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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
3章 スーナの異世界生活
32/300

No.32 長谷寺と高徳院

長谷駅に降り立った俺達は、まず長谷寺に向かった。時間は15時半。

長谷駅に着くと、拝観料を支払い、境内に入っていった。


境内に入って最初にある「大黒堂」や「弁天堂」を参拝しつつ、書院の雅な庭園に若年者ながら風情を感じたりした。

スーナも書院の美しさにはうっとりとしていた。

また、書院の前には「和み地蔵」と呼ばれる可愛らしいお地蔵さんが立っており、スーナはこのお地蔵さんがいたく気に入ったらしく、頭を撫でてあげていた。


また「弁天窟」という洞窟もあったが、江の島の岩屋の時と同じく、スーナが怖がってしまっていたので、中には結局入らなかった。

正直言うと、俺も怖かった。


そこから境内の池を越えた所にある階段を登って、地蔵堂へ向かった。

途中、池の大きな錦鯉や、先ほどの可愛らしい地蔵を彷彿とさせる「良縁地蔵」を見て癒されていたが、地蔵堂の裏にあった大量のお地蔵さん軍団には、さすがのスーナも若干ビビってしまっていた。


地蔵堂に着くと、内にはキラッキラに輝く黄金の本尊が置かれていた。

思わず、「売ったらいくらになんのかなぁ」と心の中で思ったのはここだけの話だ。


そしてずっと階段を上っていくと、メインである「観音堂」へ到着した。

まず、香炉にお線香を立ててから、本堂の中に入ると、そこには巨大な十一面観音像が立ち並んでおり、思わず圧倒されてしまった。


眺望散策路と呼ばれる階段を上がっていき、頂上まで行くと、そこからは由比ガ浜とその町並みを一望する事ができた。


「すっごい良い眺めだねー♪」


「そうだなー、ここまで登ってきた甲斐があったってもんだな」


「ふふふ、レン君大丈夫? ちょっと疲れてるでしょ?」


「そりゃさすがに疲れるわ。スーナは相変わらずの健脚だな」


「まぁね♪ この位ならへっちゃらだよ!」


丁度タイミング的な問題もあったのか、周りには誰もいなかった。


「なんか鎌倉に来てやっと静かな時間が訪れた感じだなー」


「そうだねー」


そういうとスーナは、何故か俺の肩に寄っかかり出した。


「ん? どうした?」


「う、うん、ちょっと足が疲れたかなーって」


「あれ、さっきへっちゃらとか言って…」


「きゅ、急に足が疲れたなーとか…」


「え、大丈夫か? ちょっと下に降りて休もうか」


「ううん、大丈夫! このままで大丈夫だから!」


「そうか…?」


俺は何が大丈夫なのかがさっぱり分からなかったが、もしかしたら知らず知らずのうちに、スーナに無理させていたのかな。

よし、もっと少し労わってあげなきゃな。

そっか、多分こういう所がじいちゃんの言う「鈍感」って事なんだな!


俺がじいちゃんに言われた「鈍感」という言葉の真意を知ったのは、もう少し先の話になる。


しばらく海を眺めたのち、俺達は境内の入り口まで降りていくと、長谷寺を後にした。


次の目的地「高徳院」に向かうべく、一度元来た道を戻っていると、目の前にオルゴール館が見えた。

よく見ると、スーナは興味深そうにその建物を見ていた。


「入ってみる?」


「うん!」


オルゴール館の中に入ってみると、様々な種類のオルゴールがフロアの台に並べられていた。


「なんか綺麗な箱みたいのが、たくさん並べられてるね! これは何て言うの?」


「オルゴール。ネジを回すと音を鳴らしてくれる不思議な箱だよ」


「音…?」


「今もそこかしこから音が流れてるだろ?」


「そう言えば…それらがその音なの?」


「まぁ実際に鳴らしてみた方が早いか」


目の前のテーブルの上に、自由に触っていい、クマとウサギのオルゴールが置いてあったので、実際にネジを回して見せた。

オルゴールからは、サザンオールスターズの「真夏の果実」のメロディーが流れだしだ。


「わぁ…すごい素敵なメロディーだね♪」


「夏の名曲だよ。俺も結構好きな曲なんだ」


「そうなんだね。それに…このオルゴールの音色、とっても優しい感じがして好きだなー。それにクマとウサギがすごく可愛いね♪」


「それが気に入ったの?」


「そだね、とっても素敵!」


その後、店内を色々周り、オルゴールの音色を楽しんだ。


「レン君、お待たせ!」


御手洗いから出てきた、スーナを出迎えて店を出た。


一度、長谷駅近くまで戻り、そこから長谷駅から見て正面の道を真っすぐ進んで「高徳院」に到着した。

入り口を抜け、敷地内を進んでいくと、かの有名な鎌倉の大仏が見えてきた。


「わっ!! 何あのでっかい像!?」


「鎌倉の大仏様だよ。ビックリした?」


「う、ううん、別にビックリしてないよ?」


今、明らかにビックリした声を出していたのに、何故かスーナはビックリしていないアピールをしていた。


「よし、じゃあ近くまで行ってみようか」


「う、うん」


そう言って、俺達は大仏のすぐ下まで近づいて行った。

さすがに目の前まで行くと、その大きさに圧倒されてしまう。


「へぇー、やっぱり近くまで行くと、よりでかさがわかるなー。当たり前だけど」


「そ、そうだねー」


なんだかスーナがぎこちない様子で返事をした。


「あのー、スーナやっぱり怖いの…?」


「そ、そんな事ないよ! 全然、あの、怖くなんかないからね!」


「…そう?」


…理由は分からないけど、絶対怖がってる。

大仏をよく見ると、たくさんの人達がなにやら大仏の右後ろの方で行列をなしている。

成程、大仏の内部へ入る事が出来るのか。でも絶対スーナは怖がって入らないだろうな…。


「スーナ、なんだかあそこから大仏の内部へ入れるみたいなんだけど…やっぱり止めとくか?」


「だ、だ、大丈夫だよ! 怖くなんてないし! 入ろ、入ろ!!」


「いや、別に無理して中に入らなくても…」


「大丈夫だよ! 今日は二回も洞窟を断念しちゃったし、怖がってばかりじゃダメだもんね!」


あ、やっぱり怖いんだ…。

まぁスーナが勇気出して、行くって言ってるんだから、ここは中に入ってみるか。


さっそく大仏の中に入る行列に並んでみた。

案外行列は進んでいき、あっと言う間に自分達が中に入る番になった。

スーナは覚悟を決めたかの様な顔をしている。

そんな決死の覚悟を決めて入る様な場所ではない気がするが…。


中に入ると、思ったより暗くはなく、上の方から光が入ってくるようになっていた。

そして思った以上に中が空洞になっていたので、少々意外だった。


「へぇー、中ってこんなに空洞になってたんだなぁ」


「…」


「あれ、スーナ、大丈夫…?」


「へ? あ、いや、うん、大丈夫!」


絶対大丈夫じゃないな…。

すると、天井から雨粒が一滴、スーナの顔に滴った。


「ひゃあっ!!」


スーナは悲鳴を上げながら、思いっきり俺にしがみ付いてきた。


「おぉい!! スーナ、何やってんだ!?」


「なんか!! なんかが顔に当たった!! 冷たい、怖い…!!」


もはやパニック状態である。


「そんなに怖かったのか…。もう、ここから出よっか」


「だ、だ、大丈夫だから!! 最後まで中回るの!」


そう言うスーナは半泣き状態で、とてもじゃないが大丈夫には見えなかった。


「そんな無理しなくても…。しょうがないな…、ホラ」


ガタガタにビビりまくるスーナの手をギュッと握った。


「これなら大丈夫か?」


スーナは言葉を発さず、黙って頷いた。

完全に小さな子供のソレである。

俺は一歩一歩ゆっくり、そして優しくスーナを誘導しつつ歩いていった。


ようやく大仏の中から出てくると、太陽の光が非常に眩しく、思わず目が眩んでしまった。

スーナはというと、俺の腕にしがみ付いてしまっており、完全にビビり倒している。


「スーナ…。次からは無理しないようにな…」


「…うん」


大仏鑑賞を終えた俺達は、再び駅の方に向かって歩き出した。


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