No.270 調査報告書⑦ 〜後始末〜
ロクはグリームとルリリの方にやって来た。
「ルリリ、大丈夫だったか?」
「あ、うん、大丈夫だよ! ありがとうねロク兄さん…」
「別に良い。じゃあ俺は行く。レグマには宜しく言っといてくれ…」
そう言ってロクは建物の出口に向かおうとした肩をグリームとシンラがガシっと掴んだ。
「いや、良い訳ねぇだろう馬鹿野郎!! お前散々やらかしておいて、バックレる気かぁ!!! 大体お前レグマさんに呼ばれて来たんじゃねぇのかよ!!!」
「いいだろ別に」
「駄目に決まっているだろう!! 建設依頼この建物を支えてきたあの橋にあんな大穴を開けおって!!」
「知るか…大体お前らこそその醜態はなんだ?」
「何…?」
「たかだかあの程度の奴らに遅れをとってPOSTの人間一人救うのに手間取って……お前らふざけてんのか?」
「ろ、ロク兄さん、グリームさん達は別に悪くないよ! 周りを巻き込まない様に色々……」
「お前らなら周りを巻き込まずに、あいつらの頸を撥ねる事位出来たハズだ。何を躊躇した?」
「てんめぇ言わせておきゃあよぉ!! みんながみんなてめぇみたいに頭のネジが外れてると思ってんじゃねぇよ!!! 大体てめぇがルリリと一緒に帰ってくりゃあこんな事には…」
「やめろシンラ、それ以上は見苦しいぞ」
グリームはシンラを制止して、ロクと向き合った。
「確かにお前の言う通りだ、ロク。先程は相手の出方を伺おうとし過ぎて、初動が遅れてしまった。全く不甲斐ないという他あるまい。戦い方が保守的になり過ぎてしまっているのかもしれんな」
「グリーム、てめぇ…」
「但し……」
グリームはロクの肩をガシっと掴んだ。
「それはそれ、これはこれだ! お前をこれからダーガレッド総統の所へ連れて行く! 勿論俺達も今回の顛末の説明をしなければならんから全員一緒にだ!! 逃げる事は許されん!! 分かったな!?」
「っち……分かったから離せ」
「ったく相変わらず糞生意気な餓鬼だな!!」
シンラは腕を組みながら、ロクの方を睨みつけた。
「あららぁ~?? 随分と久しぶりじゃなぁーい♡ 元気だったぁ~?」
リリィが手を振りながら、やって来た。
いち早くリリィの姿に気づいたルリリは、手を振り返した。
「あれ、リリィさんどうしたんですか? こんな所に」
「どうしたって、そりゃああれだけの衝撃が起きれば、誰だって気になって見に来るわよぉ♪」
「あはは…そうですよね」
リリィは辺りを見渡し、惨劇の光景を目の当たりにした。
「あらあら、この人達ってもしかして、例の特殊なんとかって所の……なんでこんな事になっているのぉ~? やだぁ、よく見たらこの辺り血だまりだらけじゃなぁい! 一体何があったのぉ?」
グリーム達はここで起きた出来事と、その顛末をリリィに説明した。
「成程成程、じゃあこの惨劇の仕業はロクちゃんで、それはルリリちゃんを助ける為にやったって事なのねぇ?」
「はい、だから元は言えば私が……」
「良いのよ良いよの、別に私はあなた達兄妹を咎める気は全くないわぁ。それはレグマさん達の役割だし、理由が分かったから私から言う事は特に無いわぁ」
リリィはそう言いながら、もはや廃人と化してしまったエルの体を確認し始めた。
「あらぁ…この子、腕と足が切断されているにも関わらず全く出血していないわねぇ」
「そいつの切断面は斬った直後に時間を止めてある。切り離した腕と足も同様だ」
ロクは少し離れた所に転がっていたエルの腕と足を拾ってきて、りりィに渡した。
りりィはそれを受けると、断面部分をまじまじと見つめた。
「成程、じゃあこの子の切断面は斬られた直後の状態を維持している訳ねぇ。なら縫合手術は問題無く行えそうねぇ♪ というか元々そのつもりで時間止めてたのよねぇ?」
「さぁ…気まぐれだ」
「全く素直じゃないんだからぁ…」
りりィは微笑みながら医療班に指示して、特殊部の連中を医務室に運ばせた。
「じゃあ私はこれで失礼するわねぇ。ロクちゃんはレグマさんの所にちゃんと顔出すのよぉ。ここに戻るのだいぶ久しぶりなんでしょう?」
「…分かってる」
「なら良いわぁ。じゃあねぇ~♪」
そう言ってリリィは医務室へ戻っていった。
リリィを見送るとルリリはロクの腕をガシっと掴んた。
「じゃあロク兄さんもレグマさんの所に行くよ!」
「だから分かったって言ってるだろ。腕を離せ、歩きにくい…」
「駄目! 何度か戻るって言ってバックレた事あったでしょ? こういう時のロク兄さんは信用ならないから!」
「………」
「あははははは、妹に尻敷かれてやがんなぁ!! いい気味だぜぇ!!」
「雑魚は黙ってろ」
「おいコラ、今お前俺に言ったか? 上等だコラ、今度タイマンはんぞクソガキ」
「俺に弱いものいじめの趣味は無い」
「よし来た、今ここで喧嘩すっぞ。おら構えろや、ここで決着付けてやっからよぉ!!」
「ちょっと二人共こんな所でやめてください! シンラさんもロク兄さんを煽ったりしないでください!」
「え…あ、はい、すんません」
シンラはルリリに一喝されると急に冷静になって、謝っていた。
その様子をグリームは呆れた様子で見ていた。
やがて4人は総統室の前に着いた。
ルリリがドアのノックをすると、中から「ロク達だね? 入っていいよ」という返事が聞こえたので、そのまま部屋の中へ入っていった。
大谷翔平選手、本当に人間離れした活躍をしますね。
(唐突の野球コメント)




