No.300 地下③
「おい上の連中からは何も連絡来てねぇぞ!!? なんなんだこいつらぁ!!」
敵はこちらの奇襲に対して想像以上に動揺していたらしく、面白い位に連携が乱れていた。
「そうだなぁ…POSTっつえば分かるかぁ?」
「な、何ぃ!!? なんでPOSTの連中が!!? 確か奴らは頭が一層したハズ…!!」
「碌に連携は取れてねぇわ、近くにPOST本部がある事も知らねぇわ……てめぇらとんだ素人集団だな」
「なにを!! 俺達、新進気鋭の盗賊団『ラッシュ』の名前を刻み込んでやらぁ!!」
そう言いながら男は近くにあった鉄槍を持って、シンラさん目掛けて襲い掛かってきた。
するとシンラさんの背後から何やら鋭い空気砲の様なものが飛んでいき、男に直撃した。
そのまま男は壁に叩きつけれ、為す術なく崩れ落ちていった。
「なんだシュン、てめぇちゃんとそれのコントロール出来てんじゃねぇかよ」
「へへっ……昨日通路で試し打ちしてセラさんにマジ説教されたついでに、使い方をみっちり仕込まれましたから!!」
「そ…そりゃお疲れさん……」
「てめぇら怯むんじゃねぇ!! 数で押し切れぇ!!」
徐々に落ち着きを取り戻しつつあるラッシュの連中が次々と襲いかかってきた。
「よし……1か月間の研修の成果を試す時!」
俺は風の魔石で弓矢のイメージを浮かべ、そのまま弓を引く構えを取った。
そしてそのまま弓を放つ動作から放たれた風の弓矢が敵を次々と打ち抜いていった。
「な、なんだ今の攻撃はぁ!! まるで矢にでも射られた様な…!!」
「射られた様にっていうか、実際風の力で射ったんだよなぁ」
実践での成功に思わず俺はドヤ顔が漏れ出てしまった。
「へぇ…弓矢をイメージした攻撃かぁ…中々面白れぇじゃねぇか。コントロールも申し分無ぇ」
シンラさんはニヤニヤしながら俺の攻撃を評価してくれた。
この人にこんな素直に褒められたのは初めてだったので、若干照れ臭かった。
いや戦闘中に照れている場合じゃないか。
「糞ぉ餓鬼共が調子乗りやがってぇ!! てめぇら女を集中攻撃しろぉ!!」
「おぉぉぉぉぉ!!!」
「茜が狙われた!! この変態集団が!!」
駿が慌てて義手を構えようとした時、シンラさんが咄嗟に止めに入った。
「え、シンラ先輩何するんすか!!」
駿はシンラさんに抗議したが、シンラさんは黙って見てろと言わんばかりに茜を注視した。
「死ねぇ!! 女ぁぁ!!」
「女、女って……私達の世界じゃあんたら大炎上だよ」
そう言って茜は腰を深く落とすと、そのまま爆風を発生させながら強烈な正拳突きを放った。
まともに正拳突きを食らった男は勢い良く喀血しながら、凄まじい勢いで吹っ飛んで行った。
その勢いは先程地上でシンラさんが放った攻撃に匹敵するほどの破壊力で、周囲の連中を次々と巻き込みながら壁に激突した。
その際、壁にビキビキとひびが入り、やがて勢いよく崩れ落ちていった。
「す…すげぇなあいつ、ワンパンで壁に叩きつけやがった」
駿はあんぐりしながらその光景を目の当たりにしていた。
少なくとも今後茜にか弱いなんて修飾子は絶対に付かないだろう。
いやよく考えたら今迄も別に付いてなかったな。
「シンラさん、茜の力を見抜いた上で駿を止めたんですね」
「いやぁ……やばかった。想像より攻撃の破壊力がやばかった」
どうやらシンラも茜の破壊力に若干動揺している様だ。
すると、部屋の奥の方から何やらフラフラと歩いてくる人影が一つ…いや二つ見えた。
「なんだなんだぁ…情けねぇ野郎どもだなぁ……」
影の主は部下(?)達を労わる事もなく、ため息交じりで呟いた。
「さぁて……いよいよ真打登場だぁ」
シンラさんは何故か嬉しそうに笑っていた。