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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
4章 ふたりの冒険生活
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No.69 義理は無くとも意味がある

もしかして、父さんが連れてきたって言う女性って…。


「何やらワガマタの飲み屋で出会ったらしくてね。リョウスケ曰く、とても快活でちょっとお転婆な所に惹かれたらしい。実際、彼女は我々を前にしても全く物怖じせず、普通に接してくれたよ」


アルフは懐かしそうに目を細めながら、懐から写真をとり出し、俺達に渡して見せた。


「これは…?」


「私達の青春の1ページ…とでも言うのかな?」


そこには、若い頃のアルフ、ミタの町長さんにユウさんのお父さん、そして俺の父さんが写っていた。

間違い無い、父さんだ。

そして、その隣にいる少しビナに似た美人が俺の母さん…なのかな?

でも村長さんの家にあった写真に写っていた女性と瓜二つだ。

瓜二つ…というか、まぁ同一人物と見て間違い無いな。


「でもなんで母さ…じゃなくてこの女性はワガマタに居たんだ?」


「ははは、彼女が君の母親だという事はとっくに気付いてるよ。それに、もし悟らせないのであれば、今みたいに『なんでワガマタに居た』というのは適切な質問とは言えない。まるで写真の女性がワガマタの人間じゃない事を知っていると相手に教える様なものだ」


「確かに…」


「意地悪を言ってすまないね。君の知っている通り、彼女はワガマタの人間ではない。詳しい事情は教えてくれなかったが、色々あって家出をしてきたらしい。当然身持ちも何も無い彼女は途方に暮れてしまい、飲み屋でやさぐれて居た所を心配したリョウスケが声を掛けた所から、交流が始まったらしい」


え、俺の父さんと母さんの出会い、そんな感じだったの?

つーか、話聞いてると父さん飲んでばっかり居ない?


「まぁ…二人の詳しい馴れ初めは知らないが、すっかり彼女はリョウスケにべったりで見てるこっちが恥かしくなる位だったよ」


いや…両親のそんな話を聞かされる俺も辛いです…。


「そして、ついぞ私はリョウスケ達に、自分達が轟狐である事を言い出せなくてね…」


「え、父さん達は、あんた達が轟狐だって事を知らなかったのか?」


「恥ずかしい話、それまでの関係が壊れるのが怖くてね…。まぁでもリョウスケにはなんとなく正体はバレていた様な気がするけどね」


今度は少し悲しそうな顔をしながら、遠くを見つめていた。


「そして彼らと接していく内に、段々と私に心境の変化が生じてきてね。簡潔に言えば自分達がしている事がとても馬鹿らしく、そしてくだらない事の様に思えてきたんだ」


「…」


「リョウスケとタグ、セグは貧しい村の開拓や食料援助を主な活動としており、特にリョウスケは元居た世界の技術を用いて、様々な物を作り出していたよ。特に彼が中心となって開発したロゴンチャは当時、主な移動手段が徒歩だったこの世界にとって非常に革新的な物で、今でも多くの人々を助けているよ」


「す…すごいね、レン君のお父さん。ロゴンチャを作った人だなんて…。ユウさんのお父さんもずっと一緒だったんだね」


「あぁ…あたしも父ちゃんがそんな事をしてたなんて全然知らなかった…」


成程、ロゴンチャに父さんの名前が掘ってあったのは、そういう事か…。

…いや、いくら開発者だからって自分の名前を勝手に掘るなよって話だけど。


「私達が出会ってから半年後、ロゴンチャの開発が無事終わると、リョウスケとレミューはワガマタから更に北の土地を目指して旅立った。タグはミタの町に戻り、セグと残りの3人はそれからしばらくワガマタに留まっていた」


「北に…?」


「あぁ、ずっと北に行くとオキア王国という国がある。何やらその国に用があったらしい」


オキア王国…もしかしたら、そこに俺の母さんの手掛りがあるのかもしれない。

でも…今は轟孤を追うのが先か。


「それきりリョウスケとレミューとは1度も会えていない。リョウスケは…今でも元気か?」


その質問を投げ掛けられた時、俺は一瞬返答に窮してしまった。


「父は…2年前に病気で亡くなりました…」


「…そうか…」


俺はその時、アルフの顔をまともに見ることが出来なかった。


「俺が物心つく頃から既に病気がちで…」


「病気がち…あのリョウスケがか…?」


「え…どういう事ですか?」


「あ、いや…個人的な意見だが、私が見てた限り、とてもじゃないが病弱な人間には見えなかったよ。むしろ日夜ロゴンチャ開発に明け暮れる、体の丈夫な奴だという印象すらある」


俺はその話を聞いて思わず驚いた。

父さんは、生まれた時から体が弱く病気がちだったと聞いていた。

今のアルフの話を聞いていると、明らかに矛盾している。

どういう事だろうか?


「何かリョウスケなりの事情がありそうだね。まぁ彼が死んでしまった以上、確認する術は無いけど」


「あの…」


「なんだい?」


「なんで俺達にこんな色々話してくれるんだ? 何も事情を聞いていないとは言っても、俺達が轟孤を追っている事位は知ってるんだろ? 今は轟孤ではないとはいえ、俺達に情報を教える義理は無いはず」


「確かに…君の言う通りだ。私が君達に情報を教える義理は無い。でも、意味はある」


「意味って…?」


「私がなんで轟孤を抜けたのか…? その理由は単純明快だ。轟孤の壊滅に他ならない」


そう言うアルフの目には、尋常ならざる決意の灯火の様な物が宿っていた。



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