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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
3章 スーナの異世界生活
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No.37 Side 高橋 駿①

えっと…何がなんだかという感じですね、はい。

俺はバイトに行きがてら、蓮人と一緒に帰ってて、そしたらなんか爆発音がしたんだ。

そしたら蓮人の奴、俺の事ほったらかして神社の方へ走って行っちまったんだ。

で、蓮人を追い掛けてったら、神社がえらい燃えてて、そこに蓮人とかスーナちゃんが倒れてたんだ。

慌てて蓮人達の所へ行って、声かけとかしてたら俺まで意識が遠のいていって…。

で、目を覚ましたら現在に至るって感じですよ、はい。


「駿…なんで、お前がここにいるんだよ!」


「いや、俺にだってわかんねーよ! 神社で倒れてるお前らを見つけて声かけとかしたら、俺まで意識無くしちまって…」


「多分、その時に蓮人の体に触れちまって、巻きまれたんだろーよ。まぁあんま責めねーでやんな。コイツなりに心配しての行動だ」


体に触れたから巻き込まれた?

え、何それめっちゃ怖いんですけど。

つーか、ここホントにどこなの!? 家とかめっちゃ燃えてんだけど!


「別に責めちゃないよ。駿を置き去りにしてっちまった俺にも悪かったんだし」


「そうかい、ならいい。さて、まずはここの村の連中の救出と神社の死守だ。俺とコイツが神社を守り、お前はスーナちゃんと村の連中を守りな」


「了解! スーナ、じっとしてろよ!」


「え、レン君、ちょっと!?」


そういうと蓮人はスーナちゃんの体を軽々と抱え上げた。

所謂、お姫様だっこという奴である。


「じいちゃん、駿、行ってくる!」


「少しでも危なくなったら、退けよ! 深追いとかすんじゃーぞ!」


「その言葉、そっくりそのままじいちゃんに返すよ!」


スーナちゃんを抱えたまま、蓮人は走り去ってしまった。

相変わらず、スゲー力と脚力だこと。


「うし、坊主。俺達も神社に向かうぞ」


「うす、わかりやした…じゃねー!! さっきから全っ然状況が分からないんですけど!! いつになったら説明してくれんの!? つーか俺の事、ぼうずっつーのやめてくんない!? 一応、蓮人と同い年なんで!」


「おー、悪ぃ悪ぃ。時間とか余裕がなかったもんでな。とりあえず話の続きは、神社に着いてからで勘弁してくれや。じゃあ行くぞ」


そういうと、蓮人のじいちゃんはものすごいスピードで走りだした。

つーか爺さんの走るスピードじゃねーだろ!

普通についていけないんですけど!


「ちょっ…待って、置いてかないで!」


林の中を走っていると、突然草陰から凶悪面した男が飛び出してきた。


「へへ、一人残らず死んでもらうぜぇ」


男は、先ほど蓮人が投げ飛ばした男が持っていたと同じ様なこん棒で、俺に襲いかかってきた。


「いぎゃああああああ、誰か助けてえぇぇぇぇ!!!」


すると、俺を目掛けて襲ってきた男の動きが突然止まった。

そして、持っていたこん棒を落としたかと思うと、白目を剥きながらその場に倒れてしまった。

男を気絶させた招待は蓮人のじいちゃんだった。


「ったく、面倒かけやがって…。ついて来いっつってんだろうが」


「いや、あんたが走るの早すぎてついて行けなかったんですけど!! でも、助けてくれてありがとうございますぅ!」


俺はやややけくそ気味のお礼を述べると共に、再び蓮人のじいちゃんを追いかけて走った。

ようやく蓮人のじいちゃんの所へ追い付く頃には、神社の火はほぼほぼ鎮火されていた。


「おうぼうず、やっと来たか。もっと脚力鍛えとけや」


「いや…無理言わないで…。これでも俺、学校じゃ蓮人の次の次位には足、速いんだから…」


もはや息も絶え絶えだった。

つーか、この爺さん全然息上がってねぇ。ホントに爺さん?


「とりあえず、見ての通り神社の火は消火された。助かったわロジぃ」


「いや、こっちこそ危ないところだったが助かったよ。しかし、改めて久しぶりだね」


「ったく何十年ぶりかの再会がこんな状況なんてなぁ。酒酌み交す暇もねぇな」


「君は相変わらず酒ばっかりだな…。ちなみに後ろにいる少年は?」


「あぁ、こいつぁうちの孫の友人で、駿っつーんだけどよ、気の毒にも俺達の空移に巻き込まれちまったみたいでよぉ」


「君ってやつは…。じゃあ二つの世界の繋がりの事とか何も知らずに来てしまったんだね?」


ダメだ、この爺さん達が一体なんの話をしてんのかがさっぱり分からない。

ふたつのせかいのつながりぃ? 何そのRPGゲームみたいな設定の話。この二人ゲーマーなの?


「スーナは…来てるのか?」


「おぉ、来てんぞ。なぁに心配そうな顔してんだおめぇは。うちで元気に過ごしてたよ」


「え、スーナ、君の家にいたのか!?」


「そりゃそうだろうよ、他に行く当てなんてねぇんだからよ」


「それでスーナは今どこに…」


「蓮人と一緒にいるよ」


「そっか。で、その二人は?」


「蓮人にはスーナちゃんを守りつつ、村の連中の救出を任せてる」


「成程、そうか…じゃないだろ! 何を考えているんだ! 君も見ただろ、この村を襲った悪党共を!!」


「あぁ見たけど…それがどうかしたかよ?」


「いや、どうかしたかよじゃない! 君は自分の孫にそんな危険な事を任せたのか!? もしも二人に何かあったらどうするつもりだ!」


「んだよ、うるせぇな。久々に会ったかと思ったら、今度ぁ説教かぁ? 心配すんなって、うちの孫なめんな。なんてったって俺が散々鍛えてやったかんなぁ」


どうやら、この爺さん二人は旧友みたいだな。

俺をそっちのけですっかり話混んじまってる。

それより…蓮人の奴大丈夫かよ…スーナちゃん抱えたまま。

っていうか、なんでわざわざスーナちゃんまで蓮人について行く必要があったの?


「レント君に対する信頼は結構だが…。ホントに大丈夫なのか?」


「俺がそう言ってんだ。ちったぁ信用しやがれ」


「はぁ…まぁ君がそういうなら…私も信じるしかないね」


ロジとかいう爺さんは呆れ顔でため息をついた。


「あの…ちょっと俺だけ理解が追い付いてないんすけど…。神社がどうとか二つの世界がどうとか…。そのそもここってどこなんすか? つーか、今どんな状況なんすか?」


「なんでぇ、まだ理解してねぇのか? 言葉のまんまだ。この神社と俺達が良く知る神社は、二つの世界を結ぶ建物で、ここが俺達の世界でいう異世界ってやつだ」


ロジとかいう爺さんが心配の言葉を口にしたその時、突然男二人がこっちに吹き飛ばされてきた。

男たちはそのまま、木に激突して動けなくなっていた。


「ぎゃああああ、今度は何ぃ!?」


男達が吹き飛ばされてきた方から、スーナを抱えた蓮人がスタスタ歩いて来た。


「おい蓮人、危ねぇだろうが」


「悪ぃじいちゃん。つい力が入っちゃってさ。とりあえず、村のみんなは一か所に避難させたぜ」


「そんなバカな! 連中は何十人と居たはずじゃ…」


「もう全員のしちゃいました。一か月ぶりです、村長さん」


「あ、あぁ…久しぶりだね、レント君。それに…」


ん? なんか気まずい雰囲気ってやつ? ってかスーナちゃんってここが地元だったのか。

じゃあ何、スーナちゃんの地元が襲われてたから、蓮人達はここに来たって訳か。


「村長さん…ごめんなさい…私…」


何故かスーナちゃんがポロポロと涙を流し出した。


「いいんだよ…無事で良かった」


「駿も無事だったか?」


「え、あぁ、まぁ無事かな。それよりここどこよ?」


「んーまぁ俺達から見れば、ここは異世界って事になるのかな?」


「い、いせかいぃ? 何々、蓮人、ゲームのやりすぎじゃないの?」


「まぁそういう反応になるよな…。でもこれは事実だ。今俺達がいるのは川崎でもないし、日本でもない。俺達が住んでる世界とは全く違う世界なんだよ」


そういう蓮人の顔は真剣そのものだった。

勿論、蓮人が冗談を言う事だってあった。

しかし、蓮人がこういう真剣な場面でふざけた事をいうような奴じゃない事も、俺は知っていた。


「ホントにここ、異世界だっていうのか…? 俺達、さっきまで確かにあの神社に…」


「そう、つまりあの神社は俺達の世界とこの世界を結ぶ(ゲート)みたいなもんだ」


「ゲート…あそこが…? じゃあ俺は蓮人達と一緒にゲートをくぐってここに来ちまったって事?」


「そういう事だ。悪いけどこれが現実だ」


あれだな、よく漫画とアニメで異世界転移とか異世界転生とかあんじゃん?

あれって割と主人公とか現実とか状況受け入れるの早いじゃん?

でもね、実際それに出くわすと、そんなにすんなり受け入れらんないからね。

つーかまだ受け入れられていないから。

ただ…さっき頬なら散々つねったけど、すげー痛い。体の感触とかも現実のそれだ。

つまり…今は現実。そして、ここは俺らの住んでいた世界じゃない…つまり…


「お、俺…異世界転移しちまったのかよ…!!!」


おかあさーん。

僕です、駿でーす。

しばらく、家には帰れそうにないでーす。


なぜかって?

異世界転移しちゃったからでーす。


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