No.36 新月、彼らを誘わん
あれから、じいちゃんは毎日の様に神社に通っている。
じいちゃんが帰宅後は、一応俺とスーナで話を聞くようにしていた。
相変わらず共鳴反応は続いているようで、警戒が必要らしい。
スーナは明るく振る舞ってはいるが、内心はきっと不安で仕方ないだろう。
俺に出来ることは、スーナの側に居てやる事位だった。
そして俺自身、あちらで世話になった村長さんも含め、イクタ村の事が気が気じゃ無かったが、結局は新月の日までは何もできない現状を、もどかしく思いつつも受け入れなければならなかった。
それを見透かされてか、じいちゃんからは考えすぎんなとの言葉を貰ったが、考えるなという方が無理だ。
んなもん、どうしたって考えてしまうし意識もしてしまう。
俺はそんな日々を過ごしていった。
そしてついに新月の日を迎えた。
この日もじいちゃんは、朝から神社に行っていた。
その後で、スーナも神社に行くつもりらしい。
「じゃあ俺は行くけど、スーナも無理するなよ。危なくなったら、すぐ神社から離れろよ」
「うん、分かった。レン君も学校頑張ってね!」
俺はスーナに笑顔で送り出された。
ホントだったら、学校なんて休みたかったが、ばあちゃんはそういうのにすごく厳しい人なので、しぶしぶ学校に行く他無かった。
「どしたの、蓮斗難しい顔して」
珍しく俺はその日、駿と一緒に帰っていた。
普段は帰り道が違うのだが、今日はバイトがあるとかで方向が同じだった。
「別に難しい顔なんか…」
「してたよ! 眉間に皺寄っちゃってさ」
「頭空っぽのお前とは違って、色々あるんだよ」
「なんで俺をディスる!」
「ディスってなんかない、事実だ」
「俺、心配して言ったのに、この言われ様か」
駿が喋り終わるかどうかの時、突然神社の方から爆発音が聞こえた。
「ドォン!!!」
爆風は俺達がいる場所まで到達した。
「何々、この爆発音は!?」
駿は突然の事に完全にビビり倒していた。
「この方向は…!」
嫌な予感がした俺は、神社を目指して全速力で駆けて行った。
「蓮斗!? ちょっと待って―!」
駿の事など目もくれず、俺は必死に神社を目指した。
そして、神社に着くと、祠が燃え盛っていた。
そして、祠の前にはじいちゃんとスーナが立っていた。
「じいちゃん、スーナ!! これは…!」
「蓮人、こりゃ大変な事になっちまったみてぇだ」
「いや、見りゃ分かるわ! 何があったのかって聞いてんだ!」
「例の共鳴現象だよ。同じ事がイクタ村の神社でも起こってるってこった」
「てことは…!」
「どうやらこりゃあっちの世界へ行かなきゃなんねぇみてぇだな」
「俺も行くよ!」
「はっ、勝手にしやがれ。自分の身は自分で守れよ」
「分かってるよ! じいちゃんこそ腰やるんじゃねーぞ」
「待って、私も行く!」
「スーナ? 何言ってんだ、スーナにもしもの事があったら…」
「私も…イクタ村を守りたい! 村長さんと…村の人達を守りたい!」
「スーナ…」
スーナの強い意志を秘めた瞳を見たら、何も言えなくなってしまった。
「蓮人、スーナちゃんの事、しっかりと守れよ」
「んな事、言われなくてもわかってるよ!」
「じゃあそろそろ入り口が開くから、心の準備しとけ。蓮人はスーナちゃんの手を掴んどけ」
じいちゃんに言われるまでもなく、スーナの手を握っていた。
「絶対手ぇ離さすなよ」
「うん、分かってる!」
すると次第に意識が遠くなり出した。
なんだか、後ろの方で叫び声が聞こえた気がする。
そして、俺の…体に…触れてる…。
…誰…だ…?
…
……
俺は周囲から感じる熱で眼を覚ました。
隣にはスーナが俺に手を繋がれたまま、横たわっていた。
「おい、スーナ、無事か?」
俺は中々起きないスーナの体を軽く揺さぶった。
「うーん…あれ、レン君…ここは…?」
「何言ってんだ、俺達イクタ村に…」
そこまで言いかけた俺だったが、周りを見渡した瞬間、言葉を失った。
神社を含めて、村全体が燃え盛る炎に包まれていた。
「んだよコレ…どういう状況だ!」
「そんな…村長さん! 村のみんな!」
意識がはっきりし出したスーナは途端にパニックになってしまった。
「落ち着けスーナ、まずは状況確認…ってここも危ないな、安全な所に移動しよう! っつーかじいちゃん、どこ行ったんだんだよ!」
その場に居ないじいちゃんの事を気にしつつ、俺はスーナを連れて火の手の回っていない場所を探した。
「ダメだ…どこもかしこも火の手が回ってんな…」
辺りを見渡したが、安全そうな所はなさそうだ。相変わらずじいちゃんも見当たらないし…。
すると当然、近くから誰かの悲鳴が聞こえた。
「なんか今、悲鳴が聞こえたか!?」
「う、うん、私にも聞こえた!」
悲鳴が聞こえた方へ走っていくと、村の人が謎の男に襲われていた。
謎の男はこん棒の様なものを持っており、村の人はそれでやられた様だ。
「あれは…魚屋のおじさん…!」
俺がこの村にいた時、買い物でよく世話になっていた魚屋のおじさんだった。
「ふざけやがって…なんの為にこんな…」
周りには、仲間らしき者がそれぞれ粗暴を働いていた。
「や、やめてくれ! この村を襲うのは…やっとみんな笑顔を取り戻してこれたんだ…! だから…!」
「それは遺言か? 俺らがそれを聞いて、はいそうですかと引き返すとでも思ってるんなら、大したお花畑野郎だ。悪いが無駄な時間は嫌いでね。ほら、とっとと死んでもらうぜ」
男は持っていたこん棒を高く振りかざし、おじさんを目掛けて思い切り振り下ろそうとした。
俺は気が付くと、全速力で男の元へ向かい、素手でこん棒を受け止めていた。
「な、なんだてめぇは…!」
「レン君!!」
俺は敵のこん棒をはたき落とすと、胸倉をつかみ、仲間たちのいる方目掛けて思い切り投げ飛ばした。
「だぁぁぁぁぁぁ!!」
投げ飛ばした敵は、仲間達を巻き込みながら民家へ突っ込んだ。
頭に血が上って、人んちまで壊してしまった。
「なんだあいつは…ゴンバの巨体を軽々投げ飛ばしやがった!!」
「ここは一旦、引くぞ!」
完全にビビり出した子悪党共は、とんずらこいて逃げ出した。
「深追いは…やめとこう。それよりも村のみんなを助ける方が大事か」
するとスーナが慌てて、駆け寄って来た。
「レン君! ケガはない!? どこも痛くない!?」
「大丈夫だよ。どこもケガする要素無かっただろ?」
「うん…レン君、ものすごい腕力だね。どうやってそんな力…」
「どこぞの爺さんに、ガキの頃から鍛えられてきたからな。おかげでこの有様だよ」
とは言え、さっき敵を投げ飛ばした時は、正直自分でも驚いた。
まさかあんなに遠くまで吹っ飛んでいくとは思わなかったからだ。
いつの間に俺はこんなに強くなったのだろう。
「とにかく、まずはじいちゃんと合流しないと…!」
「おう、呼んだか?」
振り返ると、じいちゃんが立っていた。手には何やら竹刀の様なものを携えていた。
「じいちゃんどこ行ってたんだよ! つーか、手に持ってる竹刀は?」
「これか? 俺がむかーしここに来た時に竹刀を村の神社に隠しといたんだがよ、案外残ってるもんだな」
「なんだそりゃ…」
「それと、なんだか知んねぇけど、お前ぇの友達まで連れてきちまったみてぇだぞ?」
「友達…?」
すると、じいちゃんの後ろから一人の男がぬぅっと姿を現した。
「れ、蓮人ぉ~。ここどこ~?」
「し、し、し、駿んんんんんんんんん!! 何でえぇぇぇ!!?」




