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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
4章 ふたりの冒険生活
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No.63 ショッピング

「おはよー、今日もいい天気だね♪」


スーナがいつも通り、元気に目を覚ました。

俺はいつも通り、身体中ボロボロになって目を覚ました。

ユウさんは、呻き声を上げながら床で目を覚ました。


「あれ、二人ともなんでそんなにぐったりしてるの? 昨日はあまり眠れなかったの?」


「あ、いや、そういう訳じゃ。逆に永遠の眠りにつかされそうになったっていうか…」


「なら良かった♪ ユウさんはよく寝れましたか?」


「あ、いや、寝れたは寝れたんだけど、嫌な夢見ちまって…寝起きは最悪だな」


「どんな夢を見たんですか?」


「うーん、顔はあまり覚えてねぇんだけど、そいつに崖から突き落とされる夢を見てさ…。心なしか腰を打ったみてぇな痛みがすんだよな…。つーか、なんであたし床で寝てんだ?」


ユウさん、それはあなたがスーナにベッドから蹴落とされたからです…とは言えるはずもなく、俺は黙って微笑むしかなかった。


俺達は身支度を済ませると、早速ユウさんの案内で町に繰り出して行った。

途中、案内所にいるユウさんのお父さんに挨拶を済ませた。

心なしかユウさんのお父さんは、最初に会った時よりも元気そうだった。


「よーし、お前らはどっか行きたい所とかあんのか?」


「特には…ユウさんに全部お任せしますよ」


「いや、任せるったって、少しはなんかあんだろうよ。こんな所に行きたいとかさぁ」


「ん~、じゃあショッピング通りとかあったりしますか?」


「まぁあるっちゃあるけど、男でショッピングなんか珍しいな。ホントにそこで良いのか?」


「そこでお願いします。この町の男性は、あまり買い物とかしないんですか?」


「他の町や国は知らねぇが、基本的に買い物は女の仕事っつーか、楽しみってわけ感じだな。男は買い物に関して、ノータッチの奴が殆どじゃねぇかな? まぁ勿論、そうじゃない奴もいるんだろうけど」


「へぇー、買い物は女性の領域みたいな意識があんのかな?」


「さぁな。あたしみたいに買い物にあんま興味無い女もいる事だし、色々だろ」


「あー、ユウさんはそんな感じですよね」


「なんか言ったかコラ」


「あ、ここがショッピング通りですか?」


スーナが指差す先には、メインストリートとはまた違った煌びやかな街並みが広がっていた。

往来には沢山の女性たちが行き交っていた。

成程、確かにこれは男は来にくいなぁ、完全に場違いだわ。


「って、ユウさんまで何そんなに緊張してるんですか?」


見ると、ユウさんは明らかに緊張した顔で怖気づいていた。


「い、いや、あたし実はここに来た事、殆ど無くて…」


「そんなにビビる程だったら、最初に言ってくれれば…」


「び、び、ビビってなんかねぇやい! ぶっ飛ばすぞこの野郎!」


どうするかな…。ユウさんがこんな感じだし、ここは一度引き返して別の場所に行った方が良いのかな。


「スーナ、ユウさんがこんなだし他の場所へ…」


俺がそう言いかけながらスーナの方を見ると、スーナはこれまたキラッキラした目でショッピング通りを見つめていた。


「あれ…スーナ?」


「レン君、すごいよ! 色んなお店が沢山あって、レン君の町の商店街みたいだね♪」


「あ、あぁそうだな。俺の町よりも数倍でっかそうだけど」


ダメだ、スーナがすっかり夢中になっちゃってる。

ここで場所変えるなんて言ったら、がっかりするだろうし、せっかくだからここは楽しもうか。


「じゃあ行こうか。ユウさんも行きますよ」


「お、おうよ、どんとこいや!!」


「いや、戦場に行くんじゃないんだから…」


ガチガチになっているユウさんを引っ張って、俺達三人はショッピングに繰り出した。

通りを歩いていると、基本的に女性物の服専門の店やアクセショップ、化粧品店、雑貨店、美容院らしき施設などを中心とした並びだった。


「はぁー、すげーな。こりゃ男がここで歩いてたら浮くわな。実際、俺もだいぶ視線が痛いし…」


「そ、そうだな、レンってばすげー浮いてんよ! いやー、可哀想に!」


なんだか誰よりも可哀想な人が、必死に強がっている。

よく見ると涙目になってる。どんだけ嫌なんだよ。


「ねぇーねぇー、レン君、あのお店入っていい??」


一人スーナだけがショッピングを楽しんでいる様だ。

ここはスーナの行きたい所について行けばいいか。

それから俺達は色々な店を回って行った。

あれだけ、ビビり倒していたユウさんも、段々と通りの雰囲気に慣れてきたらしく、スーナと二人で店を楽しんでいた。


「はぁー、こうしてみるとショッピングっつーのも中々楽しいもんだな!」


「はは、最初はあんなにビビり倒してた癖に…。ユウさんは何を買ったんですか?」


「あたしか? この青い作業服を買ったぜ! やっぱし、こういうかっこいい服って憧れるよな♪」


「作業服はまぁかっこいいとは思いますけど、まさかのユウさんが着る側なんですね…」


「別にいいだろ? あたしはこういう動きやすい服とかが好きなんだ! ひらっひらした服とかはなんだかむず痒くて苦手でよ~」


「まぁあんまりヒラヒラした服着たユウさんは、あまり想像できないかもですね。っていうか、お金はどうやって払ったんですか? まさか、また借金して…」


「あたしが常に借金して物買ってるみたいに言うんじゃねぇ! さっき案内所で父ちゃんに会った時に貰ったんだよ!」


「へぇー、良いお父さんですね♪」


「ま…まぁ人のプリン食いやがったんだから、これ位はしてくんなきゃな!」


彼女なりのお父さんへの感謝なのかな。

相変わらず照れ隠しが下手くそな人だ。


「スーナは何買ったの?」


「私はこれ!」


そう言って、スーナはとても綺麗な装飾が施されたプレスレットを見せてくれた。


「へぇー、綺麗なブレスレットだなぁ。でもなんで三つも買ったんだ?」


「こっちの二つはレン君とユウさんのだよ♪」


そう言って、緑のブレスレットを俺に、黄色のブレスレットをユウさんに渡した。


「これで三人お揃いだね♪」


「ありがとな、スーナ! 大事にするよ」


「へへへ、どういたしまして♪ ユウさんはどう…かな?」


「お、おう…。あんましこういうの身に着けたりしねぇから、なんか照れ臭ぇけど…ありがとよ」


「ふふふ、どういたしまして♪ それじゃ次行こうか」


こうして俺達はあてもなく町中をブラブラするのであった。

お揃いのブレスレットを身に着けて。

※次の更新は10月08日(火)の夜頃となります。

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