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しかし、俺の分身が裏切らないとは限らない  作者: もし自分が分身できたら人生が楽になるんじゃないかと思ったが、分身が今の自分のコピーなら役に立つかは微妙かもしれない/あるは
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9.ハンターギルドは公務員

 外は薄明るく小鳥がちゅんちゅん鳴いている。

 清々しい朝だ、休みの日はよく昼前まで寝ていることもあるのだが、今日はいつもより早起きをしている。


 なぜかって?俺もついに今日で十八歳になった。

 そう、ハンター登録できる歳になりトレジャーハンターとしてダンジョンへ探索することができるのだ。


 身支度を終え、朝ご飯も早々にトレジャーハンターとして登録をしにハンターギルドへ出発する。


「それじゃあいってくるね」


「気をつけるのよ、命の危険だってあるんだから。危ないと思ったらすぐに帰ってくるのよ」


「わかったわかった、いってきまーす」


 心配している母を背に手首をパタパタ振りながら歩き出した。ワクワクしつつも若干早歩きになりながらハンターギルドへ向かうのだった。






「よし」


 自宅からの距離は近いためすぐにハンターギルドの前に到着した。目の前まで何度か来たことはあったが、中に入るのは今日が初めてだ。


 ゆっくりと扉を開けて中に入った。

 入ってみると綺麗なロビーだ、かなり広かった。王都のハンターギルドということもあるのだろうがかなり豪華な感じの内装だ。これは儲かっているのだろう。

 そんなことを考えながら受付まで進む。


「あのこんにちは…すみません」


「こんにちは、あらはじめての方ですね。依頼ですか登録ですか」


 受付のお姉さんには初対面に関わらずはじめてだとバレていた。たぶん、ソワソワしているのが態度に出ているのだろうか。

 俺は決してビビリではない。夢であるトレジャーハンターに一歩近づけると思うとドキドキが止まらないだけなのだ。


「はい、登録をお願いします」


「ではこちらに必要事項を記入頂けますか。もし、わからないことがありましたら聞いてください」


「わかりました、ありがとうございます」


 登録用紙の注意事項を読みながら書いていく。


※討伐報酬は討伐確認部位との引き換えにお渡しさせて頂きます。

※委託依頼の達成報酬については仲介料として十%を頂きます。

※委託依頼の詳細につきましては依頼者にご確認下さい。

※依頼に関わる問題に関してギルドでは一切の責任を負いません。

※素材の持ち込み買取は解体料等を差し引かせて頂きます。

※アーティファクトの査定については鑑定料を頂きます。

※ハンター証発行及び、再発行には料金がかかります。

※ハンター同士の抗争等にはギルドは関与いたしません。

………

……

 などなど小さい字で他にも色々書いてある。

 うん、面倒だからもう書いてだしちゃおう。


「これでお願いします」


「では、確認しますね」


 俺の書いた登録用紙を受付のお姉さんに確認してもらう。


「はい、確認いたしました。では、ハンター証を発行いたします。発行手数料が銀貨三枚になります」


 財布から銀貨三枚を出し受付の人に手渡した。


「では、こちらがハンター証になります。依頼の受託と達成時、また管理ダンジョンを探索の際はこちらをご提示下さい」


「わかりましたありがとうございます」


 受付のお姉さんからハンター証を受け取った。


 おー!これがハンター証かー、まじまじと見る。硬くて紫の薄い金属カードだ、なんだかカッコいい。

 ルンルン気分でハンター証を眺めながらふらふら歩いていると。


ドンッ


 人とぶつかってしまった。


「あんだ?」


「あ、すみません」


 なんだかとってもガラが悪い男の人にぶつかってしまった。ハンターギルドにいるんだからハンターなんだろうか。でも、パッと見はチンピラにしか見えない。でも、人は見かけによらないって言うし…


「おいおい、すんませんの一言で済むと思ってんのか」


「えっ」


 見かけによった。


「金貨一枚で許してやるよ」


「ちょっとぶつかっただけじゃないですか」


「あー?痛い目に会いたいようだな」


 マジで当たり屋じゃん、ギルドの中でこんなのありなの?これはギルドに助けを求めるべきだ。受付のお姉さんに声をかけた。


「あの、すいません助けてください」


「申し訳ありません。ギルドでは探索者やハンター同士の問題には個別対応しない決まりになっています」


 なんだって!?…でも、そんなことが書いてあった気もする。


 たぶん、チンピラ風ハンターは俺のことを登録したばかりの初心者ハンターだと分かった上で因縁をつけて来たんだろうな。


「わかりました。金貨一枚ですか、払います」


「わかりゃあ良いんだよ」


「奥にある鞄から取ってくるので待っててください」


「ああ、逃げるんじゃねーぞ」


 通路の曲がり角で金貨を用意する。


「お待たせしました、金貨です」


「おうよ。わかれば良いんだ許してやるよ」


 金貨を渡すとチンピラ風ハンターはそう言って去って行った。


「ふぅ」


 こういう使い方ならありだな。偽者くんが通路の曲がり角から顔だけ出してこちらを覗いていた。


 さっきはそこの曲がり角でポケットに金貨を入れ分身をしていたのだ。そして、分身によって複製された『偽者金貨』をチンピラ風探索者に渡していた。


 我ながらスマートな解決法だと思う。


 俺は偽者くんを消しギルドを後にした。今頃、チンピラ風ハンターの金貨は黒い煙となって消えているだろう。





 これからこの街の最も近くにあるダンジョンへ向かう。

 今回は依頼は受けずに出発だ。ダンジョン探索は初めてだし腕試しといこうか。

 でも、あわよくば何かお宝でも手に入ればいいなとは思う。


 向かっているダンジョンは「ハヤテの洞窟」と言って名前の通り洞窟型のダンジョンだ。一応そこは中級者向けダンジョンに分類されているのだが、そこにはコボルトが多くいるらしい。


 コボルトとは犬のような見た目をした二足歩行の魔物だ。図書館で読んだのだが人間よりは小柄で素早いがそんなに力は強くないらしい。ナイフのような武器も使うみたいだが、魔物としては弱い。


 そりゃあスライムとかよりは強いらしいが、ちょっと強い犬みたいなものだし初戦には丁度いいんじゃないかな。


 ハヤテの洞窟は王都の近くということもあって、そこまでの街道は整備されている。


 このダンジョンは国営の管理ダンジョンだったはずだ。ダンジョンの入口は立派で洞窟というか神殿の入口かのように整備されていた。二人の騎士が警備している。


 騎士にハンター証を提示する。


「すいません、確認お願いします。」


「通行料は銀貨二枚だ。」


「あ、はい」


 銀貨二枚を財布から出し手渡した。


 通行料が掛かるのか。何かとお金が掛かるんだな。これはしっかり稼がないと赤字になるぞ。


「よっしゃーやるぞー!」


 再度、気合いを入れ直してハヤテの洞窟に足を踏み入れたのだった。

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