No.45 Side 高橋 駿③ ~村長宅~
拝啓、李家蓮斗様。
お元気ですか。
今頃はスーナちゃんと二人で轟狐の連中を追って旅している頃でしょうか。
二人で旅してさぞかし楽しいでしょうね。
さぞかしいちゃついているんでしょうね。
もうね、羨ましさしかないです。
僕ですか?
こっちも楽しくやっていますよ?
毎日毎日、おたくのおじい様にこき使われて…。
ったく冗談じゃないっつーんだよ。
なんか良く分からん内に巻き込まれて、1ヶ月も帰れねーで、復興の手伝いさせられてさぁ…。
「おい、駿コラ! 何をぶつぶつ独り言言ってやがんだ。とっとと手伝え!」
「独り言位いいじゃないですか! こちとらね、独り言でも言ってないとやってらんないんですよ!」
「ほう…坊主が俺に言う様になったじゃねぇか」
「俺ねぇ、あんたん所の弟子とかじゃねぇんだから、もうちょっと労わってくれても良いんじゃないの!?」
「そりゃあ残念だなぁ。俺はお前を見込んで大工仕事を頼んでるってのによぉ」
「お、おれを見込んで?」
「そうさ、お前は蓮人以上に根性ある奴だと思ってんのさ。根性なしにんな事頼まねぇよ」
俺が根性ある…?
蓮人より…?
見込みあり…?
「し、仕方ないっすねぇ~!! そこまで頼られちゃあ頑張らねぇわけにはいかねぇっすよ~!!」
俺は蓮人のじいちゃんに頼られてしまう責任を感じつつも、より一層復興作業に精を出した。
「よーし、ここら辺はだいぶ片付いて来たから、お前ロジん所の家の片付けして来い」
「村長さんの…?」
「あいつ他人の面話ばっかしてやがってんから、自分の家の事、ずっとほったらかしなんだよ」
「へぇー、良い人なんですね、村長さんって」
「無駄にお人好しなだけだよ」
「無駄って…。とりあえず、村長さんの家に行きゃいいんすね」
「おう、頼んだぞ」
蓮人のじいちゃんに村長さんの家の住所を教えてもらい、村長さんの家に向かった。
村長さんの家に着くと、中々どうして荒らされてしまっていた。
「はぁ、こりゃあ元通りにすんのには骨が折れそうだなぁ…」
すると、草陰から村長さんが姿を見せた。
「あれ…シュン君じゃないか? なんでこんな所に…?」
「あー、蓮人のじいちゃんに言われて、村長さんの家の手伝いして来いって」
「ははは、相変わらずリンタロウは人遣いが荒いねぇ」
「いやーもう、荒いなんてもんじゃないですよ! 俺をなんだと思ってるんだって話っすよ!」
「悪いねぇ、彼のせいでこんな所まで来させられて」
「あー、いやそれは大丈夫ですよ! どうせする事無いし…村長さんの家が荒れ放題ってのも、なんか示しがつかないでしょ? 手伝える事があったらなんでも手伝いますよ!」
「ありがとう、君もレント君に負けず劣らず頼りになるねぇ」
「そ、そうっすかねぇ! まぁまぁそこんところに関しては自覚してない訳じゃないんすけどねぇ!」
「じゃあそこに倒れている木をどけてもらえるかな?」
村長さんが指差す先を見ると、中々の大木が重厚な存在感を醸しながら地面に横たわっていた。
「ちょっ…これ、どかすんですか!? ってかこれも轟狐の野郎どもにやられたんすか?」
「いや、これはその…レント君に魔石の試し打ちをさせたら、思いの外強力でね。時間が経ってから倒れてしまったんだよ」
「あいっつの仕業かよーー!! ただでさえ村に被害出てるってのに、何追い打ちかけてやがんだあのバカ野郎は!!」
「いやいや、別に彼のせいじゃないよ。試し打ちをさせたのは私だからね」
「それにしても加減ってもんがあるでしょうよ! 何あのバカは全力でやってんだよ!」
「力加減…そうだね…」
「えっ、どうかしたんですか?」
「あ、いやなんでもない!」
今、明らかに村長さんの様子がおかしかったよな…?
力加減って言葉に反応してたような…。
「でもこの木、どうやってどかすんですか? 流石に俺の力じゃ動かせないですよ」
「ははは、勿論腕力でどかそうだなんて思っていないよ。これを使って動かすんだよ」
そう言って村長さんは、俺にへんてこな石ころを渡してきた。
「これって蓮人に渡してた石ころですか?」
「そう、全く同じものだよ。これを使って風を巻き起こして木をどけるんだ。使い方は知ってるよね?」
「あぁ、蓮人になんとなく教えてもらってますけど…」
「ならその要領でこの木をどかしてごらん」
なーんか急に無茶振りが始まりましたよ~。
えぇっと…この…魔石っつったっけ…?
これを手に持った状態で頭ン中で、風を起こすイメージ…。
すると手に持っていた魔石から突然突風が巻き起こり、目の前に倒れていた大木を吹き飛ばしてしまった。
「おー、すっげぇ! …じゃねぇや、怪我人とか出してない!? 大丈夫な感じ?」
凄い勢いで目の前にあった大木が吹き飛んでいったので、誰か巻き込んでやしないか心配になった。
「ははは、心配しないくてもここいらは誰もいないハズだから大丈夫だよ」
「そ、そっか、良かった。しっかし凄いパワーですね、この魔石…!」
「それは君のセンスが素晴らしいからだよ。レント君といい君といい、初めてにしては上出来だよ」
「ははは…まぁ蓮人にはかなわないですけど…」
「確かに…彼の魔石の扱いの上手さは正直ちょっと常軌を逸している…」
「えっ…どういう事ですか?」
「この魔石が大気中の魔力を取り込んで、その魔力を様々な形に変えて放出するものだという事は聞いているかな?」
「あ、はい、蓮人から教えてもらいました」
「魔石の扱いが上手くなるには、イメージ力を豊かにする事が大事だ」
「…はぁ」
「それともうひとつ大事な要素がある。それは魔力の引き込み方だ」
「魔力の引き込み方…?」
「例えば、シュン君は先程風を巻き起こす際、イメージありきで魔力を取り込んでいた」
「…?」
「簡単に言えば、風を起こすというイメージが先にあって、それに大気中の魔力が引き寄せられる感じで魔石に魔力が溜まっていったんだ」
「んー…良く分からないけど、それだとどうなるんですか?」
「言ってしまえば、受け身の姿勢で魔力を取り込む形になるから、魔力の取り込みとしてはあまり効率は良くないんだ」
「…要するにそこの違いが、俺の蓮人とであるっつー事ですか?」
「ははは、中々鋭いね君も! そう、私も教えてなんかいない魔力の引き込みをレント君は自然にやってのけたんだ」
「まぁ…あいつ結構器用だし、たまたま出来ちゃう事位あんじゃねーかな?」
「たまたまか…」
「まぁ…とりあえず、大木もどけた事だし、片付けの続きしちゃいましょ! 村長さんも早く片付いた家で夜寝る時位ゆっくりしたいでしょ?」
「あ、あぁそうだったね! じゃあ手伝ってくれるかな?」
それから俺と村長さんとで、村長さん宅の片付けをずっと続けていった。
家の外壁等の損傷こそ無かったものの、家の中は執拗に荒らされていたため、片付けはかなり大変だった。
正直、クタクタで心が折れそうになっていた俺だが、その心が花咲かすかのような出会いが待っていた。
「いやぁ…こりゃこっぴどくやられたっすね…。なんだってこんなに家の中を物色する必要があったんだか…。奴らの狙いは神社だったわけでしょ?」
「それもそうだね。言われてみればこの家を襲う理由が見当たらないな…。逆に足がついてしまう危険性だって孕んでいるのに…」
「ったく、とことん迷惑な連中だよ。人様の家をこんなにしちまいやがって…。片付ける身にもなってもみろっての…」
段々愚痴モードに突入しかけていた時、家のドアが静かに開いた。
俺は開いたドアの方を見て、思わず息が止まった。




