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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
3章 スーナの異世界生活
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No.35 共鳴

江ノ島・鎌倉観光から数週間が経った。

スーナがうちに来てから、1ヶ月が過ぎ、すっかりスーナがいる生活が当たり前になっていた。


あの日から、俺とスーナの関係性が劇的に変化したのかと問われれば、あまり大きな変化は無い。

まぁ寝てる時に、布団に侵入してくる回数はだいぶ増えたが…。

…って近況報告をしているまさに今も現在進行形で、スーナは俺の布団の中でスヤスヤと気持ち良さそうに寝ている。

あまりにも気持ち良さそうに寝ているので、非常に起こし辛い。


「…スーナ、朝だぞー」


「んー? レン君、おはよー…」


スーナは寝ぼけ眼を擦りながら、身を起こした。


「もうさ…俺とスーナ、部屋分ける必要ないな」


「んふふ、そうだね♪」


「『んふふ』ってなんだよ」


「そしたら、いつでもレン君の顔を見れるなーって」


「いや、同じ家に住んでんだから、そんなもんいつでも見れるだろ」


「同じ部屋だったらもっと見れるもん」


「なんだそりゃ」


数分にも満たない、他愛の無いやりとりを経て、俺達は居間へ降りていった。


「ばあちゃん、おはよう」


「おはようごさいます!」


「あら、おはよう。今日も仲良く二人一緒に起きたの?」


「いや、まぁ…その」


「冗談よ。ホラ、朝御飯出来てるから早く食べなさい」


「ヘーイ」


以前、同じような事をばあちゃんに聞かれて、恥ずかしさから、否定に近い返答をしたら、それを聞いていたスーナが落ち込んでしまった事があった。

それ以来、否定も肯定もしない、非常に中途半端な返答しか出来なくなってしまった。

中々にキツいものがある。


「じいちゃんは?」


「朝早くから、神社に行ったわよ」


「神社? なんでこんな早くに…」


「なんか神社の神主さんから呼ばれて行ったみたい」


「神主がじいちゃんを? 建物の修理でも頼まれたのか?」


「でも何も道具も持たずに行ったのよね~」


大工として第一線からは引いているじいちゃんだが、たまに知人に頼まれたりして、簡単な修繕等をすることがある。

その時は、修繕するしないに関わらず仕事道具を持って行くのだが、ばあちゃんの話では、道具も持たずに神社に向かったとの事だ。

じゃあ一体なんの用があって神社に呼ばれたんだろうか?


「蓮斗、悪いんだけど神社に行って、朝御飯食べるのかどうか聞いてきてくれない? 勿論、朝御飯食べた後でいいから」


「分かった。スーナも来る?」


「うん、行く!」


「ありがとう。じゃあお願いね」


俺達は朝御飯を済ませると、神社に向かった。

神社に着くと、何やら神主とじいちゃんが真剣な顔で、祠を見つめていた。


「おーい、じいちゃん!」


「蓮斗とスーナちゃんか。どうした二人揃って」


「ばあちゃんが朝御飯食べんのかどうなのかだって。っていうか、どうしたもこうしたも無いだろ。朝っぱらから神社で何やってんだよ」


「仕方ねぇだろ、用があったんだよ。もうすぐ戻るから、朝飯は取っとけっつっといてくれ」


「了解」


用事を済ませた俺はとっとと帰ろうとしたが、何気なく見た祠のある異変に気付いた。


「その祠…そんな所にひびなんかあったっけ?」


「ん? ひび…?」


じいちゃんは訝しげに俺が指さす先を確認すると、驚いた顔をした。


「確かにひびが入っている。蓮人、お前よくこんなのに気が付いたな」


じいちゃんがそういうのも無理はない。ひびといっても、直径1cmにも満たない小さなものだった。

なんで自分が気付けたのか分からない程だった。


「これは…少し気になりますね」


突然、神社の住職が話に割って入ってきた。


「そうさなぁ…まぁなんにしても今できる事は何もねぇけどな。さっきの件も含めて、経過を見守って、次の新月の日に判断を下そう」


「さっきの件ってなんだよ?」


「そうだな…この間、俺達一族の話とかした手前、おめぇに何も話さねぇ訳にはいかねぇな」


「…? なんか俺達に関係あるのかよ」


「この神社とイクタ村の神社が、2つの世界を繋いでいる事は知ってるだろ?」


「うん」


「つまり、どちらかの神社に何かがあった場合、もう片方の神社にも共鳴現象が起こるわけだ」


「…要はこの神社に、その共鳴現象が発生したから、じいちゃんはここに呼ばれたってか」


「そういう事だ。おめぇが気付いた祠のひびも共鳴現象の一種なんだろ」


「それって…、つまりイクタ村に何かが起こってるって事ですか…?」


スーナは心配そうな顔でじいちゃんに質問を投げかけた。


「イクタ村自体に何かあったかどうかは分からねぇが、村にある神社に何かあったのは間違えねぇ。なんにしても、次の新月まではこちらも動けねぇし、経過を見守るしかねぇ」


「そう…ですか」


スーナは不安そうな顔で目線を下に落とした。


「じいちゃん、さっきから次の新月がどうとかって言ってるけど、なんの事?」


「俺達が神社を通じて、あっちの世界と行来出来るのは、新月の日だけだからだ。おめぇ知らなかったのかよ」


「知るわけ無いだろ、そんな裏設定!」


成る程、村長さんが言ってた『1ヶ月後に帰れる』って言うのは、『次の新月の日まで待て』って意味だった訳か。

だったら、最初からそうだと言や良いのに…。


「まぁそういう事だ。状況によりゃあ俺はイクタ村に向かう事になるかも知れねぇ。じゃあ俺は家に戻るからよ」


そう言うと、じいちゃんは家に戻るべく、神社を出た。


「スーナ…やっぱり心配か?」


「うん…」


「だよな…。俺も心配だ。村長さんとか村の人達に何も無いと良いけど」


俺達は不安を抱えつつ、神社を後にして、家に戻った。


そして、これが俺とスーナの長い長い旅の始まる事になるきっかけになるとは思いもしなかった。

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