No.90 虫の知らせ
ようやく買い物が全て終わり、家に帰る事になった。
あの後、俺は色んな服を試着させられて、かなりくたびれてしまった。
特にスーナが一番楽しんでいた気がする。
結局、俺が買ったのは、普通の柄入りのTシャツだけである。
「パパー、アイス~」
「いや、さっき食べたばかりだろ。また今度食べさせてあげるから」
「ホントに?」
「あぁ、約束だ」
どうやらキロとテンは商店街のアイスが気に入ったらしい。
特にテンはホントに美味しそうに食べていた。
まぁあっちの世界でアイスを売ってる店なんて見かけなかったし、そもそもアイスって概念すら無いんだろう。
俺とスーナがちびっ子達の手を引いて歩いていると、またしても人だかりが出来ていた。
「ん? なんだ、またなんかあったのか?」
「今日はよく人集りを見かける日だね。あれ、あそこに居るのって…」
スーナが指差す先を見ると、駿が立っていた。
「おい、駿、お前こんな所で何してんだ?」
「あ、蓮斗! ってなんだこの幸せ家族感! チクショー、良いなー!」
「『チクショー良いなー』じゃなくて、駿がなんでこんな所で立ってのか聞いてるんだけど」
「別に何って事もないぜ? 部活帰りにこここ歩いてたら、人集りが出来てたから、ちょっと様子見てただけだよ」
「あ、そう。結局、これって何の人集り?」
「あー、何でも大量の木材が突然空中から現れて、道路にぶちまけられたらしい」
「なんだそりゃ。なんか商店街に行く途中にもそんな事聞いたな」
「どういう事?」
「いや、なんかトラックの運転手曰く、急に歪んだ空間が現れて、この中に荷台が消えていったとかなんとか…」
「ごめん、全く何言ってるのか分からないけど、確かにさっきの目撃者も同じ事言ってたな。空間が歪んでどうのこうのって…」
「じゃあ…同じ現象って事?」
「急に歪んだ空間が現れるなんて恐怖現象、聞いたことないんだけど」
「まぁ実際に見たワケじゃないしな…」
ただ、2つの出来事が何かしら関係があるって可能性は高そうだ。
するとキロは俺の服をグイグイと引っ張った。
「ねぇーねぇー、なんのおはなししてるの?」
「ここにいる駿っていうおにーちゃんがバカだなっていうお話」
「オイコラ、蓮斗、お前子供になんちゅー事を教えてんだ!」
「このひとバカなの~?」
「おい、速攻で覚えちゃったじゃねーか! 結構今傷付いたぞ!」
その後、子供になんて事を教えるんだと、スーナにお叱りを受けた(何故か駿も)。
駿と別れた俺達は、なんとか無事に家に辿り着いた。
「ただいま~」
「おかえりなさい! どうだった、お出掛けは?」
「たのしかったー!」
「あらそー、良かったわね♪」
「あれ、じいちゃんは?」
「あの人なら、神社に向かったわよ」
「神社に…?」
別に新月の日が近い訳でもないのに、神社に何の用だろう。
「二人はどんなお洋服買ってきたのかしら?」
「キツネさーん!」
「あらー、じゃあ後でおばあちゃんに着て見せてちょうだいな♪」
家に上がると、二人はばあちゃんに買ってきた服を見せるために、和室の方に走って行った。
俺は一息つくと、再び出掛ける準備をしていた。
「レン君、今からどこか行くの?」
後ろからスーナに声をかけられた。
「うん、ちょっとね」
「神社?」
「なんだ、スーナは全てお見通しか」
「ふふふ♪ さっきのトラックと木材の件と、おじいちゃんが神社に行った事が気になるんでしょ?」
ホントにスーナは何でもお見通しだな。
逆にちょっと怖い位だ。
「うん…何か無関係じゃ無い気がするんだよなぁ」
「私も同じ事考えてた。神社で何か起きてるのかな…。村長さんとかユウさん達、大丈夫かな…」
「ユウさんがいるんだし、心配ないよ」
「うん…きっとそうだね!」
「じゃあ神社行ってくるよ」
「私も神社行くよ」
「いや、スーナは家で待っててくれ。二人して家から居なくなったら、またあいつら騒ぐだろうし…」
「そだね、またテンちゃん泣いちゃうかも」
「まぁすぐに戻ってくるよ」
「うん、みんなで待ってるね♪」
こうして、俺は家を後にし、じいちゃんが居る神社に向かった。
これから待ち受ける出来事も知らずに。




