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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
4章 ふたりの冒険生活
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No.42 町長と情報屋

旅に出て、最初の夜が明けた。

俺はふいに、喉を締め付けられる様な痛みで目を覚ました。


「だ…だ…ぐるじい…。敵か…?」


あまりの締め付けに、再び意識が飛びそうになるのを堪えつつ、周りの状況を確認した。

そして、一瞬でその正体が判明した。


「ズーナ…ヘッドロッグを解除じてぐれ…」


スーナが俺を抱き枕代わりにしているうちに、寝ぼけて首締めの体勢になってしまったようだ。


「んー…? あ、レン君おはよ~…」


いかにも良く寝ました的な表情を見せつつ、ようやくスーナは目を覚ました。


「おはようはいいから、早く首から腕を離してくれ…」


「あ、レン君ごめん、またやっちゃった!」


スーナが慌てて俺の首を解放し、ようやくまともな呼吸をする事ができた。


「こ、このままだとスーナの両親を見つける前に俺が死ぬ…」


それから、しばらく同じ布団で寝る事を禁止にした。


「まだ首が痛い…」


「ごめんね、私寝相悪いから…」


「いや、もはや寝相って言うレベルじゃ…」


ただ、寝てる時の事は本人にはどうしようもないので、それ以上小言を言うつもりはなかった。


「よし、朝御飯も済んだし、そろそろ町へ行こうか」


「うん、行こう!」


俺達は家を出ると、すぐ近くにある入り口から町の中へ入っていった。

俺にとって、イクタ村以外で始めて訪れる町だ。

中の雰囲気はイクタ村とさほど変わらなかったが、人の多さは流石にイクタ村とは比べ物にならなかった。


「いやー、流石に人が多いな。スーナ大丈夫?」


「平気平気! 鎌倉の時の人の多さに比べたら全然大丈夫だよ」


「はは、まぁあれ体験したらそうなるか…」


「じゃあ早速情報収集開始だね!」


そこから俺達は、情報屋の在りかと、轟狐についての情報の聞き込みをした。

最初聞き込みををした時は、だいぶおっかなびっくりだったが、この町の住人は不思議な位親切に答えてくれた。

しかし、誰に聞いても知らないという返答ばかりだった。


「うーん、イクタ村から一番近いこの町だったら、轟狐の奴等がイクタ村から逃げてる所を見かけた人がいるかと思ったけど…」


「もしかしたら、人目に付かないように迂回したのかも」


「あいつら全員バカそうな顔してたけど、見た目ほどバカじゃ無いって事か…」


その後も聞き込みを続けたが、有力な情報は得られなかった。

結局、情報屋の在りかも分からないまま。


「うーん、出足からつまずいたなぁ。結局手掛かり無しかぁ」


「中々上手くいかないね」


「このままここを出て、次の町へ向かうか、もう少し粘るか…」


「とりあえず、夜ご飯食べようか!」


「スーナさっきから、ずっとお腹鳴ってたもんな」


「な、鳴ってないもん!」


スーナは顔を真っ赤にして否定した。


「まぁ俺もお腹空いてきたし、どっか店入るか」


「ねぇ、私お腹鳴ってないからね! ねぇ、ねぇ!」


スーナに抗議を受けつつ店を探していると、一件のひっそりとした店があった。


「ここ…にするか」


扉を開けて入ると、中には料理人らしき男性とウエイトレスの女性の二人だけで、席は入口正面にあるカウンターのみだった。

第一印象としては、一見さんお断り風の雰囲気で、正直入る店を間違えた。

ただ、一度入って出るのも失礼なので、そこで食べる事にした。


「いらっしゃい! 好きな席に座ってください!」


店の雰囲気に反して、店主の男は笑顔で俺達を出迎えてくれた。

俺達はカウンターに腰かけると、無造作に置いてあったメニューらしきものを見た。

どれも見たこと無いような料理ばかりで、どれが美味しいのか見当がつかなかった。


「ダメだ、メニュー見ててもさっぱり分からない。スーナはここに載ってる料理とかって分かる?」


「うーん、私も良く分からないなぁ。イクタ村以外の町でご飯食べた事殆んどないから…」


スーナも分からないのは、少し意外だった。

村や町によって、結構食文化が違うのだろうか?


「すみません、おすすめって何ですか?」


「んーそうだなぁ…ソルソルなんてのはどうだ?」


「ソルソル…?」


「あぁ、この店の看板メニューさ」


「へぇー、このメニューでいうとどれですか?」


「いや、そいつには載ってないよ」


「看板メニューなのに載ってないのかよ」


「それは俺が以前、イズタマという町で食べた店の物だ」


「そんなもんカウンターに置くなよ、紛らわしい! っつーか人んとこの店のメニュー持って帰んな」


「はははは、すまないね、勘違いさせてしまって!」


店主は豪快な笑顔で誤魔化した。

成る程、この店主も中々変わってるとみた。

全く変な店に入ってしまったもんだ。


「君達はこの町の人間じゃないみたいだね。どこから来たんだい?」


「イクタ村から来ました」


「イクタ村から来たのかい? この間は大変だったろう?」


「大変って…?」


スーナがきょとんとした顔で聞き返した。


「あはははは、当の本人達が呑気なもんだ! この間轟狐の奴等が悪さしたらしいじゃないか」


「え、なんで知ってんですか?」


「君達の村の村長から、大変だったって連絡が来たんだよ」


「村長さんから…?」


俺とスーナは上手く状況が飲み込めなかった。

何故、村長さんからこの店の店主にわざわざ連絡がいくのだろうか?


「そうかそうか、じゃあ君達がレント君とスーナちゃんか! 話はロジさんから聞いてるよ!」


「俺達の名前まで筒抜けなのかよ…」


「ロジさんから、よろしく頼むように言われてたからね。リンタロウさんも元気かい? 今イクタ村に来てるんだろ?」


「じいちゃんの事も知ってんのかよ!」


「私は元々イクタ村の出身でね。まだイクタ村にいた時にリンタロウさんが村にやって来たんだ。これがまた豪快な人だったよ」


「それなら心配ご無用です。今でもあのじいさん、無茶苦茶元気ですから」


「あははは、そうかそうか! いやぁ懐かしいねぇ。また会いたいねぇ」


「だったら、会いに行けば良いんじゃないですか? まだしばらくいるし…」


「いやいや、私がこの町を離れる訳にはいかないからね。残念だけど」


「なんでこの町から離れられないんですか?」


「私、この町の町長だから」


「…は?」


「いや、だから町長」


「…蝶々?」


「違う、蝶々じゃない、町長。この町の長」


「…え、ホントに? ホントに町長なんですか?」


「ちなみに言うと、私、町長兼、情報屋なんだよね」


「…はっ!?」


「待ってたよレント君、スーナちゃん! さぁ君達の力になってあげよう!」


俺とスーナはあまりの情報量に、何も言えなかった。


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