シュー


 偽者くんを一人出して師匠に見せる。


「むむむ…分身とな、そんなことができる者は初めて見たぞい。それにしても一時間足らずで終わらせるとは才能はあるかもしれんのう…むぅ…」


 師匠は先程よりも驚き、目を細め白い髭を撫でながら考え込んでいる。


 すんなり課題をクリアしたことに驚かれるってことはやはり難しい課題だったんだな。まあ、最初はできるとは思わなかったけどさ。偽者くん二号が偶然できたから早かったんだろうな。


「では、次の課題じゃ」


「え、今すぐにですか?」


 今帰ってきたところなのに休みなしか、師匠はスパルタらしい。

 でも、分担したから負担は少なかったし運も味方してそんなに疲れは無いけど。


「努力を怠っては自身の成長は見込めぬぞ!今度は素手でゴブリン退治じゃ」


 これはまた師匠がまたとんでもないことを言い始めた。


「素手…ですか。師匠それは流石に無理なのでは…」


「無理なことなどないわい!わしが若い時はゴブリンなぞよく素手で蹴散らしたもんじゃ。今回はわしもついて行くぞ、もし、死にそうになったら助けてやろう」


 マジかこの爺さん、頭おかしいんじゃないだろうか?

 しかし、なんだこの有無を言わせない感じは…

でも、まあ強くなるためにはやるべきなんだろうなぁ…


「…わかりました」


「では、緑雲の森へ行くぞ!ついてまいれ」


 師匠はすっと立ち上がり見かけに似合わぬ素早い足取りで歩いて行く。


 どんどん歩いて行く師匠の後を俺は無言のままついて行った。


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