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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
5章 みんなの日常生活
73/300

No.73 帰りたての散歩道

「ただいま」


俺は1ヶ月振りに我が家に帰ってきた。

とは言ってもこちらの時間で言えば、俺は今朝学校に行って、戻って来ただけの事になっているのだけど。


「お帰りなさい。あら、あなた達仲良く手なんて繋いで…」


「あ、いや、これは…」


ばあちゃんの言葉でふと我に返った俺達は慌てて手を離した。


「ふふふ、そんなに慌てて手を離さなくても良いのに。ほら、いつまでもそんな所で立っていないで、早く中に入りなさい」


家の中に入ると、じいちゃんの姿が見当たらなかった。


「ばあちゃん、じいちゃんは?」


「あぁ、ついさっき神社から帰ってきたけど、またふらりと外に出て行ったわよ」


「ふーん、分かった」


「蓮人、なんかおじいさんに用事でもあったの?」


「いや別に」


俺とスーナは二階に上がり、俺の部屋に戻ると部屋に入るなり、二人してぐったりと横になった。


「久々の我が家だぁ。まぁあっちの世界に行ってから1日も経ってないんだけどな」


「ふふふ、ホントに不思議だよね」


すると、物陰からミーとミミが出てきて、俺達を見るなり駆け寄ってきた。


「ふふふ、ミーちゃんとミミちゃん、元気にしてた? って言っても今日の朝会ったばっかりなんだよね」


「何回体験しても慣れないな~」


「ふふ、だね♪」


何も事情を知らないミーとミミは、すっかりスーナに甘えまくっていた。


「あ、駿の奴からメールが来てた」


携帯に着ていたメールを見ると、色々と愚痴が垂れ流されていたが、どうやらあいつも無事に家に帰った様だ。


「シュン君も家に帰れたんだね、良かった♪」


「さて…」


「どしたの? レン君」


「これからどうしたもんか…。こっちの世界に戻って来た以上、轟狐の件については何もできない。つまり、特にする事がないって事だ」


「確かに…」


「まぁゆっくりするしかないか」


「うん、そうだね♪」


そう言い終わると、俺とスーナは再び床で仲良くゴロンとなった。

しかし…あまりやる事がないのも考え物だ…。


「気晴らしに外でも歩く?」


「うん、良いね♪ この子達も連れて行って良い?」


「良いけど…どっか行っちゃったりしないかな?」


「大丈夫だよ、二匹共良い子にしてるもんねー?」


「みー」


「みーみー」


まるでスーナの言葉を理解しているかの様にタイミングよく可愛い鳴き声を上げた。


「はは、大丈夫そうだな。じゃあちょっと行こうか」


「うん♪」


俺とスーナは身支度を済ませると、1階に降りて行った。


「ばあちゃん、俺とスーナ、ちょっと出かけてくるよ」


「はいはい、あら、今日は猫ちゃん達も一緒なのね」


「はい、たまにはお外に連れて行ってあげようかなって」


「良かったわねーあなた達、お外に連れて行ってもらえて。じゃあ気を付けてね」


「はいよー」


俺とスーナは家を出ると、特にアテも無く歩き始めた。

ミーとミミは久しぶりに外に出してもらえたからか、とても気持ち良さそうにしている。


「ミーとミミ、気持ち良さそうにしてんなぁ」


「うん! これからはたまにこの子達も外に連れ出してあげよっか♪」


「だなぁ」


すると前の方からじいちゃんが歩いて来た。


「あれ、じいちゃんこんな所で何してんだよ?」


「ちょっくらな。お前らこそこんな所で何してんだ?」


「何って…気分転換っているかなんていうか…軽く散歩でもしようかと思って」


「まぁ気分を切り替えるってのは、良い事だわな。俺ぁ家に帰ってっからよ! あんまり遅くならねぇ内に帰って来いよ」


そういうと、じいちゃんは家の方へとっとと歩いて行ってしまった。

結局どこで何をしていたのかは教えてくれなかった。


「そうだ、かたりな川の傍でも歩いてみる?」


「うん、私あそこの道歩くの結構好き♪」


俺達はかたりな川を目指して歩きだした。

かたりな川は、決して大きな川ではないが、沿道には沢山の枝垂れ桜が植えられており、毎年桜の季節になると、それはもう見事な桜の花を咲かせるので、地元の密かなスポットとなっている。

また、川にはカルガモの親子が仲良く泳いでいたりし、川岸では極稀に野ウサギが走っている事がある、非常に長閑な川である。


「俺、昔からかたりな川によく行ってたなぁ。子供頃はよくザリガニ釣りとかしてたよ」


「ふふふ、レン君も子供の頃はやんちゃだったんだね♪」


「やんちゃっていう程でもないだろ? よく夏美とか茜も一緒だったし…」


「茜…って、弁当を持って行った時に居た子?」


「そうそう。付き合いだけなら駿よりも長いかなー。腐れ縁って奴だよ」


「でも昔からの友達って羨ましいなぁ。色々な思い出とかあって…」


「思い出ねぇ…あいつとの思い出ってザリガニ釣りとゲームしかないけどな。それに付き合いの長さとか別に関係無いだろ? 大切なのは中身だ」


「ふふふ、それもそうだね♪ あ! あそこにカルガモの親子がいるよ!」


「ホントだ、なんか和むなぁ。お、あっちには猫がいる」


「え、どこどこ? あ、本当だ、可愛い♪」


「ミー!!」


「ミーミー!!」


ミーとミミは急に怒った様な鳴き声を上げた。


「ふふふ、ごめんね♪ ミーとミミが一番可愛いよ!」


「なんだ、ヤキモチ焼いてたのか」


すると、遠くから自転車をこぐ音が聞こえてきた。


「ありゃりゃ、お二人さんじゃないの。こんな所でデート?」


どうやら買い物帰りらしい茜が、買い物カゴに荷物を入れてこちらにやって来た。


「なんだ茜か。買い物?」


「そっ、母さんに頼まれて。あ、そうそう明日あんたの家に行っても良い?」


「俺んち?」


「先週、蓮人借りたゲームでちょっち分からん所があってさー。教えて欲しくて」


「あーうん、良いけど…それ別に口頭でも良いんじゃ…?」


「実際に見てもらった方が確実でしょ? じゃあまた明日ねー」


そう言い残すと、茜は自転車に乗ってさっさと帰って行った。


「なんなんだあいつ? まぁいいや。スーナ、俺達もそろそろ帰…」


そう言いながら、スーナの方を見ると、どことなく顔がふくれている様に見えた。

そして、茜が帰って行った方をずっと眺めていた。


「あの…スーナ…?」


「あ、うん、レン君何!?」


スーナは慌てて返事をした。


「俺達も帰ろ」


「う、うんそうだね!」


こうして久々の散歩を楽しんだ俺達は、家に帰る事にした。

尚、先程スーナがむくれた顔をしていた理由が分かるのは、ちょっと先の話になる。

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