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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
3章 スーナの異世界生活
34/300

No.34 今宵も海は月に沈む。

江ノ島駅に着くとすっかり日が暮れていた。

夜になっても、まだ海岸には人が結構おり、賑わっていた。


「もうすっかり夜だねー」


「そうだなー。なんだかんだあっと言う間だったな」


「これからまた、江の島に渡るの?」


「うん、昼間行ったときに植物園があったの覚えてるだろ? あそこに行くよ」


「えへへ、楽しみ♪」


俺達は昼間来た時と同じように、江ノ島弁天橋を歩いていた。

気のせいか昼間よりも波の音が良く聴こえた。

江ノ島へ到着すると、まだ大勢の人々がひしめき合っていた。


「まだこんなに人がいるんだなー」


「すごい賑わってるね♪」


俺達は、途中のお店で夜ご飯を済ませると、再び頂上目指して上った。

ただ行きとは違い、今回はエスカレーターを使って上った。

断っておくが、エスカレーターを使用したのはただ単に興味があったからであって、決して疲れたからとか歩いて上行くのがめんどくさいとかではない。断じてない。


エスカレーターはあっという間に俺達を頂上に運んだ。


「エスカレーターだとあっという間だね♪」


スーナはそう言うと、エスカレーターからピョンと降り、植物園の方を眺めていた。


「なんか…光ってる?」


「うん、今日はイベントがあるらしくて、夜になるとライトアップされるみたいなんだ」


「レン君が見せたかったのって、それの事だったんだね!」


「そゆことです。早速、中入ろうか」


入場券を購入し、園内に入っていった。

すると、遠くの方で何やら光の集合体の様な物が揺れていた。


「何だろう、あそこで揺れてるの」


正体を突き止めるべく、光の発生源となっている場所へ向かった。

光の集合体の正体はすぐに分かった。


「すごい…たくさんの風船が色んな所で光ってる…」


大量の風船が至る所で優しい光を放ち、なんとも幻想的な雰囲気を醸し出していた。

まるで自分が現実から切り離された異空間にいるようだった。


「光る風船って面白いな」


「うん、ランプの灯りみたいで綺麗だね♪」


そう感じるのは、光の直接的過ぎる明るさを、風船のゴムに包み込む事によって、優しくなった光を見てるからだろうな。


ふと、上を見上げると、展望台が青色の光を纏いながら、夜を照らしていた。昼間とは180度雰囲気が変わった展望台は、全てをを誘惑するかのように、人々を見下ろしていた。


「展望台も光ってるね。上に上ったら、気持ち良さそうだね♪」


「展望台に上ってみよっか。元々そのつもりで、展望台に登るヤツ込みの入場券買ったし」


俺達は展望台に登るべく、行列に並んだ。

夜になって若干冷えてきたからか、スーナは俺の腕にピッタリとくっついて離れなかった。


ようやく自分達の番まで待ってきて、エレベーターで展望台の上へ上った。

エレベーターの扉が開くと、そこには月夜に照らされた、静かな海が広がり、海の手前側には町の光が見えた。


「海が真っ暗だね!」


「まぁ夜だし仕方ないや。夕方に来たら、また景色は違ったのかも知れないけど」


本当だったら、夕方頃に展望台にいるハズだったのだが、まぁ現実はそう予定通りいかないもので、結局この時間になってしまった。

まぁ展望台の上から月に照らされた海を眺めるのも、それはそれでありなのかもしれない。


やがて、俺達も階段で下に降り、展望台の入り口に戻った。


せっかく植物園に来たという事で、園内の植物を見て回る事にした。

先ほどのライトバルーンの灯りが、植物達を妖しく照らしだしており、昼間とは違った魅力を引き出していた。


園内を一回りした後、俺達は植物園を出て、下へ向かって歩き出した。現在、20時過ぎ。

さすがにこの時間になると、人込みもまばらになってきていた。


「だいぶ人が少なくなってきたね」


「時間が時間だしな。まぁ正直、これ位の方が静かで俺は好きだけどな」


「私も静かな方が好き! レン君とゆっくりお話しできるから♪」


「え、あ、うん、そっか」


あまりにも唐突、且つストレートに言われたので、ヘナヘナな返事になってしまった。


「また…来たいね♪」


「俺も。まだ行けてない所とか沢山あるからさ。次はそこに行ってみよう」


「うん、約束だよ」


何て事無い、でもかけがえのない幸せな時間がゆっくりと、二人の間で流れていた。

俺達は互いの手を優しく、でもしっかりと握りしめて、月に照らされながら家路を目指して歩いて行った。

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