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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
3章 スーナの異世界生活
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No.40 二人の旅立ち

事前準備や情報収集も考慮し、出発は1週間後となった。

とは言っても、その間俺が準備できる事は何もなく、轟狐の連中にやられた村の復興作業の手伝いをしていた。


「蓮人ぉ、そこに置いてある木材をよこせ」


「あいよー」


俺は主に家の建て直しを担当しているじいちゃんのサポートが中心だった。

全部復興が終わるまで、まだまだ先は長そうだが、とにかく一日でも早く村の人達が安心して元の生活ができるように必死で体を動かした。


「ふー、中々の重労働だなぁ…」


「おらぁ、ボケっとしてねぇで体動かせェ!」


「ちょっと休ませてくれよ…。こっちはくたくただってんだよ…」


すると、スーナが水が入った容器を持って来てくれた。


「毎日お疲れ様! 水持ってきたよ♪」


「おー、スーナありがとう! どっかのじいさんが人使い荒いから、喉がカラカラだよ…」


「ふふふ! それにしても、蓮君も蓮君のお爺ちゃんも、とても力持ちなんだね!」


「うーん、そうかな? 全然普通だと思うけど…」


「いや、片手で軽く何十kgもある木材とかを持ち上げてる時点で、十分力持ちだと思うよ!」


「まぁスーナが言うなら…」


「スーナちゃあん…俺にも…俺にも水頂戴ぃ…」


今にも死にそうな声で、駿がやってきた。

どうやら駿もこき使われている様で、ボロボロだった。


「駿さんもどうぞ♪」


「ありがと~スーナちゃん! 君は天使だよ~」


「なんだよ、駿もじいちゃんの手伝いしてんの?」


「そうなのよ~! もう人使いの荒さっつったらないよ~! 孫としてそこんとこどうなの?」


「いや、別に慣れたけど…」


「そこだよ、そういうとこだよ! 誰も指摘しないからお前のじいちゃん、あぁなんじゃないの?」


「何さり気なく俺に文句言ってんだよ。だったらお前が直接言やいいじゃんかよ」


「いや、すみません、僕が悪かったです。もう文句言わないです」


そう言うとトボトボと力なく歩いて行った。


「あいつも良く考えたら災難だよな…。今も分からずこの世界についてきちゃって、仕舞にはこの村でじいちゃんにこき使われて…。そりゃ文句も言いたくなるか」


「でも、駿さんもなんだかんだ言って、毎日頑張ってくれているよ!」


「あいつ、根は真面目だからね」


俺達は俺達で、いよいよ出発を明日に控えていた。

出発の直前まで、こんな重労働で体酷使してる場合じゃなくね?と思わなくも無かったが、却ってごちゃおごちゃ頭の中で考えなくて済むから、良かったかもしれない。


その日の夜、俺とスーナは村長さんに呼ばれて、村長さんの家を訪れた。


「夜分に呼び出したりして悪いね」


「いえ、大丈夫です。むしろ眠れなかった位ですから」


「ふふふ、私も」


「やっぱり旅が怖いかい?」


「全く怖くないって言ったら嘘になりますね。全然知らない土地に繰り出していくんですから。でもそれ以上にスーナとふたりで旅できる事の楽しみの方がうんとでかいですね」


「はは、頼もしいね! やっぱり君はリンタロウの孫だ。ちゃんと血を受け継いでるよ。そっくりだ」


「じいちゃんとですか?」


「あぁ。ただ、リンタロウの方はまぁ絵に描いた様なやんちゃ坊主だったけどね」


「あはは、なんか想像できますよ」


「後、村の復興にも携わってくれて本当にありがとう。シュンく君にも宜しく伝えておいてくれ」


「いえ、メインでやったのは、殆んどじいちゃんですから。でもお礼の言葉、ありがたく頂戴します」


「すまん、話が逸れたね。実は君達に渡したい物があって」


そう言うと、村長さんは俺とスーナに石ころの様な物を渡してきた。


「これってもしかして…」


「そう、先日襲ってきた轟狐の連中が使っていた魔石だよ。この村にはその二つしかないけどね」


「あの…良いんですか? 俺達にこんなすごいものを…」


「何を言ってるんだ、使うべき人が持っていなけりゃ、こんなもの只の石ころ同然だからね」


そう言うと、俺とスーナに外に出るように促した。


「村長さん…なんでまた外に出たんですか?」


「ははは、せっかく全部綺麗にしたのに、家の中で試したら、またぐちゃぐちゃになってしまうからね」


「家の中がぐちゃぐちゃになる程であれば、村の外でも十分な事案だと思うんですけど…」


「まぁ周りに危害を加える様な事にはならないからそんなに心配する事はないよ」


「はぁ…」


俺は正直半信半疑で村長さんの言葉を聞いていた。


「君達に魔石を渡すにあたって、そのときは使い方と注意事項を今から教えるから、よく聞いていてくれ」


そう言うと、俺から魔石を奪い取ると、何やら目を閉じて動かなくなってしまった。


「あの…村長さん?」


村長さんは手に持った魔石を目の前に突き出した。

すると、突然村長さんが持つ魔石から強風が巻き起こった。


「うわぁ!」


「ひゃっ!」


思わず俺とスーナはその場で尻餅を付いてしまった。


「これがこの魔石の持つ『風』の力さ」


「すげぇ…」


まるで台風でも来たかの様な強風が辺りに落ちていた気の枝や葉っぱを一掃してしまった。


「使い方は簡単、魔石を持った状態で風を発生させるイメージを頭の中でするだけだ」


「イメージ?」


「試しにレント君もやってみると良い?」


そう言うと、村長さんは再び魔石を俺に渡した。

力を放出した直後だからか、熱を帯びていた。

石を右手に持ち替え、そっとイメージをした。


風を起こすイメージ…風…強風…こうか?


俺は目を開き、強く念ずると、先程よりもずっと強い暴風が目の前に発生し、辺りにものすごい風を撒き散らした。


「これは…想像以上に…」


今度は村長さんがその場に尻餅を付いてしまった。


「あ…すみません、やり過ぎましたか!?」


「いやいや、大丈夫だ。さすがはリンタロウの孫と言うべきか…ここまですんなりと魔石をモノにしてしまうとは…」


「いや、自分でもビックリしてます。スゴい力ですね…」


「はは、そんなに謙遜することじゃないよ。体術に魔石の扱いといい、これは大きな強みだ。相手によって闘い方を切り換える事ができる」


「闘う…?」


「奴等が対話でわかりあえる連中じゃないことは先日も話しただろ?」


「…」


「別に出くわして、必ず闘えと言っているんじゃないよ。むしろ、出来れば危険な場面には出くわして欲しくない。ただ、一瞬の迷いや戸惑いが命取りになると言うことだけは、覚えておいてほしい…」


「わかりました…」


「分かってくれれば、良いよ」


「あれ、そういえばスーナはどこ行った?」


「ホントだ、どこにもいないね」


「レンく~ん…こっから降ろして…」


あろうことか、スーナは俺の爆風に吹き飛ばされ、気の枝に引っ掛かっていた。


「スーナぁぁ!? 今、降ろすからじっとしてて!」


俺と村長さんと協力してスーナを気の枝から引きずり降ろした。

スーナは頑なに認めなかったが、半泣き状態だった。


「気を取り直して説明を続けるよ。このように、魔石とは石に込められた力を放出する特殊な石だ。エネルギー源は、大気中から取り込んだ魔力としている事が多い」


「多いって事は、それ以外の方法もあるって事ですか?」


「その通り、例えば魔石を使う者自信から魔力を取り込む方法だ」


「体内から…?」


「そう、この世界の大気中には魔力が含まれているが、日々の呼吸の中で、人の体内に魔力が少しずつ蓄積されていく。勿論、レント君の体内にも微少ながら魔力が取り込まれているハズだ。ただし、体内の魔力を一気に放出してしまうと、極度の疲労感に教襲われるから、注意が必要だ」


「それだけ聞くと、体内の魔力を使用する方法にメリットが無いように思えるんですけど…」


「いや、そうでもない。場所によっては大気中から魔力が取り込めなかったり、取り込む量が少なかったりする場合もあるからね。そういった時は、体内の魔力を使わざるを得ない」


成る程、ここら辺は慣れないと難しそうだ。

まぁ基本は大気中から魔力を取り込むのがベタだと考えて良さそうだな。


「もしかしたら気付いているかもしれないが、魔石にも色々種類がある。例えば、先日轟狐の連中が使用していた火の魔石、今レント君が使用した風の魔石。それ以外にも雷の魔石、水の魔石、氷の魔石など色々な種類がある。もしかしたら、それらに出会う事もあるだろう」


…なんかまんまRPGのゲームの世界だな。

とりあえず、当面の間は手元にある風の魔石でやり過ごす必要があんな。

ただ、風は色々と汎用性がありそうだから、うまくさっきの強風を制御できるようになれば、使い勝手が良さそうだな。


「後、スーナの魔石にはどんな力が?」


「どちらかと言うとレント君のサポートになるような魔石だね。まぁ実際に使って見せた方が早いか」


そう言うと、村長さんは何故か自分のズボンの裾を捲り出した。

すると、脛の辺りに擦り傷があった。


「それはケガ…ですか?」


「あぁ、昼間の復興作業の際に足をやってしまってね。ケガ自体は大した事ではないけどね」


村長さんはスーナの元へ行き、スーナの前に擦り傷を負った足を差し出した。


「スーナ、さっき私がレント君に教えた様に、頭の中でイメージをして、この傷を治してみるんだ」


「え、この傷を…?」


突然の事に、スーナは困ってしまっていた。


「そう、頭の中で傷を治すイメージをするんだ。スーナなら必ずできる。やってみてごらん」


村長さんは、優しく微笑みながらスーナの頭を撫でた。


「はい、やってみます!」


スーナは目を瞑ると、手を村長さんの傷の前に差し出した。

すると、一瞬で足の傷が消えてしまった。


「傷が…消えた」


「はははは、スーナも難なくモノにする事ができたね。合格だ」


「これは…傷を癒す魔石?」


「そう、この魔石が持つのは『癒しの力』。頭の中でイメージする事で、傷を癒し、元気にする事ができる」


「これでレン君が怪我をしても私が直してあげられるね!」


「そ、そうだな。まぁなるべく怪我をしない努力もしていくけどさ…」


何にしても、村長さんから貴重な道具を頂いたおかげで、益々旅が楽しみになってきた。

俺達は魔石を受け取った足取りで、スーナの家に戻った。


スーナの家では、じいちゃんと駿が居間で寝ており、俺とスーナは二階の寝室で寝ている。

じいちゃんのいびきがうるさくて眠れないと、駿は毎日抗議している、俺に。


「いよいよ明日だな」


「そうだね、なんだか緊張してきちゃったよ」


「実は俺も緊張してるんだ。でも一人じゃないから、なんとか頑張れるかな」


「こちらこそついて来てくれてありがとう♪」


「いや、だってスーナ一人で行かせる訳にはいかないだろ。それに前からこの世界を回ってみたいと思っ

てたしな」


「私もイクタ村と隣り町にしか行った事ないから、楽しみ♪」


「スーナの両親…見つかるといいな…」


「うん…レン君と一緒ならきっと見つかるよ!」


「会った時はガツンと言ってやれよ!」


「ふふふ、頑張るよ!」


スーナはとても柔らかい笑顔で笑った。


「じゃあそろそろ寝るか。おやすみ、スーナ」


「うん、おやすみ♪」


俺達は明日から始まる旅に備え、眠りについた。



次の日の朝。

俺は眠り足りないのを堪えて、目を擦っていた。

なにやら駿のうるさい声が聞こえる。

一体何を叫んでいるのか…。


「れ、れ、れ、れ、蓮人ぉぉぉ!! お前ら朝っぱらから何やっとんじゃあああ!?」


「なんだよ、駿か…。おまえこそ朝からうるさいよ…。何か用か…」


「何か用か…? お前らが全然起きてこないから起こしに来たんだろーが!!」


「あぁ…わりぃ。でも起きてこない位でそんなに怒る事ないだろ?」


「あーそれだけだったら、俺もこんなに声を荒げて無かったよ! お前らベッドの中で何やっとったんじゃ!!」


「ベッドの中で…?」


布団の中を確認すると、スーナが俺の布団に潜り込んでスヤスヤ寝ていた。


「スーナ、また俺の布団ん中で寝てたのか…。で、なんだよ?」


「なんだよじゃねーだろ!? 男女二人が同じ布団の中で…ふぁーーーー!!」


駿のヒステリックアラームのおかげで、すっかり目が覚めてしまった。

早めの朝食を取り、いよいよ出発する時が来た。


「さぁいよいよ出発だね。旅に必要な物は持ったかな?」


「はい、ありったけの荷物を積みました」


「後、これを渡すしておくよ」


俺は村長さんからピンクの紙の様なものを受け取った。


「なんですか、これは?」


「ここに戻ってくるのに必要な物だよ。名前を『移紙』という。例えば、こんな風に紙を千切って…」


村長さんが千切った紙を地面に置くと、紙が地面に溶け込んで跡形も無くなってしまった。


「紙が消えた…?」


「そして後は、昨日教えた魔石と同じ要領でこの場所に戻るイメージをする…試しにやって見せよう」


村長さんは紙を持ったまま、遠くの方に歩いて行ってしまった。


「どこまで歩いて行ったんだ…?」


すると先ほど、紙を置いた場所に突然、村長さんが出現した。


「え、え、なんか出たぁー!!」


駿が非常に失礼な叫び声をあげて、じいちゃんにしばかれていた。


「今見せた様に、戻って来たい場所に紙を同化させ、残った紙を持った状態で、ここに戻って来るイメージをするだけで、戻って来れるというものだよ」


「あれか、ドラクエでいうキメラのつばさみたいなもんか…しかしすごいな、乗り物要らずだな」


「じゃあこの紙を渡すよ。次の新月の日にはこの紙を使って戻って来るんだよ。既にスーナの家の前に同化してあるから、あとはその紙で戻って来るだけだ」


俺は村長さんから移紙を受け取ると、大事にしまった。


「何から何までありがとうございます!」


「スーナ…」


村長さんはスーナに改まって話しかけた。


「何、村長さん?」


「気を付けて行ってくるんだよ…」


「私は大丈夫! レン君が付いてるから! 村長さんも体には気を付けてね!」


「ありがとう…」


村長さんの目には、薄っすらと涙が浮かんでいた。


「じゃあじいちゃん、俺達行ってくるよ!」


「おう、しっかりやって来い! スーナちゃんに怪我さすんじゃねーぞ!」


「分かってるって…。じいちゃんと駿も復興作業頑張れよ!」


「ホントだよ…。俺、この村であと3週間以上も手伝いさせられるんだぜ…」


「いつまでもガタガタ言ってんじゃねぇよ。よし、いい機会だから、お前の根性も叩き直してやる」


「ちょっと~…俺が何したっていうんだよ~」


「はは、じいちゃん程ほどにな。じゃあみんな、俺達行ってくるよ!」


「私もレン君も、無事で帰ってくるからね!」


「おう、とっとと行ってこい!」


「何かあったら必ず引き返してくるんだよ!」


「蓮人ぉ~、早く帰ってきてくれよ~」


俺達はまだ見ぬ土地を目指して、歩き出して行った。

目指すはスーナの両親の元へ。


こうして、俺達の長い長い旅が始まった。

今回のお話で第3章が完結となります。

次回の連載は9月11日(水)からとなります。

ここまで続けられたのは、皆さまのおかげだと思っております。

連載再開までの間も、ずっと執筆はしているので安心してください笑


ちなみに、9月2日(月)から、完全新作の連載がスタートします。

そちらの方も良かったら読んでみてください。


ではみんな、9月11日(水)に会おうぜ!

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