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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
3章 スーナの異世界生活
30/300

No.30 鎌倉物語

俺とスーナは終点、鎌倉駅に降り立った。時間は12時過ぎ。


「人いっぱいだなー」


「そうだねー、みんな電車降りてくねー!」


「まぁ…終点だからな」


例によって人込みが激しかったので、また俺はスーナの手を引いて歩き出した。

もはや手を繋いでいるのが普通になってしまい、なんの違和感もなくなっていた。


改札を出ても、そこかしこに観光客がひしめき合っており、外国人観光客も多かった。

まずは定番の小町通りを歩くことにした。

改札を出て、目の前の時計台の奥にある地下道を抜け、JR鎌倉駅のバスロータリーを右手に直進して行き、小町通りの中へ入って行った。


赤い鳥居が印象的な小町通りは、ビックリする位の人込みだった。


「すっげー、前来た時より人多い気がする…」


「そうなんだ! さすがに私もビックリしちゃった」


俺はスーナが離れないようにしっかりと手を握っていた。


「こんだけ人が多いとはなぁ…ちょっとお店に入って昼食取るのはキツイか…。かといって昼食抜きってものな…」


「レン君、私は大丈夫だから、気にしなくても良いよ♪」


「いや、そんな訳には…。仕方ない、食べ歩きで昼食代わりにするか。スーナ、それでも大丈夫か?」


「うん、大丈夫だよ! 食べ歩き楽しみ♪」


スーナが笑顔で快諾してくれたので、少し救われた。

まぁ元はと言えば、土曜日という激込みだという事が容易に予想できたのに、昼食の事をノープランだった俺が悪いのだけども…。


俺達は予定を変更し、食べ歩きでお腹を満たす事にした。

牛肉コロッケ、よもぎ餅、卵焼き串ぼう、ぬれ煎餅、さくら餡、クレープ、ソーセージ…。

よく考えると食べ過ぎじゃね?と思わなくもないが、ずっと歩き続けていた事もあり、ビックリする位ペロリと平らげてしまった。

スーナは特に、さくら餅とソーセージが気に入ったらしく、美味しそうに食べていた。


食べながらの散策だったので少々時間はかかったが、ようやく鶴岡八幡宮に辿り着いた。


「すごい…。江の島の神社よりずっとでっかいよ! 道もすごく広いね!」


「確かにでかいよな…。ちなみにスーナが道って言ってるのは、正確には参道っていうんだけど、この道はずっと向こうから始まって、ここまで続いてるんだ」


「ホントだ…。向こうの方は見えないね」


「2kmもあるからね。中にはそっからずっと参道を歩いてここまで来る人もいるんだよ」


「そっか! 私、歩くのなら得意だから、今度は歩いてここまで来たいな♪」


「俺は…良いかな。ここで待ってるよ」


「えー、レン君も一緒に歩かなきゃダメ!」


「勘弁してくれー」


そんな与太話をしながら、参道を歩いて行った。

八幡宮は思ったより人込みが凄くなく、普通に歩けたので、助かった。

道の左右にはりんご飴やら焼き銀杏やらの出店が出ていたが、正直満腹だったので、食べるのは諦めた。


参道を進んでいくと、舞殿と呼ばれる建物が見えてきた。

丁度、結婚式が行われていたらしく、新郎新婦が和装に身を包み、厳かに式が執り行われていた。

その厳かな雰囲気とは対照的に周りでは、赤の他人であるはずの観光客がしきり携帯のカメラで、式の様子を撮っている光景は、どうにも不思議な気がしてならなかった。


「レン君、あれは結婚式…?」


「うん、そうだよ。よくあれが結婚式だって分かったね」


「イクタ村の結婚式と似てたからそうなのかなーって」


「へぇー、イクタ村の結婚式は和式に近いのか…」


スーナは、ジィっと結婚式に見入っていた。

やっぱり、スーナも結婚式に憧れたりするのだろうか…。

まぁ憧れない理由も無いし、別に普通の事なんだろうけど、よくわからない気恥ずかしさが俺を襲った。


舞殿を通り過ぎると、階段が見えてきて、そこを上がれば本宮である。


「レン君、あの大きな切り株はなぁに?」


「あれはイチョウの大木の跡。数年前までおっきなイチョウの木が立ってたんだけど、強風で倒れちゃってさ。樹齢1000年とかで、ここのシンボルだったんだけどね」


「そうだったんだ。倒れる前の木、見たかったなぁ」


「でも残った幹から新しい芽が出て、育ってるみたいだよ」


「ふふふ、楽しみだね♪」


「まぁ何十年も先の話だけどな」


本宮へ続く階段を上っていき、入り口に辿り着いた。

正面の左右には、いかつい顔をした男の像が立っていた。


「…双子?」


「さぁ…」


バカ丸出しの会話をしながら中へ入っていき、お賽銭を投げ、お参りをした。

お参り後、左に抜けると宝物殿の入場口があった。

スーナにせがまれた事もあって、中に入る事にした。

近くにおみくじもあったが、江の島で凶を引いた事を引きずっていたので、無視した。


中は部屋ごとに様々な様相を見せており、存外楽しめた。

スーナも宝物殿がなんなのかは全く分かってなかった様だが、それが逆に良かったのか、興味深そうに見ていた。


宝物殿を出て、下まで降りた後は、「旗上弁天社」「白旗神社」「丸山稲荷社」「若宮」「祖霊社」「今宮」の摂末社と呼ばれる社を回った。由比若宮は少し離れていたので今回は断念したが。

途中、野生のリスがひょっこり現れた時は、スーナは連れて帰りたいと言い出して大変だった。


「さっきのリスさん、すっごく可愛かったなぁ♪」


「俺もここでリス見たのは初めてだよ」


「ところでさっきお参りした時に、レン君は何をお願いしたの?」


「んーそれはアレか? 俺だけ答えてスーナは答えないという例のパターンか?」


「えへへ、さすがにバレましたか」


「成程ー、スーナは俺をバカにしてんなー?」


「そんな事ないよー♪」


…絶対にバカにしてる。

なんだか釈然としなかったが、俺達は鶴岡八幡宮を後にした。

すぐ近くでリスに見守られているとも知らずに。

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