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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
2章 初めての二世界生活
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No.8 おまつり

三毛子赤ちゃんのミーとミミがスーナの家に来てから、一週間が過ぎた。

二匹共すっかり目が開いてきて、元気に動き回っている。若干元気過ぎる位だ。

特にスーナの作った服の上がお気に入りらしく、よくそこで眠っている。

スーナは、いつか服の上でおしっこをされやしないかドキドキしているらしい。


「ほらー、お前らミルクだぞー」


言葉を理解してるのかいないのか、「ミルク」という言葉を聞くや否や、俺の方へ全力疾走してくる。

たどたどしい歩き方ではあるが、一所懸命にこちらに向かってくる姿はなんとも言えない可愛さだ。


「ふふふ、ミーとミミもすっかり元気になったね」


「そうだな。もう少ししたら徐々に離乳食に切り替えていっても大丈夫かな」


「レン君、猫の飼い方に詳しいんだね!」


「まぁ俺の実家にも1匹いるしな。年は俺より1個下のお爺ちゃん猫だけど、元気なんだぜ」


「じゃあレン君の兄弟みたいな子なんだね」


「家族同然の存在かな。俺の父さんが拾ってきたらしいんだ」


「じゃあ親子そろって猫ちゃんの命を助けたってことになるね」


「まぁ…。なんか照れるな」


「レン君が優しいのはお父さん譲りなんだね♪」


「やめろやめろ、なんか恥ずかしい!」


「ふふふ」


「ふふふってなんだ」


「なんでもー」


…なんか最近、スーナに軽く馬鹿にされてる気がする。

それだけ距離がちかくなってきたってことなんだろうけど。


「これから夕食の買い物行くんだけど、スーナも行くか?」


「うん、一緒に行く!」


「じゃあミーちゃん、ミミちゃん、大人しくしてるんだよー」


「ミー」


「ミーミー」


「はい、いい子だね♪」


「なぁ、スーナ…ミーとミミって、俺らの言葉、分かってる様な反応してる気がするんだけど…」


「そりゃだって、猫は人の言葉はある程度理解できる生き物だもん。レン君の国の猫は違うの?」


「え、この世界の猫はそうなの!?マジか…俺、変な事言ってないよな…?」


「あはは、そんなにいつもこの子達に話しかけてるの?」


「いや、違っ、ただ気になっただけだよ」


「はいはい♪じゃあ買い物行こう!」


「…はーい」


やっぱり軽く馬鹿にされてる…。


家を出て、村の中心に出てみると何やら提灯の様なものがたくさん吊るされてた。

そういえば、村の人達が昨日からこそこそ準備してたな。


「なんだ、なんか祭りでもやんのか?」


「そうそう、今日は年に一度のオマツリの日だよ」


「へー。なんか俺の国の祭りと似てるから妙に親近感が沸くよ」


「私もオマツリ好きだなー♪まだ歴史は浅いらしいんだけどね」


「へー、昔からある訳じゃないんだ?」


「依然、この村にやって来た人が教えたのが始まりみたい」


よそから…もしかしてそれって日本人だったりすんのかな?

提灯とかある祭りっつったら、多分日本位なもんだよな。


「ちなみにどんな店がやってんだ?」


「うーんとね、胡瓜アメとかオタマジャクシ掬い、輪投げにパチンコとかかな」


「…なるほど、ちょいちょいオリジナルが入ってんな」


「後は、組み立てた木に火を着けて、その回りをみんなで踊るボンオドリっていうのがあるよ!」


「いや、もうそれほぼキャンプファイヤー」


「キャンプ…ファイヤーって?」


「いや、何でもない、こっちの話だ」


「じゃあ今日の夜、一緒にオマツリに行こうよ!」


「そうだな、折角だし、行ってみるか。どんなもんか興味もあるし」


「えへへ、楽しみ♪」


「お祭りか…。小さい頃に父さんと妹と一緒に行って以来だなぁ」


「じゃあなおさら今日は楽しまないとね♪」


「…そうだな、楽しみますか」


夜になり、村中から祭囃子が聞こえ始めた。

俺とスーナは家を出て、村の中心に向かった。

屋台の出し物に関しては、さっきスーナが言ってた様な珍妙なものが多かったが、

道の左右に屋台が立ち並ぶ光景は、日本の祭りそのものだった。


「やべー、ホントにオタマジャクシ掬ってる。そしてメッチャいる…」


小さな子供たちが楽しそうにオタマジャクシを掬っている光景がとても珍妙に映った。


「レンくーん、胡瓜アメ食べよー!」


「きゅ…胡瓜アメ、ホントに食べるの?」


「勿論!後味さっぱりで美味しいんだよ♪」


はぁ…あまり気は進まないけど、スーナ食べる気満々だし、仕方ないな。

しぶしぶスーナが呼ぶ方へ行くと、そこにはでっかい胡瓜一本に対して、水飴をぶっ掛けただけの、

想像以上に胡瓜している物体が大量に売られていた。


「思ってた以上に胡瓜だな!」


「それが良いんだよ♪おじさん、二本ください!」


「いや、俺食べるって一言も…」


「大丈夫だって、美味しいよ♪」


スーナがキラッキラした目でこちらを見ている。

ダメだ、とてもじゃないけど、断れる空気じゃない…。


「胡瓜アメ二本、毎度あり!」


「はい、じゃあこれレン君の分!」


「あ、ありがとう…」


木の棒に胡瓜を一本差し、ただ水飴をかけただけの謎お菓子。

ふと、スーナの方に目をやると、美味しそうに水飴がかかっただけの胡瓜を食べている。

ここまで来て、食べなかったらさすがにかっこ悪すぎるな。

でーい、ここは覚悟を決めたらぁ!


ガブリっ!!


「……」


「レン君どう?美味しい?」


「…割と好き」


「でしょー!良かったー♪」


物事なんでもチャレンジしてみるのが大事だと改めて思った。


それから二人で色んな店を回った。どれも俺の知っている店からは少しズレたオリジナリティあふれるものだったが、共通して言えるのはみんな楽しそうだということ。

例え、俺たちから見て、この祭りが珍妙なものに映ったとしても、彼らにとってはこれが祭りであり、

楽しいイベントなんだから、そこに違いは無いのかもしれない。

…そんなことを思いながら、俺は焼きそばのこんにゃくバージョンみたいな、奇妙奇天烈な食べ物を

待つ列に並んでいる。随分と人気なんだな…今年の地元の祭りで出したら流行るかな?


無事にこんにゃく焼きそば(?)を手に入れた俺は、急いでスーナの待っている場所へ向かった。

だいぶ待たせてちゃったかな…なんて思いながら、歩いて行くと、さっきまでスーナがいたはずの場所には

誰もいない。


「あれ、誰もいない。…ここで待ってろって言ったのに…」


スーナを探し回っていると、祭りから少し離れた噴水の近くにスーナの姿があった。


「いたいた。なんだってあんな所に…。おーい、スー…」


スーナの名前を言おうとした時、スーナと向き合っている少年の姿が目に入り、

慌てて黙った。


(あっぶね!なんか居る!なんか居る!ん…?あれは…トホか?)


トホとは最近仲良くなったこの村の住人だ。

人懐っこい性格で、何故か俺の事を慕ってくれている。

お互い、釣り好きな事から意気投合した仲である。


(なんだ…?なんでこんな所で2人でいんだ?)


状況が全く呑み込めていない俺は、聞き耳を立てて、二人の会話に耳を傾けた。

あまり行儀の良い行動ではないことはわかっているが、気になって仕方がなかった。


(なにやら…只ならぬ雰囲気だな…)


するとトホの口から信じ難い言葉が出てきた。


「前から…スーナちゃんの事が好きだった!俺と付き合ってください!」


……


「マジでか!!?」

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