No.61 おもてなし
「よし、じゃあ今日はありがとうな! またなんかあったら頼むわ! プリンは弾むからよ!」
「うん、プリンさえくれればいつでも協力するよ」
「俺達の方もありがとうございました。そして、度々の失礼な言動、すみませんでした」
「いいよ、僕の方こそ煽るような言い方をしてしまったみたいで、すまなかったね。ただ、君達に危険な目にあって欲しくないっていうのは、本音だってことは信じてくれ」
「はい、ありがとうございます」
「私も色々な話が聞けて良かったです。ありがとうございます」
「あぁ、君達の健闘を祈ってるよ。じゃあまた」
こうして、俺達はガラさんの住み処をあとにした。
外を出る頃には、すっかり夜が更けており、暗くなっていた。
「さて、お前らどうするんだ?」
「そうですね、今日と明日は一先ずここに滞在して、次どこ行くかは後で決めます」
「なんだそりゃ。計画性ゼロじゃねぇかよ」
「あー、ガラさんが言ってた準備不足っていうのは、こういう所なのかな」
「まぁあれだ、グランルゴまではどうせ行けないんだろ? この町でゆっくりしてくってのもありだぜ。何か発見もあるかもしれねぇしな」
確かに今、手元にある轟孤の居場所に関する情報っていうのは、グランルゴに居るらしいという情報だけだ。
早めにイクタ村に戻るっていう選択肢も無くは無いが、戻った所で俺達が出来ることは少ない。
だったら、ギリギリまでこの町でゆっくりしつつ、情報収集等を続けるっていうのも有りか…。
「そうですね、まぁスーナとも相談して決めます」
「そういやスーの奴はどうした?」
「移動式住宅の中で休んでます。少し疲れたみたいなので。さっき顔を出したら、だいぶ復活してましたけどね」
「そうかそうか、なら良かった。じゃあまたな!」
「あれ、ユウさんそっちって…」
「ん? どうした?」
「なんでまた細路地の方に行くんですか? 元の家には帰らないんですか?」
「ばっきゃ野郎、いくら仲直りは出来たからってそんなにすぐに帰れる訳ねぇだろう!」
「要するに気恥ずかしいって事ですね」
「う、うるせぇなレン、別に恥ずかしくなんかねぇよ!」
「でも、あんな所で女性が過ごしてたら危ないと…」
「おいこらスー、お前今、あんな所っつったか? 覚えてろよチクショー」
「そうだ、ユウさんが良かったら、私とレン君が寝泊まりしてる移動式住宅に来ますか? 勿論、半月後にはイクタ村に戻ってしまうので、ずっとって訳にはいかないですけど…」
「いやいや、いいよ別にそこまでしてもらわねぇでも! 大々あたしがそこに居たら…その…」
「?」
「ふ、二人の邪魔になっちまうじゃねぇか!」
「大丈夫です! 中は案外広いから、ユウさんが来ても邪魔になんてなりませんよ♪」
「ばっきゃ野郎、あたしが言いてぇのはそういう事じゃねぇだろ! 折角のあたしの気遣い台無しにするんじゃねぇ!」
「レン君、ユウさんが来ても別に良いよね?」
「まぁスーナが良いんなら、俺は全然構わないけど」
「おいそこのバカ彼氏! そこはスーを止めとけや! 何受け入れてんだ!」
「やったぁ、じゃあ決まりだね! じゃあ早く戻ろう♪」
「いや、お前さっき『ユウさんが良かったら』っつったよな? 結局あたしの意志無視?」
「まぁ確かにあそこで女性が一人で過ごしてるっていうのは、ちょっと心配だしな」
「だよね! だから一緒のお家に居れば安心だよね♪」
「お前らあたしの話を聞けぇぇ!」
ユウさんの絶叫も虚しく響き、結局スーナに押しきられる形で俺達が過ごす移動式住宅に来る事になった。
「はぁ…ホントに来ちまった…」
「そんなに溜め息つかなくても大丈夫ですよ。遠慮とかしないでゆっくりしてってください」
「いや、遠慮もするだろうが! お前ら言っとっけど、あたし達知り合ってまだ1日経ってねぇんだからな! そこまで遠慮知らずな人間じゃ無いわ!」
「最初はあんなに馴れ馴れしく話し掛けてきたのに…人って変わるんだなぁ」
「あれは礼をしたかっただけだよ! 別に仲良くなりたくて近付いた訳じゃ…」
「え、私達とユウさん、仲良く無いんですか…?」
スーナは悲しそうな顔でユウさんを見ている。
「いや、そんな事言ってねぇだろ! そんな顔で見んじゃねぇ、あたしが悪いみたいだろ!」
「そっか、なら良かったです♪ さぁ中に入ってください」
「わ、分かったよ」
ついに観念したのか、渋々ユウさんは家の中に入った。
「おー、確かに外から見るより中は広いな!」
「さぁ適当な所に腰を下ろしてください♪」
「お、おぉ…」
昼間の豪快な彼女は一体どこに行ってしまったのか。
今はすっかり子犬の様に大人しくなってしまった。
「お茶どうぞ♪」
「お、おぉ、なんか悪ぃな」
スーナが渡したのは、俺が以前一口飲んで悶絶した極悪激甘ドリンクだった。
ユウさんは渡されたイクタ茶を何の疑いも無く、口に含んだ。
「なんだこれ、甘くて滅茶苦茶うめぇじゃんか!」
「良かった、お口に合ったみたいで♪ 私が住んでいるイクタ茶です」
あ…あのクソ甘い飲み物を美味いだと!?
この世界に居る人達はどんな味覚してんだ?
「ふいー、御馳走様! いやー、久々にこんな美味いもん口にしたわ!」
「プリンといいイクタ茶といい、甘けりゃなんでも美味しいと思ってんじゃ無いんですか?」
「ばっきゃ野郎、甘いってのは味覚の王様であり、正義だ! 美味くねぇ訳がねぇんだよ!」
何を言っているのかは、さっぱり分からなかったが、まぁ人の好みは人それぞれだったので、それ以上は何も言わなかった。
ユウさんもだいぶリラックスしてきたし、そろそろ頃合いかな。
「さっき、スーナ共話し合って決めたんですが、折り入ってユウさんにお願いがありまして…」
「おう、なんだ? あたしが出切る範囲だったら何でも言いな! 協力すんぜ!」
俺とスーナは顔を見合わせ、ゆっくりと頷き、本題を切り出した。
「ユウさん、私とレン君の用心棒さんになってくれませんか?」




