No.38 Side 高橋 駿②
えーとですね、現在判明している情報をまとめますとですね、
①異世界に来ちゃってまーす
②蓮人達と一緒でーす
③いつ帰れるのかわかりませーん
という事なんですねー。
まとめた所でっていうのもあるんですけどねー。
でもこれが現実なんですよー。
以上、私からの報告は以上でーす。
「おいコラ、ぼうず! いつまでそうやってるつもりだ? いい加減受け入れやがれ」
「いや、俺すっごい今受け入れようとしてんの! めっちゃ頑張ってんの!」
「幸い、けが人は多数出た様だが、奇跡的にも犠牲者は一人もいなかった。君達のおかげだ」
「なーに言ってやがんだ! お前ぇだろ? 神社に共鳴反応起こしてたバカは?」
「ははは、いやー君は何でもお見通しだね」
「ん? どういう事だよ、じいちゃん」
よーし、いいぞ蓮人。この爺さん二人の会話さっぱり分からんからな。
そうやって、質問して解説させていくんだ。
「ここ最近の神社の共鳴反応は、イクタ村の危機を俺達に知らせる為に、意図的に起こしたものだったっつーこった」
「成程、そういう事だったのか」
いや、成程じゃねーよ。
何一人で納得してんだよ。俺を置いて行くんじゃないよ。
まず、共鳴反応がなんなのかを説明しなさいよ!
「しっかし、何もあんなに派手に燃やす事ねーだろうよ。神社が燃え尽きちまったら元も子もねーだろ」
「まぁ状況が状況だったからね。それにこの神社はちょっとやそっとじゃ燃え尽きたりしないのは、君も知ってるだろ?」
「いや、こっちは急に神社の祠から炎出てきて、ビックリしたんだよ! 危うくこっちまで燃えるとこだったぜ!」
「いや悪かったね。ただ、奴らの興味を神社から遠ざける為には、多少乱暴な方法を取らざるを得なくてね」
「ん? どういう事だそりゃ」
「奴らの狙いは、この神社を破壊して、跡形も無くするだったのさ」
「…この神社を?」
「最初から燃やしとけば、奴らはわざわざ手を下す必要が無くなり、神社から遠ざかると考えたんだ。まぁイチかバチかの賭けだったけどね」
「神社が目的っつー事は、少なくとも神社が二つの世界を繋いでる通路だって事は知っての犯行って考えるのが自然だよな。一体、どこでそんな事嗅ぎつけてきやがったんだ…」
「そこまでは分からない。ただ、奴らはいずれまたやってくる」
「なんでそれが分かる?」
「奴らは、17年前にこの村を襲った悪党集団『轟狐』の一員に他ならないからだ!」
部分部分の話の内容は掴めてきたぞ…。どうやら、ゴウコって連中がこの村を襲った正体らしいな。
で、そいつらの目的がこの神社だと…。
つまり、二つの世界を分断するのが目的って事か…。
「ご…轟狐…」
「あ…あれ、スーナちゃん…?」
どうしたんだ、急に? ガタガタ震えて、座り込んじまったぞ…?
もしかしてスーナちゃん…ゴウコって集団の事を知ってんのか?
「スーナ…落ち着け…。大丈夫だから…」
蓮人…? 何それ、何ナチュラルにスーナちゃんの事抱きしめてんの?
え…二人、なんか進展してない…?
いや、そんか事言ってる場合じゃないのは分かってんだけどさ。
え、もしかして君達そういう事なの?
ちょっと俺、なんか知らないけど泣きそうなんだけど。これなんの涙?
「うん…ありがとうレン君…。もう大丈夫…」
「蓮斗…そのゴウコとかいう集団とスーナちゃん、なんか関係があんの?」
「その…轟狐って集団のリーダーがスーナの両親なんだ。とは言ってもスーナ自身は赤ん坊の時に、ここの神社に捨てられてて、何も覚えてないんだけどな」
「え…」
なんだよそのベビーな過去…。
こんな可愛い子がなんてもん背負ってんだよ…。
「いつまで経っても、手下共から連絡がねぇから来てみたが。へへへ、まさかその嬢ちゃんが頭達の娘とはなぁ…。」
え、何々、誰の声?
すんごい気持ち悪い笑い声が聞こえたんだけど!
「へへへ、悪い事ぁ言わねえ、俺にその嬢ちゃん渡しな。頭の娘だ、殺したりはしねぇからよ」
そう言いながら、大男が木々の向こうから歩いてきた。
2メートルはあるだろうか、兎に角デカイ!
「ドシィン!!」
何が起きたのかは、全く見えなかった。
けど、今現在の目の前の光景から推測するに、蓮斗の奴がマッハのスピードで相手の懐に潜り込み、マッハのスピードで相手の腹に強烈な蹴りを喰らわせた様だ。
「スーナを…何だって?」
そう言ったときの蓮斗は、普段からは考えられない程の鬼の形相をしていた。
「な…なんだてめぇは…!!」
「スーナ達には指一本触れさせねぇぞ…!」
「こんのガキゃ…焼かれ死んじまえ!!」
そう言うと、突然大男の手の平から炎が出現し、俺達目掛けて投げつけてきた。
「どわぁ! 炎!?」
「おい、みんな散らばれぇ!」
蓮斗のじいちゃんの命令に従い、俺らは散り散りになって逃げた。
つーか、何あの炎!
急にマジック始めちゃったよ、あのおっさん!
大男が放った炎が木々に燃え移り、辺りを焼き始めた。
「何なのあの炎! 手に火炎放射機でも仕込んでんの?」
「奴ら、手に魔石を仕込んでいるな! 中々厄介だ!」
何魔石って!? なんかもう完全にRPGの世界なんですけど!
「でも、炎自体は大した威力じゃないな。おい、じいちゃん、手に持ってる竹刀貸してくれ!」
「おい、大事に扱えよ」
蓮斗のじいちゃんは、蓮斗に竹刀を投げた。
「何十年も放ったらかしにしといてよく言うよ…」
蓮斗が竹刀を受けとると、大男が放ってきた炎をその竹刀で見事に捌いて見せた。
「炎を打ち消しやがった!?」
「お前ら、本当に末端の末端だな」
そう言い放ったかと思うと、目にも止まらぬ電光石火で、剣道の面を打つかの様に、蓮斗は大男の額に強烈な一撃を与えた。
凄まじい打音が辺りに響いたかと思うと、大男は白目を剥いてその場に倒れた。
「れ、レン君すごい…」
あまりの衝撃に、スーナちゃんも若干引いてしまっていた。
「レント君、それは一体…」
「これ? 竹刀ですよ?」
「いや、そうじゃない、君の動きだ! おおよそ普通の人間の動きじゃなかったぞ!」
「まぁ普通じゃない人間に散々しごかれたんでね」
「人聞きの悪ぃ言い方すんじゃねぇよ。おめぇを強い人間にする為だろうが」
「いや、あれ言っとっけど、今だったら虐待以外の何物でもないからな!」
「まぁまぁ二人ともその辺にしてくれ。なんにせよ、みんなのお陰で本当に助かったよ。ありがとう」
村長を名乗る爺さんに深々と感謝を述べられた。
まぁ俺何もしてないけど。
「さて、これからどうするかだな…」
「どうするって…え、一旦めでたしめでたしで元の世界に帰るんじゃないの?」
「あ、駿、言い忘れてたんだけど、俺らしばらく帰れないよ」
「は?」
「次に帰れるのは、1ヶ月。次の新月の日にならないとどうにもならないんだ」
「いやいやいやいやいや、蓮斗さん。いやーー、蓮斗さん! 俺には君が何を言ってるのか、さっぱり分からんのだけど」
「いや、だから1ヶ月経たないと帰れないんだって」
「え、ホントに1ヶ月このままなの? 学校とかバイトとか…。嘘だろ…?」
「あ、大丈夫大丈夫、こっちで1ヶ月過ごしても、あっちでは来た時間に戻ってこれるから」
「え、何それ?」
「いや、俺にもよく分からないけど…そういうもんらしい」
「あー、そうなの? 成る程成る程! じゃあ安心だな!」
そう言うと、俺はフラフラと歩き出した。
「お、おい、駿、どこ行くんだよ?」
俺は大ーきく息を吸った。
「なんじゃそりゃあああああああああ!!!!」