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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
4章 ふたりの冒険生活
51/300

No.51 お前かよ

「あ、別に大丈夫なんで。俺達先に行きます」


「なんでだよ! ここは『あぁ、じゃあ喜んで』って言う所だろー! なに人の好意を不意にしやがんだ!」


「いや、恩着せがましいな。あんたといるとなんか面倒事に巻き込まれそうで嫌なんだよ」


「結構ストレートに言うじゃんか! 大丈夫、悪い事にはしないからさ! 勿論、代金は取らねぇ!」


勿論、船に乗れるのは助かるし、他の船着き場を探す手間も省ける。

あまり関係は無いが、顔も整っていて、所謂スレンダー美人という奴か。あまり関係は無いが。

本来だったら、喜んで受ける誘いだ。

だけど、借金取りに追われてるプリン娘に乗せられる船なんて、泥船に乗る様なものだ。


「ねぇ、レン君、船に乗せてもらおうよ。この人悪い人じゃ無さそうだし…」


スーナの口から出た思いもよらぬ言葉に、俺は唖然としてしまった。


「す、スーナ、本気か? 借金取りとのやり取りに巻き込まれかねないぞ?」


「その時は、レン君がさっきみたいにやっつけてくれるから、大丈夫だよ♪」


「いや、やっつけるって…別に借金取りって悪い事してる訳じゃ無いからな? どっちかって言うと、プリン食べたいが為に借金した挙げ句、借りた金を返さないこのプリン娘の方が悪いから」


「でも…」


「うーん…分かった、じゃあこの船に乗せてもらおう」


はぁ…なんだろう、自分はスーナには甘いなぁ。


「おっしゃ、そうと決まればそこに止めてある船に乗んなぁ!! すぐに出発してやらぁ!」


「だって! レン君、早く乗ろう♪」


そう言って、俺の手を取って、船に乗り込もうとした。


「おいおい、スーナ、危ないからゆっくり歩いて」


今度は俺がスーナの手を引いて、ゆっくり船に乗り込んだ。


「なんでぇ、お前らもしかして恋人同士か…?」


プリン娘からの突然の問いかけに、俺達は顔を見合せてしまった。


「恋人…かな…?」


「えっと…多分…」


お互い、照れてしまってなんとも歯切れの悪い回答になってしまった。


「んだよ、はっきりしねぇなぁ」


すると、プリン娘はニヤニヤしながら突然俺の腕を掴んだ。


「ちょ、いきなり何を…」


「ねーちゃん、あんまり煮え切らねぇ事言ってっと、このにーちゃんあたしが取っちまうぞ?」


するとスーナはかなり動揺してしまい、涙目になってしまった。


「レン君はダメ…!」


「ん? なんだって、ハッキリ言いな!」


「おい、プリン娘、いい加減に…」


「レン君、取っちゃダメーー!!」


突然大声を出したかと思ったら、俺からプリン娘を引き離そうとして、あろうことか、プリン娘にヘッドロックを掛け出した。


「ちょ、てめえ何しやがんだ…! ヤバイ、死ぬ、死ぬ!」


「スーナ、落ち着け、プリン娘死んじゃうから!」


船の上での珍騒動があったが、ようやくスーナも落ち着いた。


「あの…プリンさん…ホントにすみませんでした…」


落着きを取り戻したスーナは、プリン娘に平謝りしていた。


「ったく、危うくおっ死ぬ所だったぜ…。まぁあたしも少しからかい過ぎたし、もう気にすんな!」


そう言って、俺達に背を向けると、オールに手を掛けた。


「よし、じゃあ気を取り直して行くぜ! しっかり捕まってなぁ!」


プリン娘が勢い良くオールを漕ぐと、船はみるみる船着き場を離れていった。


「で、にーちゃん達は一体どこに向かいたいんだ?」


「んー、特にどこってのは無いんだよな。俺達、人探しをしてるんですよ」


「人探しぃ? この広い町の中でか? なんか手掛りとかってあんのかい? 写真とか」


「写真は…無いな。スーナも別に貰ってないよな?」


「うーん、私も分からないや」


「おいおいおい、お前らホントに人探しする気あんのか? んー、じゃあとりあえず、人の多い大通りの方に行ってみっか」


「じゃあそれでお願いします」


船は徐々に開けた水路の方に出ていった。

水路を挟んだ陸地を繋ぐいくつもの橋が掛かっており、俺達の船も例に漏れず、そのいくつもの橋の下をくぐって行った。

橋の上では、子供たちが走り回ったり、風呂敷の様な物を広げて、路上商売をしていたり、中には橋から釣竿の糸を垂らしている者も居た。

勿論、両側の陸地ではいくつものお店が立ち並び、人々の活気に満ち溢れた声が飛び交っていた。


「どうだ、中々良い町だろー?」


「そうですね、人も明るいし、何より水の都ってだけでテンション上がるなぁ。ここがメインストリートなんですか?」


「いや、この町のメインは、この先の船着き場で降りて、左手を真っ直ぐ行った所にあるぜ!」


「へぇー、ここよりも栄えてんのか」


「折角だから、あたしがそこまでにーちゃん達を案内してやんよ!」


「ありがとうございます、プリンさん」


「あのよー、いい加減そのプリンさんだー、プリン娘だー言うのは止めてくんねぇかな! こちとら『ユウ』っつー歴とした名前があんだよ! …まぁあたしが名乗ってなかったのも悪ぃんだけどよ」


「ユウ…」


「ねぇねぇ、レン君、ユウって名前…私達が探してる用心棒の女の人と同じだね」


「同じ…だな」


あれ…そう言えば、町の案内所であった父親との喧嘩原因がプリンっつったな…。

で、確か目立つとかなんとか…。


ユウ…プリン…目立つ…そして女…。


「あの…ユウさん…。ユウさんの叔父さんって…ミタの町の町長だったりします?」


するとプリン娘は驚いた顔をしてこちらを振り向いた。


「おいおい、なんで叔父の事知ってんだよ!? もしかして、おっちゃんの知り合いか?」

















「お前かよおおおおおおおおおおおおおお!!!」

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